タイムスリップ②

美咲side

「お願いっ、ここから出してーっ」


 まるで白い霞が晴れていくかのように、まわりが見えてきた。


「えっ……」


 これは、天井? それとも、 壁? 前を向いているのか、上を向いているのか、どういう状態になっているのか訳が分からない。ホームに立っていたはずなのに……。


 気が付くと、異国の男と女達が心配そうに私を覗き込んでいた。

 どうやら、布団に横たわっているらしい。


「お嬢様! ヨナお嬢様!」


 えっ、私を呼んでるみたいだけど、ヨナって誰?


 辺りを見渡してみた。

 朱色で統一された伝統的な家具、シルクのように肌触りの良いピンク色の布団。


 これって……。


 その人達を振りきって、一気に起き上がる。


 これって、これってもしかして!


 一目散に窓らしきものに飛び付いて、扉を開けてみた。


 やっぱり……。


 この景色に見覚えがある。


 この人達が着てる衣装、この屋敷、この庭園。

 これは、まさに……。韓国時代劇で見たあの世界ではなかろうか。


 韓国ドラマにハマってたせい?


 さすがに見過ぎだったか。


 それとも……、ここが天国?


 目の前には、若葉色の草木が香る和風の庭園が広がっている。


 んっ?


 その中央に立つ松に似た大木の前で、こちらに向かって誰かが手を振っている。


 えっ?


 焦点を合わせてよく見てみる。


 えぇーっ!!


 衣装は青い色に変わっているし、翼らしきものも見当たらないが、さきほど駅のホームに現れたイケメンだ。

 隣りには、護衛のような黒い衣装を着た男も居る。


 アイツ、なに呑気に……。ちゃっかり着替えまで済ませて!


「ちょっと、そこのイケメン天使ヤロー! 待ってなさい! そこ動くんじゃないわよっ!」


 指を差して、声を張り上げる。


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