タイムスリップ②
美咲side
6
「お願いっ、ここから出してーっ」
まるで白い霞が晴れていくかのように、まわりが見えてきた。
「えっ……」
これは、天井? それとも、 壁? 前を向いているのか、上を向いているのか、どういう状態になっているのか訳が分からない。ホームに立っていたはずなのに……。
気が付くと、異国の男と女達が心配そうに私を覗き込んでいた。
どうやら、布団に横たわっているらしい。
「お嬢様! ヨナお嬢様!」
えっ、私を呼んでるみたいだけど、ヨナって誰?
辺りを見渡してみた。
朱色で統一された伝統的な家具、シルクのように肌触りの良いピンク色の布団。
これって……。
その人達を振りきって、一気に起き上がる。
これって、これってもしかして!
一目散に窓らしきものに飛び付いて、扉を開けてみた。
やっぱり……。
この景色に見覚えがある。
この人達が着てる衣装、この屋敷、この庭園。
これは、まさに……。韓国時代劇で見たあの世界ではなかろうか。
韓国ドラマにハマってたせい?
さすがに見過ぎだったか。
それとも……、ここが天国?
目の前には、若葉色の草木が香る和風の庭園が広がっている。
んっ?
その中央に立つ松に似た大木の前で、こちらに向かって誰かが手を振っている。
えっ?
焦点を合わせてよく見てみる。
えぇーっ!!
衣装は青い色に変わっているし、翼らしきものも見当たらないが、さきほど駅のホームに現れたイケメンだ。
隣りには、護衛のような黒い衣装を着た男も居る。
アイツ、なに呑気に……。ちゃっかり着替えまで済ませて!
「ちょっと、そこのイケメン天使ヤロー! 待ってなさい! そこ動くんじゃないわよっ!」
指を差して、声を張り上げる。
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