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 装束の裾をたくし上げ、川原沿いの砂利道を全速力で駆け抜け、コウが教えてくれた近道に入る。ゴロゴロと転がる石を避けながら上っていくと、変わらずに青々と香る竹林が広がっていた。


「スヨン!」


 コウが、追い掛けてきた。


「どこに行く気なの? あそこは絶対にやめた……」


「どうしても、確認したいの! すぐに戻るから」


 コウの心配を振り払い、乱れた呼吸をなんとか落ち着かせながらあの小屋を探し続ける。


 確か、この辺にあったはず。


 山道を反れ、竹林の中へと入っていく……。目を凝らし、あたりを見渡してみる。


 あっ!


 あの恐ろしい小屋が、視界に入った。草を避けながら、1歩1歩進んでいく……。


 扉の前で、一旦立ち止まった。大きく深呼吸してから、思い切ってその重い木の扉を開ける。


…………えっ!


 思わず、後ずさりしてしまった。

 赤い札が増えている。壁の一面だった札が、もう全面に貼られている。


 嘘っ!


 ジュンユン様の名前を見つけた。この世界に来て最初に覚えた文字だから、すぐに分かる。


「一族全員の名前が記されてるわ」


 背後で、コウの声がした。


 一族、全員って……。


 愕然とした。


「どうして? どうしてこんなことに!」


「この札に暗示を掛けて、ホン一族を罪人に仕立てたのよ」


 コウの声が震えている。


 もしかして?


「ねぇ、コウ! 第3夫人の名前もある?」


 恐る恐る聞いてみた。


 扉側から順々に、コウが札の名前に目を通す。


「あるわ! ヨナという名前が一番奥に書いてある」


 衝撃で、気がおかしくなりそうになった。


 私のせいだ! 私が、かんざしを直ぐに外せばよかったんだ……。私のせいで、美咲さんが! ジュンユン様が……。もう、どうしたらいいのーっ!


 訳が分からなくなり、全ての札を壁から外そうとした。

 コウが慌てて制止する。


「勝手に外すのは危険よ! 呪術について少し調べてあるの。後で説明するから、とにかく今は落ち着いて!」


 そうだ! 私はなぜ、呪術の勉強をしなかったんだろう。

 毎日、目を通していた経典は読めるようになっていたのに、書物を読んで理解することはできないと諦めていた。どうしよう? と悩むばかりで、何も始めようとしていなかった。

 コウは、あの小屋を見つけた日から、王妃を救おうと努力してたんだ!

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