華の宴⑥

美咲side

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 朝から、宮殿の中が騒がしい。

 さすがに自ら目覚め、身支度も1人で整え、様子を窺うように南殿の廊下を抜けていく。


 渡り廊下に出ると、庭園には赤い毛氈が敷かれ、使用人達が宴の準備に走りまわっていた。どの花も色鮮やかに咲き乱れ、見頃を迎えている。


 今日、催される華の宴には、巫女達も出席するらしい。


 ようやく、世奈に会える! この日を楽しみにしていた。

 王宮での暮らしは、最高レベルだ。正直、現状には満足している。けれども、どうしてこの世界に居るのか、どうして私が国王の第3夫人なのか、そのからくりが知りたい。


「ヨナお嬢様!」


 チヌが、王宮の中央の方から嬉しそうに走り寄ってきた。眩いほどに鮮やかなレモン色の衣裳を抱えている。


「ご覧ください! ヨナお嬢様が見立てられたお衣裳が、こんなに見事に仕上がってまいりました」


 自分のことのようにはしゃぎながら、その衣裳を丁寧に広げてみせる。


「うわっ、思ってた通り! 本当に綺麗な色〜」


 王家専属の商人達がやってきて、私が生地を選び自らデザインも考えた。この宴の為、国王の計らいで用意された、いわゆるオーダーメイドというやつだ。クソ部長とは違って、国王は女の気持ちが分かる男のようである。


「さぁ、お支度をしましょう」


 すぐに部屋に戻り、レモン色の衣裳に着替えてみる。


「かなり、いいかも!」


 鏡の中の自分が、満足そうな笑みを浮かべている。


「お飾りも届いております」


 あとに控えている王宮の使用人から、チヌが立派な箱を受け取る。蓋を開けると、


「うぉーっ!」


 もう、目が輝いた。エメラルドを中心とした髪飾りや装飾品が、これでもかというほどにキラキラと煌めいている。


 衣裳と飾りを合わせて、もう一度鏡の前に立つ。


「ちょっとちょっと、最高じゃない! ねぇ、チヌ」


「きっと、ヨナお嬢様が一番お美しゅうございます」


 私につられて、チヌも鏡の中でニンマリと笑う。


 チヌは時々面白い表情をする。体裁上、固いことばかり言っているが、負けることが大嫌いな私寄りの人間のような気がする。何より、全力で私の味方をしてくれる最強の相棒だ。

 私はチヌに、家族よりも深い絆を感じ始めていた……。

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