11

 神社のような建物に辿り着くと、友と一緒にそのまま奥へと進んでいき、光が閉ざされた大きな部屋の中へと入っていった。

 青空から一転して、昼と夜の区別がつかない静寂の空間に変わる。


「あっ、スヨン!」「間に合って良かった〜」


 同じ装束を着た集団から湧き起こる声……。見知らぬ人達が、私に注目している。


 この人達は、私をスヨンだと思っているのだろうか?


 友が言ってた通り、どうやら本当に心配されていたらしい。


「あっ、すみません」


 この言葉が合っているかどうか分からないが、そう呟きながら友と同じように空いている席に着く。同時に、後ろの扉から、同じ紺色に金色の刺繍が施された装束を着た二人の女性が入ってきた。


 代表、副代表というところだろうか?


 代表の方は厳しい中にもどこか親しみを感じられる綺麗な女性だが、副代表の方は意地悪が全面に出ている一番苦手なタイプだ。そうそう、大嫌いな古典の教師に似ている。母親より少し若いように見えるが、どちらも恐ろしいほどに貫禄がある。


 2人は威厳を保ったまま進んでいき、神が祀られているであろう祭壇の前に立った。どうやら、ここは礼拝堂のようだ。手を合わせ、お経のようなものが始まる……。

 私も、友に手渡された冊子のようなものを開いた。ズラズラと、見慣れない漢字が並べられている。


 辺りを見回してみた。20人ほど居る巫女達は、とても穏やかな表情でスラスラと唱えている。


 ここに居る人達は、本気で神の存在を信じているのだろうか?


 元の世界での、教室の風景が蘇った。みんな、他人のことなど気遣う余裕はなく、良い点数を取ることに必死だった。私も、そうだ。あのピリピリした空気とは全く違う時の流れが、ここにはある。


 ふと、友の視線に気付き、我に返ると、お経は終わっていた。

 巫女達は冊子を閉じて、祭壇に手を合わせている。私も、同じように手を合わせる……。


「スヨンとコウは、このあと私の部屋に来るように」


 代表の方が、強い口調でそう言った。


 えっ、私?


「はい、マヤ様」


 友が、立ち上がって丁寧に会釈をしている。


 ということは、友はコウという名前なんだ。

 コウという名の友を改めて見つめていると、代表の強い視線を感じた。

 あっ、私も返事をしなければ! 確か、この人はマヤ様と呼ばれていた。


「はい、マヤ様」


 コウを真似て会釈をすると、代表は納得したように頷き、副代表と共に祭壇を後にした。

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