終話 そして……

 クリムおばあちゃんとマルシルのおばあちゃんが作ってくれた晩ご飯は、とても美味しかった。

 しかし、あまりの量になんとリズまでぶっ倒れ、余った料理は冷蔵庫で保管する事にした。

「ごちそうさまでした」

 私が挨拶すると、みんなあとに続いて挨拶した。

「さて、どうしようかな。散歩?」

 私は笑みを浮かべた。

「はい、お供します」

 オーエル笑みを浮かべた。

「なんだ、お前ら外にいくのか。だったら、護衛でついてってやる。おーいアリサ、どこ行った?」

「はい、片付けしていました。夜の護衛なら、私もついていきます」

 アリサは、なにか背嚢をゴソゴソして、それを背負った。

「あっ、忘れてた」

 パトラも背嚢を背負った。

「なに、二人で背嚢まで背負って行くの?」

 リズが笑った。

「はい、隊長をおっと……」

 アリサが笑みを浮かべた。

「……やる気だな。知らないよ!!」

 リズが笑った。

「あの……。マッパーを忘れていますよ。三人いますが、誰を指名しますか?」

 エルクが笑った。

「夜道に強い人がいいな。オーエルが道案内してくれても、迷うときは迷いそうだから」

 はい、どうしても迷ってしまう事があって……その場合は、そこから動かずこれを吹いて下さい。無線機を頂きましたが、迷っているという事は、私も迎えにいけないので、明るくなるまで待って下さい。必ず助けにいきますから」

 オーエルは、さらにカレンを呼んだ。

「念のため、二人付けます。森の深いところまで行く予定なので……。これも冒険ですよ。マッパーも二人お願いします。オススメはエルクとパステルですね。パステルは皆さんと仲良しでしょうし、なにかとお話ししやすいでしょうから」

 オーエルが笑った。

「分かった、ありがとう!!」

 私は手招きでパステルを呼んだ。

「どうしました?」

「夜の森にいくんだけど、マッピングお願い」

「分かりました、これも冒険ですね!!」

 ……パステルが喜んだ。

「あと一人、エルクだっけ。手が空いてる?」

「はい、一人で人生ゲームやっていたので。話が聞こえました。任せてください」

 エルクが笑った。

「よしよし、夜が明けちゃうから急ごうか」

 犬姉が笑みを浮かべた時、マルシルがやってきて、なにもいわずパーティに加わった。

「私も行きます。森の草いきれの香りが好きなんです」

「よし、大分集まったな。出発しよう」

 犬姉が背嚢から両眼式の暗視装置を取り出すと、全員に手渡した。

 装備を整え、私はライフルを肩に下げてから、みんなと一緒に家を出た。


 あえてそうしてるのはもう話したが、出来るだけ自然を保とうと街灯は少なめにしてある。

 そこをしばらく歩き、オーエルとカレンが鉈で道を切り開き、マッパーの二人が通った場所を丁寧にクリップボードに挟んだ紙に書き、私たちは暗視装置を頼りに、前方の二人についていった。

 しばらく進むと、もうロクに使っていないはずなのに、綺麗に保たれているログハウスが見えてきた。

「あの、ちょっとトイレに……。犬姉さん、一人では怖いのでちょっと付き合ってもらえますか?」

 エルクが犬姉の服の袖引っ張った。

「分かった分かった、確かに怖いな。なるべく早くね」

「私たちはここで待っています。迷ってしまう事請け合いなので」

 オーエルが頷き、みんなでログハウスから少し離れた場所に行き、立ち話をして、盛り上がった。


*****


 エルクと一緒にログハウスに入った私こと犬姉は、トイレに籠もったまま出てこないエルクを待っていた。

「なんだ、腹でも壊したか?」

「いえ、覚悟を決めているだけです。犬姉さんは素敵な女性なので」

「ん、覚悟?」

 しばらく待っていると、エルクがトイレの水を流して、なにか固い表情で出てきて、あちこち弄って盗聴装置がないか、探している様子だった。

「なに、聞かれたらマズいの?」

 私は苦笑した。

「はい、隠している私の性癖がバレてしまうので……」

 エルクは小さく息を吐き、背嚢から縄を取り出し始めた。

「おっ、私とやり合うつもり?」

 私は笑った。

「どうしても我慢が出来なくなってしまったのです。よろしいですか?」

「いいけど、痛いのはヤダよ」

 私は冗談をいって、床に座ってみた

「ありがとうございます。では……。

 エルクは私を縛り始め、笑みを浮かべた。


 ****


「痛くないようにしたつもりです。あまり、ハードなことは出来ません」

 エルクは床を歩き、私を横倒しにした。

 その上に座り、エルクは小さく息を吐いた。

「いずれ、私は海を越えて異国に帰らねばなりません。ここでの滞在がどのくらいになるか、誰も教えてくれないので分からないですが、すっかり好きになってしまいました。ダメですか?」

 エルクは小さく笑みを浮かべた。

「遠距離が難しいのは分かっています。でも、好きな人は好きなんです。一方通行でいいです。思い人として、心に刻んでおきます。ちなみに、縛っているのでもう逃げられません。まあ、縄抜けを心得ていれば、実は簡単に解けてしまいますけれど……片思いでいいです。素敵ですね」

 エルクはしばらくそのままにして、やがて私から降りて縄を解き始めた。

 全部解くと、縄を綺麗に片付けて、そっと私に手紙を差し出した。

「汚い文字ですが、気持ちだけ受け取って下さい」

 エルクが苦笑した。

「……え、えっと」

 私はしばらくポカンとしてしまった。

「冗談ではないですよ。一目惚れです。女の子同士で変ですか?」

「い、いや、変じゃないけど、マジで私でいいの?」

 こういうのに慣れていない、私は頭が混乱してきた。

「あ、あれ、嫌だったかな……」

 エルクが嘆息した。

「ち、違う。嬉しいから、なにをいえば分からないだけだよ!!」

 私は慌ててフォローした。

「よかったです。さて、トイレにしては流すぎますね。もっと話したかったのですが、出ましょうか」

 私は頭の中真っ白で、ログハウスを出た。


*****


 やけに長いトイレで、なにかあったとは思っていたが、笑顔の犬姉が手を引いてエルクを連れてきた。

「うん、なんか便秘らしくてさ。待たせたね!!」

 犬姉が元気よく答えた。

「……なんかあった臭い」

 リズがポソッと漏らした。

「さぁ、なんだろうね。それより、探検は続くんでしょ?」

「はい、まだ森の入り口です。靴を脱ぎます。本来、エルフは裸足なんですよ。それでは痛し、実際痛いのは確かなので、今はサンダル履きなんですよ。ちょっと、そこの木に登ってみます。森全体を見たいので」

 オーエルは素早く木を登っていった。

「へぇ、裸足だったんだ、メモっておこう」

 私は手帳にメモった。

「はい、今だからいえますが、木の上に隠れて敵を攻撃するのがセオリーなんです。里によっては、銃で武装してる怖い所もあるので、やむを得ない場合を除いて、森にはなるかべく近寄らない方がベターです。捕まると帰してくれないので、その場合は攻撃魔法で森ごと根こそぎ吹き飛ばして下さい。そうでもしないと、殺されてしまいます。自分でいうのもなんですが、攻撃するなら徹底的にやって下さい。もう、半端ない数で逆襲にきますので」

 カレンがため息を吐いた。

「それは怖いね。分かった、森には気をつけるよ」

 私は頷いた。

 すると、スルスルとオーエルが降りてきた。

「かなり広い原生林です。変わった植物も期待できますね」

 オーエルは笑みを浮かべた。

「じゃあ、先に進もうか。やっぱり、自然はいいね」

 私は笑みを浮かべた。

「優しいばかりじゃないですよ。自然は時々牙を剥きます。私がいた里では、もう何人も亡くなっています。川沿いにあるので、どうしても洪水でやられてしまうのです」

 オーエルが小さくため息を吐いた」

「そうなんだ。まあ、水は大事だからね」

 私は小さく息を吐いた。

「あっ、行き先にログハウスがありますね。トイレ大丈夫ですか?」

 オーエルがログハウスを指さした。

「あっ、寄っていきます。怖いので、リズさんを連れていっていいですか?」

「ん、あたしでよければ行くよ!!」

 リズが頷き、私とマルシルはログハウスに入った。



*****

 ログハウスに入ると、マルシルが自分の背嚢をゴソゴソしはじめた。

「あっ、なんか悪い事考えるてるな」

 あたしは笑った。

「あっ、縄を忘れてしまいました。これでいいですね」

 マルシルが私をあたしをに床に横倒しにした。

 その上に座り、マルシルは小さくため息を吐いた。

「これしか知らないんです。これどうぞ」

 マルシルがマズい携帯食を、私の口にねじ込み、小さく笑った。

「慣れていないので、これで結構悩むんです」

「そうですね。蹴ってみましょう」

 マルシルは軽く私の顔をツンツンと蹴った。

「はい、どうですか。自分で動かないということは、満更でもないということですね。私も少しホッとしました」

 マルシルはあたしをそのままにして、しばらく眺めていた。

「なにもない部屋なので、これでもどうぞ」

 マルシルは下着を脱ぎ、渡すの口にねじ込んだ。

「少々エルフ臭いですが、我慢して下さいね」

 マルシルが笑みを浮かべた。

 その時、扉がノックされて、ビスコッティが入ってきた。

「あれ、長いトイレかと思えば、なにかやっていたのですね。失礼」

 ビスコッティが、部屋の隅に座って、見学モードに入った。

「え、えっと……じゃれ合いです!!」

 マルシルが慌てて、あたしを横倒しから真っ直ぐにして、呪文を唱えた。

 ツタ植物があたしの体に巻き付き、動けなくなったところで、頭を撫でた。

「これ、結構魔力を使うんです。いっそ、服でも脱いで裸になりますか?」

 マルシルは笑い、ツタ植物があたしの体から消えた。

「これしか出来ません。どっかのSM野郎が、なにをやるかはどうでもいい。気持ちの問題だとか、変な事をいっていましたが、案外そうかもしれませんね」

 マルシルは笑い、白い封筒を私に手渡した。

「……なにこれ?」

「ほんの気持ちです。私もたまには我慢するんですよ」

 マルシルが笑った。

「あのさ、ここで読んでいい?」

「はい、構いません」

 マルシルが笑った。

 ……歯が浮くような文章が、そこには記されていた。

「……か、考えておく。あたし、スコーン狙いだから」

 ビスコッティが吹き出して笑った。

「また、特殊な告白をしましたね。犬姉は、なんで機嫌がいいんですかねぇ。調査しましょうか?」

「……やめなさい。想像はつくから」

 私は苦笑した。

「なんで、誰も私にくれないんですかね。家庭持ちだからですね。板チョコの一枚くらい、誰かがくれたって損はないのに」

 ビスコッティが笑った。

「板チョコ一枚なんて、安すぎない?」

 私は笑った。

「私はチョコレートを食べた事がないんです。美味しそうなのですが……」

 マルシルが苦笑した。

「ありますよ」

 ビスコッティが背嚢から板チョコを出して、あたしとマルシルにくれた。

「これがチョコレートですか。美味しいです」

 マルシルが笑った。

「あたしのおやつはいつもこれだからなぁ。パトラの野郎がこれしか買ってこないから」

 まあ、あたしにとっては、困った事が起きた事は事実だった。

 なぜなら、恋愛ベタだからであった。


*****


 ログハウスから出た私たちは、森の奥にどんどん進んでいった。

「ねぇ、迷わない?」

 リズが聞くと、先頭を行くオーエルとカレンが頷いた。

「はい、この程度なら……」

 マッピング作業に忙しい二人に声を掛ける事をやめ、さらに森の奥に進んでいった。

「あれ、この足跡は桜イノシシです。まだ新しいですね」

 オーエルが地面にしゃがんで、草を退けてみた。

「まだ、この辺りにいると思います。狩りますか?」

「はい、美味しいのでオススメです。どこにいるやら分かりませんが、土を掘って眠る習性があります。間違いなく、この辺りですね」

 ビスコッティが、ライフルにマガジンをセットしようとして、手が滑って地面に落とした。

「あれ……」

「この島はイノシシが多そうですね。増えすぎてしまうと島中が荒らされてしまうので、間引きしますか……」

 オーエルが空間の裂け目から猟銃を取り出し、カレンが周辺探査魔法で辺りの様子を探った。

「この辺りだけで三十頭はいます。全て就寝中のようで、動きはありません。これは、なかなか骨が折れる作業ですね」

 オーエルが小さくため息を吐いた。

「これは、我々では手に負えません。どうしたものか……」

「待って、こんな時のファン王国海兵隊だよ。応援を呼ぼう」

「はいはい、ハロー。アリサ、ファン王国海兵隊の出番だよ!!」

 犬姉が無線機を取り、家で留守番しているアリサに連絡した。

「すぐにヘリで来るって。こんな時間に、よく起きてるな」

 犬姉が笑みを浮かべた。

 しばらくすると、ヘリの重低音と航空機が現れ、地上に向けて機銃掃射をはじめた。

「馬鹿野郎、大袈裟過ぎるだろ。エンジン音で分かる。アパッチにA-10まで持ち出しやがった!!」

 犬姉が頭を抱えた。

「周辺のイノシシの反応が消えました。もっと奥に進みましょう」

 近くに推定五百ポンド爆弾が落ち、私たちは思わず伏せた。

「馬鹿野郎、どこ狙ってやがる!!」

 犬姉が上空に向かって、一発撃った。

 こうして、夜が明けるまで続いたイノシシの間引き作業は、ヘリで捕らえた粉々になった獲物を演習場に運んでいき、イノシシ間引き作戦は終了した。

「……馬鹿野郎、やり過ぎだ」

 犬姉が呟いた。

 気を取り直し、私たちはさらに森の奥に進んだ。

 オーエルが突然足を止め、鼻をヒクつかした。

「間違いありません、桜イノシシのニオイがします。あの洞窟ですね。

 エルクとカレンが前に出た。

「あの洞窟ですね」

 まだ薄暗いので、暗視装置を付けたまま、私は洞窟を覗き込んだ。

 中には大きなイノシシが寝ていて、微かにいびきの音が聞こえた。

「……一発です。一発で仕留めないと、寝起きが悪い桜イノシシのアタックを食らってしまいます。死傷者が出てしまうので。そのくらい、危険な動物だと思って下さい。

 マッパー二人が剣を抜き、同時に呪文を唱え始めた。

「一発ね……」

 犬姉はマジな表情になり、ライフルを構えると、容赦なく引き金を引いたが。大きく逸れて、洞窟の入り口に命中した。

「あれ?」

 犬姉は、大慌てで銃の確認を始めた。

 発射音で目覚めた桜イノシシが、ゆっくり目を開け、こっちを見た。

「ファイア!!」

「氷の矢!!」

 初めてみたが、マッパー二人が放った魔法は、お互いに干渉を起こし、なんか変な魔法になって、桜イノシシを直撃し、麻痺したようで動かなくなった。

「あれ、魔力干渉?」

 エルクとカレンが同じ事を同時に呟いた。

「変だな、麻痺してるみたいだから、もう一発撃ってみるか」

 犬姉が銃を構えた時、ビスコッティが一発放って、やはり明後日の方向に弾がすっ飛んでいった。

「あれ?」

 ビスコッティが詰まった空薬莢を、指で引っ張りだして投げ捨てた。

「あっ、思い出しました。桜イノシシは簡単な結界魔法を使うのです。さっき魔法が効いたのは偶然です。早くなんとかしないと……」

 オーエルが猟銃を構えて撃ったが、やはりダメだった。

「全く、イノシシごときになにやってるの!!」

 ミンティアが氷の矢を無数に放ったが、全部結界に弾かれた。

「ダメだ、打つ手がない。」

「馬鹿野郎、諦めたら終わりなんだよ!!」

 犬姉が叫んだとき、カサゴソと凄い音がして、リズが追いついてきた。

「よし、間に合った。みんな固まっちゃってどうしたの?」

 リズが不思議そうな顔をした。

「桜イノシシの結界に阻まれて、せっかく麻痺させたのに、にっちもさっちもいかないのです」

 オーエルがため息を吐いた。

「ん、イノシシが魔法使うの。面白い!!」

 リズが叫んで、結界が途切れた。

「今です!!」

 オーエルの声に反応して、犬姉が銃を撃った。

 放たれた弾丸は、見事に桜イノシシの額を撃ち抜いた。

「なんだよ、結界で弾かれただけか犬姉が小さく笑った。


 桜イノシシを倒したものの、どうやって運ぶかが問題になった。

 結局、みんなの力でリズの空間の裂け目に放り込み、私たちは帰途についた。

 オーエルとカレンが近道だと判断した森の奥から、バサバサと茂みを切り裂き道を作り、やがて家が見えてくると、なぜか外でパトラが超高速でネギを刻んでいた。

「……なにしてんの?」

 リズが問いかけると、パトラはネギを切りながら返答した。

「キッチンが一杯なんだよ。獅子汁を期待して、朝から用意してたんだ」

 パトラが笑った。

「助かりました。桜イノシシを捕獲したので、私も外でやります。宿主が死ぬとダニやらノミが一斉に逃げ出すので、屋内では出来ません」

 オーエルが笑った。

「じゃあ、任せたよ」

 エルクが笑った。

「さて、あたしたちは中で待とう。猪汁なんて、久しぶりだ!!」

 リズが笑顔を浮かべ、家の中に入っていった。

 私たちも続けて入ると、エルザとマーティンがハンモックを片付け始めていた。

「たまには手伝わないとな」

 マーティンが笑った。

「何泊するか分からんので、取りあえず片付けてみたぞ。必要なら、また出して使おう」

 マーティンが男女別に分けてハンモックを押し入れに片付け、ちょいど空いたコンロを使って、紅茶の準備を始めた。

「いいねぇ、平和で……」

 私は椅子に座って、半ば居眠りをしていた。


*****

 

 潜水艦「パサデナ」

「艦頭。ここからは、連中の仕事です。これ以上浅瀬には近寄れません。

「分かった」

 艦長は電話の受話器を取り、どこかに連絡した。

「しかし、うるさい潜水艦だな。これではバレてしまうぞ」

 艦長が呟いた時、アラームが鳴り、操舵室内が赤いランプに切り替わった。

「ソナーに感あり、魚雷一本接近中!!」

 パサデナは大きく舵を取り、マスカーを作動させながら急速に深度を深くしていった。「続いて魚雷三発接近中。回避不能。ショックに備えて下さい」

 いつも冷静なソナー員が館長が歯がみした。

「……これまでか」

 館長が呟いた時、派手な爆発と共に、パサデナは深い海の底目がけて沈降していった。「圧壊限界深度越えます。これ以上は、このオンボロでは絶えられません。

 あちこちのナットが飛び始め、直撃した操舵士が動かなくなった。

「だからいったんだ、この島に近づくのは自殺行為だと。しかも、こんなガラガラうるさい潜水艦だぞ。いいだろう、ここで果ててやる。武器管制、魚雷全弾発射」

「了解」

 八本ある魚雷発射管の蓋が全て開き、八本の魚雷がロックオンなしで飛び出た。

「フン……。何人降りた?」

「十人です」

「最低限の仕事はしたな、これでいい」

 館長は深く椅子に座り、パイプを吹かして笑みを浮かべた。

 数分後、パサデナは水圧に耐えきれず、圧壊して南の海に散り果てた。


 *****


 半分寝ていた私は、いきなり島中に鳴ったアラームで目を覚ました。

「な、なに!?」

「ずっと監視カメラの画像を見てたけど、招かざる客だよ。ちょっと、野郎共を連れていってくる」

 犬姉はライフルを掴み、外に出ていった。

「ああ、外に出るなよ!!」

 戻ってきた犬姉が叫ぶようにいって、どこかに行ってしまった。

「なんだろ……」

 私はビスコッティを探したが、どこかにいったらしく、姿が見えなかった。

「ん、敵か?」

 私たちの様子をみて、なにか気になったらしく、アンガスが声を掛けてきた。

「うん、よく分からないけど、非常事態のアラームが鳴りっぱなしだよ。犬姉が動くなっていうなら、動かない方がいいよ」

「それは承服出来かねるな。なにもしないなんてのは、俺たちの流儀に反する。みんな、行くぞ」

 こうして、お客様一行は危険を承知で家から出ていった。

「いっちゃたよ。犬姉が念押しする時は、本当に危険なのに。私はここでいいのかな」

 まあ、とにかく情報がないので動きようもなく、私は椅子に座って小さく息を吐いた。

 そのうち朝食が出来たようで、おばあちゃん二人が食卓に料理を並べ始めた。

「大騒ぎのようですが、こういう時ほど滋養が必要です。お召し上がり下さい。」

 朝ご飯どころではなかったが、とにかく食べて空腹を満たした。

 家に残ったのは、パステル、エルク、カレン、クリムだった。

「ただ事じゃないのは分かったけど、四人ともじっとしていよう。動くとかえって悪化するから」

「はい、分かっています。マッパーの出番ではありません」

 エルクが苦笑した。

 そのうちジェットエンジンの音が響き。派手な機関砲を発射する音が聞こえた。

「な、なにが始まったの!?」

「落ちついて下さい。私たちは、それなりに強いです。こちらでも銃が普及していますので。鎧を着たマーティンとエルザは問題ありません。あとはリーダー以外魔法使いなので自分でなんとかするでしょう。リーダーは偵察です。今頃、ビノクラー片手に狙撃しまくっていますよ。なんの心配もありません。

 エルクが笑った。

「はい、なにかただならぬ敵らしく、ここに追い返されてしまいました。まあ、そういう敵は、冒険者をやっているとよくある事なので、私はリザーブとしてここに置かれています。ゆっくり話しましょう」

 カレンが笑みを浮かべた。

「私の魔法じゃダメみたいです。使えるのと戦えるのは違うと教わりました。悩んでいます……」

 クリムがため息を着いた。

「見てないけど分かる。クリムはまだ魔法使いじゃないよ。もっと勉強して、研究して、自分の魔法を身につけなきゃ、とても魔法使いなんていえないよ。鍛え方が足りん!!」

 私は笑みを浮かべた。

「はい……懲りているので、とりあえず攻撃魔法は自分で封じています。これでも、結界魔法は自信がので……」

「そりゃいいね。封じたって、自分の意思でしょ?」

「いえ、自分で結界を掛けたのです。おばあちゃんがいいというまで、このままにしようかと」

 クリムは小さく笑った。

「じ、自分に結界かけちゃったの。それは、やり過ぎだよ。解除しないと……」

 私はクリムの体をスキャンした。

「……あった、変な魔力の塊。心臓に近いじゃん」

 あまりのリスクに、私は手を控えた。

 その時、リズが勢い良く入ってきた。

「敵は倒した。嫌な予感がして、全力疾走してみたらやっぱり……」

 リズはクリムの全身をスキャンした。

「……なんだこれ。心臓のそばに結界壁があるよ」

「うん、許可が出るまで攻撃魔法を封印しちゃったらしくて、自分に結界をかけちゃったんだって。無茶過ぎるよ。ちょっと結界が動いただけで、心臓に刺さっちゃう」

 リズが少し考え、呪文を唱えた。

 結界は綺麗に消え去り、リズはクリムを引っぱたいた。

「このバカチンが。なにもなかったからいいけど……あれ、もう一個あるぞ。大動脈の真上って、また難しい所に……」

 リズは呪文を唱え、もう一つの結界を解除した。

「なにやってるの!!」

 リズが怒鳴った。

「ここまでやらないと、安心出来なかったんです。酷い事をした自覚はあるんです。応用に入った途端にヘタレになってしまって……」

 クリムはため息を吐いた。

「あのね……。まあ、細かく話しても理解出来ないだろうからいわないけど、命賭けるなら魔法の研究にしなさい。分かった?」

「はい、もうしません」

 クリムは俯いてしまった。

「まあ、あんまり怒っても意味ないから、このくらいにしてご飯食べたら。おばあちゃんたちが温め直してるから」

「ああ、そうそう。メシ食いに帰ってきたって用事もあった。いい、変な封印しないようね。危ないなぁ。全く」

 リズはご飯を食べにテーブルに向かった。

 その途端、家の明かりがおちて非常灯だけになった。

「あれ……」

 私は家の外にでて、電力を供給している魔力ジェネレータの様子を見に行った。

「焦げ臭いなぁ……燃えたかな」

 私はジェネレータの蓋を外し、高電圧注意のステッカーが貼られた中心部の蓋をそっと開けた。

「あれ、配線が溶けちゃってるよ。スイッチどこだっけ……」

 私はジェネレータのスイッチをオフにして、配線に回復魔法を掛けた。

 解けていた配線の皮膜が元に戻り、スイッチをオンにすると、問題なくジェネレータは作動して、家の電気は復活した。

「初期不良じゃやないね。また、クソボロいヤツ買ってきたな」

 私は苦笑して、家に戻った。

「なに、直したの?」

 ご飯を食べながら、リズが笑った。

「うん、配線のショートだったよ。全くボロいんだから」

 私は笑った。

「よく火災にならなかったな……。まあ、いいや。このメシ美味い!!」

 リズが上機嫌になった。

 しばらくすると、血まみれのビスコッティが帰ってきた。

「うわっ、ビスコッティ!!」

 私はビスコッティのそばに寄り、玄関先で服を脱がせた。

「……師匠、なんでここなんですか?」

「だって、この家ってどこでも同じじゃん。玄関でも……」

 ビスコッティのゲンコツが私に落ちた。

「痛かった?

「……うん、痛い」

 ビスコッティが笑みを浮かべた。

 まあ、何はともあれ、リズは無事そうだったが、なんか妙な感じだった。

「リズ、脂汗かいてるよ。怪我してるね」

「ん、塩でも掛けて寝れば直る!!」

 リズが笑った。

「……ビスコッティ!!」

「はい、どうしました?

 ビスコッティがやってきた。

「リズが怪我してるよ。癒やして!!」

「分かりました」

 ビスコッティはリズに回復魔法を掛けた。

「両足のすねにヒビが入っていました。これで、大丈夫です。ところで、私はいつまで素っ裸なんですか?」

「ああ、忘れてた!?」

 私はビスコッティ体をスキャンした。

「うーん、よく分からないな。骨折はないとは思うけど……」

 そこに、ヒーラーのアンズが帰ってきた。

「ビスコッティの怪我、どうにかならないかな……」

「はい、待って下さい」

 アンズが呪文と唱えると、ビスコッティの体の周りを青白い光りが覆い、怪我は綺麗に直った。

「すっげ……」

 私は目を見張った。

「ありがとうございます。着替え持ってきて正解でした」

 ビスコッティが着替え、洗濯機で洗濯を始めた。

「そのうち、犬姉が生還してして。アンズが治療を始めた。

「お腹に一発、まともに食らっています。治しましょう」

 アンズが犬姉の傷を治した。

 こうして、全員が無事ではなかったが、なんとか帰還し誰だか分からない敵は、殲滅された。

 晩ご飯も終わり、リズが夜食用に料理を冷蔵庫に入れ始めた。

「お酒の肴にぶり大根を作りました。よろしければどうぞ」

 Wおばあちゃんが、やや濃いめの味付けにしたぶり大根を出してくれた。

「お酒です。こういう時は、ポン酒に限ります!!」

 ビスコッティが、空間の裂け目からお酒のボトルを取り出した。

「うん、美味しそうだね」

 ビスコッティがお酒をグラスに注いで、全員に回した。

「では、乾杯!!」

 ビスコッティが呑み始め、私のぶり大根を取り上げた。

「あー!!」

 私は取り返そうと頑張ったが、ビスコッティに勝てるわけがなかった。

 すかさず、マルシルのおばあちゃんが、私の前にぶり大根が入った器を置き、私は速攻食べきった。

「ほら、早食いになった。次は大食いだよ!!」

 リズが笑った。

「しっかし、なんだあれ。弱くて剣の錆にもならん」

 マーティンが笑った。

「まあ、確かにな。この鎧で、銃弾なんか跳ね返したが、変なロケット弾とかいうものを撃たれた時は、さすがにビビって避けたぞ。正解だったかもしれんな。あんなものを食らったら、無傷では済まなかっただろう。しかし、酒も美味いしこの小鉢も料理も美味い。おかわりがあるといいのだが……」

「はい、たくさんありますよ」

 おばあちゃんが笑った。

 こうしてお酒が進み、いきなりビスコッティが倒れた。

「うわっ!?」

「飲みすぎですね。これを……」

 薬師のウィンディが、慌てて薬を飲ませた。

「一分でなおります。軽い急性アルコール中毒でしょう」

 数えてみたが、ちょうど六十秒でビスコッティが復活した。

「あれ?」

「あれ? じゃないよ。ぶっ倒れたんだよアル中で!!」

 私は笑った。

「そ、そんな馬鹿な。私が倒れた!?」

「倒れたものは倒れたもの。疲れてるんじゃない?」

 私は笑った。

「うむ、酒に飲まれる日があってもよかろう」

 エルザが笑った。

「師匠、私は病気です。肝臓がきっとおかしいです。病院に……」

「病気なのは頭だよ。バーカ」

 私は笑った。

 ビスコッティが私にゲンコツを落とした。

「……ごめんなさいは?」

「……やなこった」

 私は笑った。

 ビスコッティパンチが、私の頬をかすって、派手に出血した。

「はい、今度はお怪我ですね。二秒で直ります」

 ウィンディが笑みを浮かべ。顔に塗った。

 確かに傷はすぐ治り、私は笑みを浮かべた。

 とまあ、そんな訳でお酒も進んだ頃、滅多に飲まない私は気分が悪くなった。

「ビスコッティ、肝臓貸して……」

「あれ、どうしました?」

 ビスコッティが不思議そうに聞いた。

「見れば分かるでしょ。飲み過ぎて気持ち悪い……」

「師匠、トイレ!!」

 ビスコッティが、私をトイレにぶち込んだ。

 色々吐き出してすっきりした私は、さすがにもう飲む気はなくなり、家から出ると立ち番をしていた犬姉が声を掛けてきた。

「ん、まだ危険かもしれないのに、外出かい。止めないけど、気をつけてね」

 犬姉が笑みを浮かべた。

「うん、ちょっと散歩。リズにザリガニセットを借りればよかったかな」

「もうザリガニはいいよ。行ってこい!!」

 犬姉が笑った。

 私は森の小道に入ると、私は『ビーチ』と書かれた看板を曲がった。

 すぐに砂浜に着くと、私は誰もいない砂を踏みながら、夜空に上がった月を眺めた。

「ん、なんかいるな。これが、噂のマグロ?」

 私は砂浜を歩き、マグロ? を探し始めた。

「いないな……。美味いって聞いてるんだけど……」

 私が小首を傾げた。

 しばらく歩いてみると、いきなり発砲音と共に、砂が弾けた。

「うん、マグロは狙撃する。覚えておこう」

 私は拳銃を抜こうとして、小回りがスカスカなのに気が付いた。

「あれ?」

 しょがないので、私はポケットに入れてある手榴弾を投げた。

 砂が激しく舞い上がり、マグロはどこかにいってしまったらしく、気配が消えてしまった。

「あーあ、逃げちゃった。まだどっかにいないかな……」

 私が進む行く先に、なんかボートみたいなものが、砂浜に乗り上げて置いてあった。

「あっ、いいのがあった。これで遊ぼう」

 私はボートを無理やり押し出して海に浮かぶと、エンジンを掛けて疾走しはじめた。

「うん、マグロを捕りにいこう。どこにいるのかな……」

 私は暗い海をみてみたが、なにも見えなかった。

「これじゃマグロがみえないよ。リズに竿を借りればよかったな。ザリガニならいるかな……」

 私の船は蛇行を繰り返し、沖に見えてきた船がなんか怪しい空気を放っていた。

「うん、フレア・アロー」

 無数の炎の矢が海中を進み、怪しい船に命中すると、粉々になって轟沈した。

「さて、マグロを探そう。魚群探知機くらいないのかな……」

 私が操縦するボートは、船の沈没した辺りを捜索し、生き残った船員を助けようとして、なんか嫌な予感がしてやめた。

「えっと……港は……」

 探しているうちに、エンジンが咳き込むような音が聞こえ、そのまま止まった。

「あれ?」

 私はもう一度船のエンジンを掛けようとしたが、全然動かなかった。

「あれ、ぶっ壊れたかな」

 燃料メータを見たら、完全にガス欠だった。

「まあ、ないものはしょうがないね。急にお腹空いてきたな。アジでもいいや。どっかにいないかな」

 海を覗いてみると、トラフグが浮いたり沈んだりしていた。

「まあ、これでいいや。どうやって調理すれば、毒に当たらないかな……」

 でも、網すらないので諦めた。

『師匠、どこですか?』

 無線でビスコッティが呼びかけてきた・

「海だよ。どこだか分からん!!」

 やっと酔いが醒めてきた私は、潮流に乗ってどこぞへと向かっていった。


「……気が付いたら、変なボートだね」

 私はボートに積まれたジェリ缶から、燃料をタンクに注ぎ込み、エンジンを掛けようとしたが、セルモーターがいかれた様子で、うんともすんともいわなかった。

「……やっぱ、ぶっ壊れてる」

 私がエンジンをぶん殴ると、咳き込むような音と共に。エンジンが掛かった。

「なんだこれ……。ま、まあいいや。そのうち、ビスコッティが無線を使って三角測量でもやってきてくれるな。無線は常にONだし」

 私は笑みを浮かべた。

 しばらくして、エンジン音をまき散らしながら、カリーナのマークを付けた旗を揚げたクルーザーが、派手にサーチライトを付けながら通過していった。

「あれ、違うのかな。アジでも釣りに行くのかな……」

 と思ったら、慌てた様子で舵を切り、ボートの脇に止まった。

「師匠、どこまでいっちゃうんですか。ビシバシします!!」

 ビスコッティの声が聞こえ。クルーザーの舳先がブチあたり、私のボートをひっくり返した。

「アブブ……」

 救命胴衣なんかないので、海に投げだれた私は、そのまま沈んでいった。

 そこに、用意がいいことにウェットスーツとアクアラングを装備した二人が降りて来て、私を拾い上げて、船に乗せてくれた。

「師匠、どこにお出かけですか?」

 ビスコッティが、怒りマークを浮かべ、私に迫ってきた。

「銃がいいですか、それとも素手?」

「じ、銃で!!」

 私は逃げようとしたが、ビスコッティに首輪を付けられ、終いには鎖まで付けられた。「すぐに勝手にどっかいっちゃうので……」

 さらに鍵までかけ、ガンガン鎖を引っ張って船内に突っ込まれた。

「それそのままですからね。皮に見せかけた金属の輪っかなので。これで、どこにも逃げられません」

 上機嫌のビスコッティに、私は泣きそうになってしがみついた。

「やめて、もうどっか行かないから!!」

「信じません。ダメです」

 ビスコッティが、私の頭を銃でぶん殴った」

「信じてよ、これもお仕置きなの。取ってよ!!」

「はい、お仕置きです。何人動員したと思っていますか。ファン王国海兵隊の皆さんまで動員を掛けたんですよ。百人では利かないです」

「……それじゃ、こうなるね。分かったよ」

 私は小さく息を吐いた。

「分かってもらえれば結構です。もう、ダメですよ。置き去りの得体の知れないボートには乗らないで下さいね」

「乗らないよ。乗らないから取ってよ。

 私はビスコッティに向かって泣いた。

「今はどうしようか考えています。どうも、どっかの馬鹿野郎がなんかやりそうなので……」

「じゃあ、その馬鹿野郎を排除してよ。元のビスコッティに戻って!!」

「いうこと聞きます?」

 ビスコッティが笑った。

「聞くよ。こんなのやだよ」

「分かりました。使用済みでも返品可能な、珍しいお店なので、さっそくアマゾン経由で返品しましょう」

 ビスコッティが片付けを始めると、犬姉が船内に入ってきた。

「なに、もうお仕置き終わりなの?」

「はい、泣くほどイヤだったみたいで……」

 ビスコッティはせっせと箱詰めしながら、笑った。

「ん、それ面白そうだね。コードネームハウンドドッグに相応しい格好になってやるか」

 犬姉が自分で首輪をつけ、どっかにいってしまった。

「あっ、鍵ちょうだい。どうせそれ返すんでしょ。鎖とか頂戴。戦闘時は外すけど!!」

「い、いいですけど……それ、真面目にアキちゃんアキちゃん。犬姉どうしたの? 多分、自分は誰かの犬であるって、なんかアピールしたかったんじゃない。前の時も、自分でいってたし、ファッションにしては生々しいな。うん、地味なのが売りだったのに、いきなりおかしくなったから。なんかねぇ、プロやめたくなったとかいってたよ。疲れてるんじゃない?」

「えっ、そうなの?」

「まあ、いつもの冗談だろうとは思っていますが、例えやめてもプロはプロですよ。

 ビスコッティが笑った。

 その時、無線ががなった。

「あれ、犬姉ですよ。えっ、もう一度……プロやめてみんなと友達になりたい!?」

 ビスコッティの声が裏返った。

「ああ、失礼しました。もう引退していい年齢だし、疲れちゃった。やめたってプロだぜぇって正気ですか? はい、分かりました」

 ビスコッティが困惑顔になった。

「ど、どうしたの?」

「はい、犬姉がプロやめて平穏に暮らしたいそうです。もちろん、今まで通り護衛はやるし、警備隊の隊長もそれなりの人物を充てるといって、決意は固そうです。なにをいっても無駄でしょう。私も、そろそろ年齢的に限界だろうとは思っていましたが、正直困惑しています」

「なんでまた、急に……」

 私たちを乗せた船はそのまま港に帰り、ニコニコ笑顔の犬姉と出会った。

「やっと肩の荷が下りたよ。これからは、犬って呼んでいいぞ!!

 犬姉が笑った。

「犬って、呼べるわけないじゃん」

 私は苦笑した。

「遠慮すんなよ。元プロになっただけだ。本国ではマジで犬扱いだったんだぞ。今さらだ!!」

 犬姉は笑った。

「そんな急に……」

「では、犬と呼びましょう。こんなところでなにやっていたんですか?」

 えっと……犬が笑った。

「ちゃんと散歩させろよ。鈍っちまうぜ。これからどっか行くのか?」

「行かないよ。またビスコッティにお仕置きされちゃうよ!!

 私は笑った。

「うん、いいんだけど犬って呼びたくない。犬姉でいいの」

「もちろん、それは構わないですよ。私も犬とは呼びません。そういう呼び方は嫌いなので。分かった、やるよ。今まで取りです」

 ビスコッティが、笑ってア○ンの請求書もつけておきます」

 ビスコッティが、箱の中に請求書もいれておきました

 ビスコッティが、が箱の中に紙を押し込んだ・

「なにこれ、一ダースも買ったの?」

「はい、ロット単位でしか売ってくれなかたんです。もう、邪魔で……」

 ビスコッティが苦笑した。

「なんだ、いってくれれば格安で売ってあげたのに。首輪はさすがにないけど!!」

 犬姉は笑って、船から降りていった。

「まさか、こんな日がくるとは……どうしちゃったんんだろう……」

 ビスコッティが、私を残して船を降りていった。

「ま、待って、ビスコッティ。チームメイトを置き去りですか?

 私は慌ててビスコッティについていった。

「ビスコッティはタラップのところで、アリサにしがみついて泣いていた」

「まあ、いずれは来る日だよ。マグロ料理を用意したみたいだから、早く帰ろう」

 ビスコッティが、アリサと一緒に家に向かうバスに乗った。

「あっ、もうみんな乗ってるのね。中に入ろう」

 私がバスに乗り込むと、扉がしまってゆっくり走りはじめた。

 私が最後方の椅子をみると、リズがパトラにへばりついて、粛々と泣いていた。

「そ、そんなに凄いのね……」

 私が呟くと。窓ガラスにヒビが入った。

「……またきた」

 私はため息を吐き、ライフルを持ってバスから飛びでていった芋ジャージオジサンが、どこかに消えていった。

 その時、窓に二個の穴が開いた。

「……この野郎」

 私はバスの出発を待った。

 そのうち、モータ音のような声が聞こえ。ドババと窓ガラスが派手に割れたが、私は床に伏せた。

「なんて日だ」

 私は呟いた。

「マグロ、避けて下さい……。ビスコッティ、伏せていいのはマグロだけです」

 ビスコティ声を上げた。

「マグロが食べたい。お酒でスッキリしたい……」

 私はビスコッティをぶん殴った。

「誰がマグロじゃ、このボケ!!」

 その時、銃の発砲音が聞こえ、激しい撃ち合いになり、バスが全速力で走り始めた。

 途中、扉が開いたまま閉じなくなってしまったが。まるで戦場救急車のような凄まじい速度で走り出した。

床に伏せていた私は、吹っ飛ばされないように、絶えながらバスが止まるのを待った。

 森を抜けると、バスのタイヤがパンクしたのか、一回転して、ピタリとバス停に止まった。

「はい、着きましたよ」

 あくまで冷静な運転手は、にこやかに笑うと、ぶっ壊れて閉まらない扉から家の前に入った。


 家中に入ると、おばあちゃんたちが料理を作り、香りだけで麻婆豆腐と分かった。

「はい、間違えて辛くしてしまいました。本場ほどではないではないので、安心してくだい」

 マルシルのおばあちゃんが、白飯を持ってやってきた。

「ビスコッティ、これ辛いよ!!」

「気合いです!!」

 ビスコッティが笑った。

「気合いって……ごめん、どうしても無理!!」

 私は小さな息を吐いた。

「では、二品目がくるのを待ちましょう。たしか、マグロだったような……」

 ビスコッティが小さな息を吐いた。

「マグロ!!」

 私は嬉しくて。ビスコッティを殴ったが避けられた。

「マグロ!!」

「私は笑みを浮かべた」

「なんでマグロなんですか。ノドグロの焼きで……」

 おばあちゃんたちが、魚を焼き始めた。

「ノートル湖の塩田から削ってきました。お口に合うか分かりませんが……」

 わたしはお皿に盛られた焼き魚に、塩を少々つけ。赤い皮がついたまま囓った。

「……美味い。オヤジ、もう一貫くれ」

 私は思わず呟いた。

「おやじではなくおばあちゃんたちです。はい、香箱もどうぞ」

 おばあちゃんが、小さなカニを持ってやってきた。

「これ、どうやって食べるの、ちっこいカニ」

「これはこうやって、手足を落としてバキッと割って」

 ビスコッティは私のお皿に戻した。

「玉子とカニ味噌だけです。あとは大丈夫ですか?」

「うん!!」

 私は玉子を食べ、カニ味噌を食べてみた。

「うん、美味しいよ。これ美味しいよ。研究室で飼う!!」

「師匠、これは食べ物です。飼ってもいいですが、持ち帰る前に私が食べちゃいますよ。 ビスコッティが笑った。

「食べちゃダメだよ。せっかく生態とか何食べているのか調べたいのに……」

 私は小さく息を吐いた。

「ビスコッティ、いわしの塩焼き食べたい」

「はい、もう間もなく到着します」

 すると、玄関をぶっ壊して、軽トラがバックして入ってきた。

「……」

「師匠、着きましたよ。鰯とマグロ」

 ビスコティが、財布を持って玄関に行き、支払いを済ませ。軽トラが泣きながら去っていった。

「泣いちゃったよ」

「はい、男は背中で泣くものです。さて、鰯から食べる事にしましょう。味噌煮込みがいいでしょう。このあと、師匠の大好きなマグロが届きますよ」

「うん、刺身がきますので、ビックリしますよ」

 ビスコッティは笑った。

「ビックリってなに。マグロの刺身?

「はい。ですが、驚きますよ。見たことがないでしょうから」

 ビスコッティが笑ったとき、ぶっ壊れた玄関から、見るからに漁師のおじさんと芋オジサン率いる用務員部隊が入ってきた。

「おう、元気にやってるか。捌くから待ってろ」

 おじさんが、なぜだか置いてあったテーブルにのったまな板の上にマグロを置き、いきなり解体を始めた。

「……しゅごい」

 私は思わず呟いた。

「やっぱ冷凍物とは違うな。トロからいくか……」

 おじさんが呟き、包丁を走らせ始めた。

 丁寧に平皿に盛られた皿にのせられた刺身に、わさびを溶かした醤油にチョンとつけ、そっと口に運んだ。

「……美味い」

 私は日本酒をちびりとやり、再び刺身を食べた。

 確かにビックリした。

 いきなり、目の前で解体するとは、いくらなんでも予想出来なかった。

「ビスコッティ、マグロを飼おう!!」

「ダメです。回遊魚ですよ。生半可な水槽に入りません。窒息死してしまいます」

「そっか……。しっかし、デカいね。これがマグロか」

 私は笑みを浮かべた。

「はい、なにかイカとか一杯あるみたいなので、躍り食いでもしますか」

 ビスコッティが、私に並々日本酒をついだ。

「あんまりつがないでよ。また、おかしくなるから」

 私は苦笑した。

「はい、今度はイカですね。探しに行きましょう。森の中にいるかも知れませんよ」

 ビスコッティが笑った

「じゃあ、森にいってみましょう」

 ビスコッティが冗談めかして笑った。

「じゃあ、行く!!」

「冗談です」

 その時、ビスコッティが真顔になった。

「ポイントB。二十人以上。了解」

 ビスコッティが席をたった。

「あれ、どっか行くの?」

「いえ、食べてからです。魚介類に申し訳が立ちません」

 ビスコッティがまた席に座り適当に食べると、狙撃銃を片手に家から飛び出していった。

「あたしもいった方がいいのかな……」

 ジャージオジサンたちがテーブルにあった料理を全て食べ、芋ジャージオジサンたちが外に出ていった。

「いいや、あたしたちも行こう。パトラ、いつまで食ってる!!」

「ん、なぁに?」

 パトラは、飲みすぎでベロンベロンだった。

「ああ、この馬鹿野郎。いい、あたし一人でいく!!」

 リズはナイフだけ持って、ぶっ壊れた玄関を飛びでていった。

「あれ、リズ銃を忘れてるよ」

 私は慌てて、リズに無線連絡した。

『森の中で、銃なんか役立に立たないよ!!』

 リズの声聞こえ、笑った。

「……しゅごい気合い」

 私は苦笑した。

「私は静かになってしまった家の中で、おばあちゃんたちが食べ始めたので、とっておきのカラスミを食べ、日本酒をあおった。

「うん、美味い。あとも一缶あるけど、ビスコッティに食わさないとビシビシされるかrなぁ」

 私はそれをビスコッティの秘密ボックスに放り込んで…始末した。

「これでいいや。飲めないから、外にいってくるかな」

「玄関を出ると、マンドラゴラが自生しているのを見つけた。

「よし、ひとかぶだけっこ抜こう。抜くと叫ぶっていうけど、あれは嘘なのは知ってるし

 私はマンドラゴラを二株抜いた。

 凄まじい悲鳴が聞こえたが、それだけだった。

「ほら、平気。お土産に持たせてあげよう」

 私は満足すると、家の中に入ってウェンディとウィンディにマンドラゴラを一個ずつ揚げた。

「こ、これは、マンドラゴラ!?」

「どこでみつけたのですか?」

 ウィンディとウェンディが同時に声を上げた。

「家のすぐそこに自生していたよ!!」

「あの、少しとっていいですか。買うと高くて」

「はい、金貨七百枚もするんです」

 二人が苦笑した。

「あんまり取らないでね。根っこさえ残れば、またはえてくるから」

「はい、分かっています。困ったら、またきてしまうかも知れません。よろしいですか?」

「分かった、みんな纏めておいでよ。但し、陸送はカリーナまでね、そあとは送るから!!」

  私は笑った。

「はい、マッパーの血が騒ぐ旅です。

 エルクが小さく笑った。

「島の地図を探す途中でカニを見つけました。しおゆでにしたら美味しかったですよ。平和が一番です。敵がきてるなら、仕掛けましょう。もう、みんな準備が出来て出てくると思いますよ」

 マッパー三人がボッと魔力の生ガスを吹いて、大声で笑った。

「よし、体を解しに行くぞ」

 アンガスが出てきて、ついてマーティンが剣を片手に家から出てきてしまった。

「あ、危ないよ!!」

「なに、大した事はない。どこかのチンピラだろ」

 マーティンが笑った。

「待たせたな、ちと斧を重くしたから、持ち上げるのに苦労してな」

 エルザが笑って出てきた。

「ごめんなさい。みんな暴れたくれ、戦いたくて、どうにも止まらないそうで。ちょっといってきていいですか?」

 マールディアは笑みを浮かべた。

「怪我しちゃうよ。ダメだよ!!」

「任せろ。戦ってこその戦士だ。パーティ全員で行く。そう簡単にはやられたりしないさ」

 お客さんたちは、森の中に消えていき、金属音と悲鳴が聞こえ始めた。

「うわ……」

 私は怖いので取りあえず伏せてみた。

「よく育ってますね。抜いたときの悲鳴が大きい方が、成熟しいるんです」

「はい、これはいいですね。二本掘りましょう」

「そうですねぇ……欲張って三本ほど、頂いてよろしいですか?」

 戦闘なんてどこ吹く風。薬師魂をみた私は、すぐには答えられなかった。

「あれ?」

「多すぎましたかね。確かに貴重ですから……」

 二人が苦笑した。

「い、いいよ。戦闘の最中にこれでいいの?」

「はい、私たちは護身用のハッタリにナイフを持っているだけです。いつも馬車の中ですよ。揺れが邪魔になるので、馬車が止まった時しか出来ない薬品も多いんです。よりよい魔法薬を作る。それが、私たちの役目であり誇りでもあるんです」

 ウェンディが笑った。

「はい、妹には負けられません。私たちは姉妹なんです。えっと、サンザシの実はこのくらいで……」

 ウィンディが笑みを浮かべた。

「あっ、ベニソラ忘れた。まあ、こんなもんか……」

 ……私はついていけなかったが、なんかすんごい魔法薬を作っているのは分かった。

 そのうち、いつものような装置に掛け、ポコポコと沸かし始め、薄緑色が黒色に変わった。

「姉さん行くよ!!」

「なに、そっちが先だったか」

 ウィンディが声をあげ、ウェンディが試験管が太めの試験管に魔法薬のようなものを注ぎ、すっと試験管の脇に指を走らせた。

 ポンと音がして、金色に光る魔法薬が管制した。

 それをポンポン量産し、小さな薬瓶を地面に置いていった。

「姉さん、どのくらい必要かな?」

「百個も作ればいいんじゃない。腐っても、エリクサーだし。もう百個いくか」

 結局、私が理解出来ないまま、魔法薬作りは終わったようだった。

「……こんなたくさん。作ってどうするの?」

 ウィンディが笑みを浮かべた。

「はい、戦闘で怪我した方もたくさんいるでしょうから、念のため作って置きました。これしか能がないので、パーティに置いてもらうには、この程度出来ないといけません」

 ウェンディが笑った。

「……笑ってるよ。笑ってるよ。ブルブル、バッシャーとかいってみよう」

 そのうち家に火球が向かってきて、私はそれを拳銃で撃った。

 爆発したそれは、それだけで消えてしまった。

「……なんだ、あれ?」

「さぁ、分かりませんが。お遊びじゃないんですかね」

 ウェンディが笑った。

「……あれ、もう一人のアリサじゃないかな。ちゃんと教えたはずなのに、こけおどしの上に、変な方向に撃ったな」

 私は苦笑した。

 その時、なんかちっこいヘリが飛んできて、どうやら上空監視していてるようだった・

「あっ、背面飛行してる。遊んでるのかな。と思ったら元に戻った」

 ……なんてヘリだ。

 私は攻撃魔法を唱えた。

 しかし、ひょいっとかわし、そのままどこかにいってしまった。

「な、なんだあれ、避けたぞ……」

 私は唖然とした。

 まあ、なんか変なのがきたということだけは心にしまい、私は立ち上がった。

「……やっぱ、マグロだな。近頃はマグロも空飛ぶっていうし……あれ、違ったかな?」

 私はちょっとだけ、混乱していた。

 そのうち、担架で怪我人が運ばれてきた。

「あれ、敵が混ざってない?」

 服装で大体分かった私は、思わず家に逃げ込もうとしたが、姉妹二人が魔法薬で治療を始めた。

「結構な怪我ですね。はいはい……」

 ウェンディが笑みを浮かべ、せっせと怪我人に魔法薬を飲ませ始めた。

 そのうち、家の周りが担架だらけになり、送れてやってきた、撃たれてそこら中傷だらけのお客さんが帰ってきた。

「魔力切れです……」

「同じく……」

 ヒーラーのセリカとカレンが帰ってきた。

「ビスコッティ、どこ行った?」

 私は無線でビスコティをよびだしたが、クソうるさい変な音が反ってくるだけで、応答がなかった。

「やばい、ビスコッティが死んだ……」

 私は泣き崩れた。

 その前で、ビスコッティがせっせとトリアージしていた。

「……あれ?」

 私は目を拭いて、ビスコッティの所にいった。

「なんで無線に出ないの?」

「敵弾食らってぶっ壊れただけです。それより、手伝って下さい」

 私の目には、どれも同じ怪我人に見えた。

「ちょっと退け!!」

 リズが私を弾き飛ばすとトリアージ用の札を引ったくり、凄まじい速さで分類を始めた。

「コイツは赤と黒ギリギリだな。急げ!!」

 パトガが一応回復魔法を掛け、首を横に振って、大盤振る舞いのエリクサーを飲ませ、呪文を唱え、森の奥に向かって走っていった。

「あれ、元気いいね。もう走っていったよ」

 私は苦笑した。

「はい、肋骨にヒビが入っただけなので。でも、なんでしょうね。忘れ物でもしたのでしょう」

 ビスコッティが、小首を傾げた。

「まあ、いいや。よく分からないから任せた!!」

「おっ、やってるね!!」

 パトラが出てきて笑った。

「ん、あれあの薬瓶は?」

 パトラが薬瓶を一個取ってみて、顔色を変えた。

「なにこれ、エクアドルとか誤魔化してるけど、エリクサーじゃん。こんなに作っちゃったの!?」

 パトラが空間に穴を空け、パクリ始めた。

「それ、好きなだけあげます。失敗作なので」

「ふーん……」

 パトラが乳鉢を覗き込んだ途端、薬師にめいがビシバシぶん殴った。

「怒られちった!!」

 パトラがタピオカバナナシェークの飲みながら、どこかにいってしまった。

「アイツ、あたしの分は?」

 リズがパトラを追いかけた。

「……うん、なんかあったな」

 私は苦笑したが、トリアージの札を取られてしまったので、邪魔にならないように端に退いた。

「しばらく体育座りしていると、ビスコッティがやってきた。

「終わりました。家に入りましょう」

 私はビスコッティと一緒に、上に入った。

 気付くのが遅くて反応が送れたが、いつの間に玄関が直り、アリサが工具を片付けてた。「……それ、どうしたの?」

「はい、木はいいですね。暇なので、玄関を直しておきました。それと、なんか郵便が来ています。おかしいですね、ここは一応秘密なのですが。

 白い封筒を開けて見ると、武器兵器市場の特売チラシですね。あそこは、一回買い物すると、お得様扱いで安く買える日があるんです。明日までですか。A-10Aが安いですね。F-14も叩き売りしています。あとは拳銃が妙に安いような……買いです!!」ビスコッティが笑った。

「うん、行こう。でも、待ってておばあちゃんたちが×マーク出してるよ」

「今に待っていて下ださい。漁師さんが、大物を釣ってきてくれるそうです。頂いてからでも、十分間に合うでしょう」

 おばあちゃんたちが拳銃を抜き、残弾を確かめた。

 それをしまい、素知らぬ顔をして銃をしまい、何事もなかったかのように、ほんわか優しい笑みを浮かべた。

「マグロ!!」

 私は叫んだ。

「マグロではセイゴです。ぶりは成長魚といって、名前が変わるんですよ」

「なに、またぶり大根!!」

 私はホクホクの笑顔を浮かべた。

「いえ、セイゴです。身が締まっているので、刺身がいいでしょう」

「そうなの。まあ、いいやそれ、食べたい。あとノリシオ!!」

「なんでノリシオなんですか。まあ、ありますけど」

 ビスコッティがポテチのノリシオを出した。

「これじゃなくて、この前配合比率を計算したヤツがあったでしょ。五番!!」

「はい、五番です」

 ビスコッティが、塩とノリが入った瓶を取り出した。

「これこれ。これがないとね」

 漁師さんが軽トラで魚を運んできてくれた。

 ビスコッティがお財布をだすと、漁師さんは代金も受け取らず帰っていった。

「あれ、いいのかな……」

 ビスコッティが財布を引っ込め、鞄にいれた。

 玄関には大量の海産物が置かれた。

「まぁ、これは凄いですね。作り甲斐があります」

 マルシルのおばあちゃんがニコニコ笑顔で、クリムのおばあちゃんと凄まじい速さで料理を始めた。

 そして、なぜかパトラが大根の皮を剥き始めた・

「なにしてんの?」

「大根おろしだよ。これだいじ!!」

 パトラが超速でおろし金で大根をおろすと、残りをリズの放り込んだ。

「はい、出来ました。どうぞ、お刺身です」

「朝から豪華だねぇ」

 私は呟き、塩をふって楽しみ始めた。

「はい、師匠。ここにきて、忙しかったですからね。ノンビリしましょう。

 結局、朝ご飯が終わったのは、十二時近くだった。

「あれ、食い過ぎ?」

 私は笑った。

「あの、私たちはそろそろお暇しないと……」

「マーディア、もうちょっとゆっくりしていきなよ。これから武器選びもあるし、帰っちゃったら面白くないよ!!」

 私は笑った。

「いえその……諸般の事情であまり時間がないんです。ごめんなさい」

 マールディアがいったとき、ジェットエンジン音が聞こえ。ガラガラ凄い音が家を揺さぶった。

「あれ、なんか爆撃。それとも、マグロが刺さった!?」

 私は家からでると、滑走路上でジャージオジサンたちが急いで回収を始め、芋ジャージオジサンが木箱に蹴りを入れて破壊していた。

「なにが届いたんだろ?」

 私は怖いので、家に隠れて待った。

 すると、中からア○ゾンの箱が大量に降ろされはじめた。

「あれ、どっかで見たスマイルマーク……」

「師匠、マールディアさんとアリサさんの服やらなにやらが届きましたよ。あと、今日の新聞とか、掃除機などが入っているはずです」

「へぇ。あっ、芋ジャージオジサンが蹴りをやめて、バールのようなものを使い始めたよ」

「師匠、手伝ってきます」

「ア○ゾンなら平気だよね。私も手伝う!!」

 私はビスコッティと外に出て、貨物積み下ろしようのトラクタに箱を積み上げていた。「おーい、まだかーい!!」

 いつの間にかトラクタの運転席にリズが座り、犬姉が隣に座っていた。

「終わった。しかし、なにを買ったんだ。輸送機一機分だぞ」

 犬姉は秘密といい、パトラが最後尾の箱に座って口笛を吹き始めた。

 リズがトラクターを動かし、駐機場から大荷物を載せたトラクターを家の前に着けた。 パトラが凄い勢いで箱を中にぶち込み、中にいた人たちが開梱作業に入った。

「師匠、そこやってください。洗濯機は重いので、男性陣に任せます。あと、お風呂の掃除。誰もいいので、擦りまくって下さい」

 芋ジャージオジサンたちが散って、風呂場の掃除に入った。

「あとドレッサーですが、水の出がわるので、リルムとおばあちゃんたち、ちょっとみてください」

「はい、分かりました。こういうのはコツがあるんです。リルムは創世魔法で配管を全て交換して下さい。ナットの回しすぎで、接合部がナメてしまったのでしょう。かなり水漏れしています」

 脱衣所から、おばあちゃんたちの声が聞こえてきた。

「創世魔法ですが、こんな複雑なものは……それでも、パシッと脱衣場が光り、なにか完成為たようだった。

「……見に行こう」

 私が動くと。ビスコッティがそっと脱衣所にいった。

「師匠、見学しましょう。許可は取りましたよ!!」

 ビスコッティの声が聞こえた。

「いいの!!」

 私は笑って脱衣所に入った。

 そこでは、なんか想像と違って、デカいドレッサーが置いてあり。リルムが呪文を唱え、バチと音が聞こえ。配管が元に戻った。

「これでお湯も出ます。あとは壁に寄せれば完成ですが、私一人では出来ないので、お手伝いお願いします。

「はーい」

 いきなりパトラが入ってきてドレッサー押すと、ロッカーとの隙間がピタリと埋まった。「出来たよ!!」

 いきなりきたと思ったら、パトラはいきなりどこかに行ってしまった……。

「な、なんだあれ……」

 リズが呟いた。

「まあ、いいね。これで、万全か。あとは終わったか確認すっか」

 犬姉が笑い、私たちは脱衣所から出た。

 リビングでは室内干しようのハンガーがあり、鎧かけが置いてあった。

「えっと、私たちは脱衣所で着替えてきます」

 着替えを持って、マールディアとアリサが着替えに行った。

「あの鎧欲しいんだよな。材料代はかさむが、軽くて丈夫だし、鎧は無理だとしても剣は欲しいな」

 アンガスが笑った。

「それは無理だろうな。素材が死ぬほど希少でナイフも作れん」

 エルザが笑った。

 こうして、身軽になった私たちは、銃を持って外に出ると。、C-130輸送機が同時に降りて来て、ジャージオジサンの大軍が降りてきた。

「な、何事!?」

「さあ、避難訓練でもやるんじゃないですか。聞いてないですよ」

 芋ジャージオジサンがトランジスタメガホンで、それぞれ班分けして歩きでライフルをもって、どこかに散っていった。

                             

「なんか、掃除かな?」

「はい、そうでしょうね。なんで、ここまで多いのか、確認してみましょうか」

 ビスコッティは衛星電話を取りだし、どこかと連絡した。

「師匠、大変です。カリーナから野外研修に百二十人くるそうです。飛行可能なYSの数が足りないので、ボーイング737でやってくるそうです。逃げましょうか?」

「うん、朝ご飯食べたらね。何時間後?」

「はい、2時間後だそうです。カリーナを発って2時間なので、あくまでみこみですけど、ガキばっかりなので、引率を任されたら私がブチ切れます。ご飯食べたら、そっとと逃げましょう」

 ビスコッティが笑った。

「わーい、メシ!!」

 私は純粋に喜んだ。

 そろそろ、朝ご飯の支度が出来たと思いますので、戻りましょう。

 私たちが家に戻ろうとしたとき、発砲音が聞こえ、私の足下のコンクリが欠けて吹っ飛んだ。

「ビスコッティ!!」

 私は反射的に伏せた。

 その上にビスコッティが覆い被さり、手榴弾をぶん投げた。

 爆音と共に、芋ジャージオジサンがへカートⅡを構えて、派手な音が響き、空港は静かになった。

「まだです。もうちょっと……」

「これが終わったら、マグロ丼でも食おうぜ!!」

 私は親指を立てた。

 それからしばらくすると、ビスコッティが退いた。

「どっか行ったかやられたか……まあ、どちらにせよ安全かもしれません。家に戻りましょう」

 ビスコッティは笑みを浮かべ、先導して家に戻った。


 家の中には漁師のオジサンもいて、おばあちゃんたちと調理していた。

「あれ?」

「おう、待ってろ!!」

 それしかいわず、オジサンは凄まじい速さで魚を捌いていた。

「待ってろよ……特上のフレンチを作ってやる」

 よく分からないが、おじさんの目がマジだった。

「ねぇ、ビスコッティ。フレンチってなに。フレンチトースト?」

「はい、師匠。そういう国の料理だと思って下さい。機密情報なので。フレンチで思い出しましたが、今時、めずらしい飛行艇が二機くるそうです。赤いのと青いのとか、よく分かりませんが。機点き整備員も連れているそうです」

 ビスコッティが笑みを浮かべた。

「へぇ、飛行艇なんて見たことないや。でも、今日は時間がないので、見学はあとにしましょう。これまた、イタリア空軍がきちゃうので、機密情報ですが・

「イタリアってどこ?」

「機密です。私には、アクセスする権限がありません」

 ビスコッティは笑った。

「で、鉄火丼は?」

「馬鹿野郎、フレンチでっていったろ。ここをこうして……」

 機密なんかどうでもいいが、鉄火丼は食べられそうになく、私は小さく息を吐いた。

 しばらく待つと、鉄火丼、卵、メインディッシュ、味噌汁がついたご飯が出てきて、私は笑みを浮かべた。

 まずはアラ汁から……あれ、普通の味噌汁だ……」

 私は泣きそうになり、小さくため息を吐いた。

 しばらく待つとアラ汁が出てきて、私は満面の笑みを浮かべた。

「これだよこれ。鉄火丼にはこれなんだよ。卵はご飯だね。あとこのメイン……美味い、どんな魚か気になるな。ビスコッティ、分かるよね?」

「……ビシバシします」

 ビスコッティが、自分の顔をビシバシした。

「なんだ、知らないのか……」

「私もまだ鍛え方が足りません」

 結局、漁師のおじさんも交えて、盛大な朝ご飯タイムがスタートし、みんなやたら食べるので、あっという間になくなってしまった。

「美味しかった、ご馳走さま!!」

 私は食器をキッチンに持っていくと、おばあちゃんたちと漁師のおじさんが仲良くお皿を片付けていた。

「おう、美味かったか?」

 漁師さんがにこやかな笑みを浮かべた。

「師匠、ハリヤーが飛んできたようですが。犬姉専用って、キャノピーにデカデカと書かれているので、誰も触れません。お陰で737がダイパードを求めて、フラフラしているようですが、辺りに空港がないので、早く退けてくれと、管制がブチ切れてます。どうしますか?」

「こら、犬姉。医務室送りににするぞ!!」

「なに、きたら教えてよ!!」

 犬姉が慌てて飛び出していった。

「なにやってるんだか」

 ビスコッティが笑った。

「ところで、いつ頃研修生が来るの?」

「犬姉専用機とやらが退かないと、滑走路が使えません。それからです。まあ、一時間は掛かるでしょう。準備しますか?」

 念のためという感じで、ビスコッティが笑みを浮かべた。

「当たり前だよ。どこの変な野郎どもがきたかみたいじゃん。どうせ、初等科でしょ」

「はい、師匠。引率の教員は、なぜかここに休暇にきているリズになっているのですが、これはいいでしょう」

 ビスコッティが笑った。

「えっ、実質引率なしでくるの。それ大変だよ」

「はい、暇な先生がいなかったようで。魔法事故が起きたようで……なんか、魔法陣を間違えたようで、クソボロいスケスケ……あー、いいです」

 ビスコッティが苦笑した。

「なに、また下らない……。で、なにやろうとしてたの?」

「詳しくは不明ですが、頭にきて除雪の魔法をみんなでやろうとしたようですが、先生がタイミングを外してしまい、違うものを除雪してしまった」

「馬鹿者、基礎から……あっ、初等科だったか。先生に説教してもらいなさい」

「はい、師匠。でも、そのチームも乗ってますよ。初等科なので」

 ビスコッティが苦笑した。

「……締めてやる。アレ」

 ビスコッティが、鞄から棒きれを取り出した。

「師匠、いっちょぶっ叩ききますか。師匠にやった以来ですね」

「当たり前だよ。アザの一つでもつけてやらないと、気が済まないよ」

 私は笑みを浮かべた。


 二時間どころか三時間ほどかけて、ボーイング737が着陸して、派手な逆噴射音を轟かせながら停止し、誘導路に入ってゆっくり駐機場に入ってきた。

 タラップ車が横付けし、先生っぽい人を見つけ、私たちは棒を片手に襲いかかった。

 散々ボコボコにして、最後に唾を吐きかけると、ビスコッティが空薬莢をそっと置いて。最後に二人で腹を蹴り上げ、そのまま退却した。

「あんなもんですかね?」

「うん、どうせクビでしょ」

 私は笑った。

「さて、引率の仕事です。どうしますか?

「周遊為ているバスがあるでしょ。湖でもみせて、適当にあしらって、帰りの飛行機に押し込めばいいでしょ。どうせ、日帰りでしょ。泊まる場所もありませんし」

 ビスコッティが笑った。

「うん、バスでいいや。とっとと追い返そう。時間がないんだよ」

「はい、師匠。適当に手配しましょう」

 ビスコッティが、無線でバスを呼んだ。

「あとは、並ばせて順番に乗せましょう」

「そうだね、あとはいつも通り。手を入れるか抜くか。まあ、なんとかなるよ」

 私は笑った。

 ビスコッティは無線でバスを呼んだ。

 しばらくして、場違いなほど赤く光る二階建てのバスがのんびりした様子で走ってきた。

「ほら、きた……」

 ビスコッティが笑った。

「はい、乗ってね!!」

 やってきたひよっこをバスに詰め込み、二階建てバスはちょっとだけ走って止まった。

「待てこら、一応案内人を忘れてるぞ!!」

 バスにリズとパトラが飛び込み、重そうにバスが走っていった。

「はい、一陣!!」

 ビスコッティがリボンをつけた生徒を抽出し、そのまま蹴り返した。

「師匠、邪魔は排除しました。」

「お疲れ!!」

 ビスコッティと私は笑った。

「えっと、師匠。次のバスで乗り切れる……かも?」

 ビスコッティが、バスの座席数を数えだした。

「ああ、補助椅子も使いましょう。どうせ、外なんかみていないから」

「補助椅子あるなら、さっきのバスにもっと乗れなかった?

 私は笑った。

「まあ、たまには私も……あれ、しょっちゅうだったかな。というわけで、急ぐのでさっさと処理しましょう。

「そうだね。攻撃魔法でぶっ壊そうか」

 私は笑った。

 結局、バス一周ツアーは一時間で終わった。

 737に全員乗り込み、気絶している馬鹿は浮遊の魔法で適当に放り込み、飛行機は誘導路を走っていった。

「さて、片付いた……あれ、犬姉専用機が垂直上昇で浮いていた。

「……あれ垂直上昇できるんだ」

「はい、師匠。出来なかったら、ただのドンガメです」

 ビスコッティが笑った。

「うん、不思議な飛行機だねぇ」

 私は笑みを浮かべ。

「分解して研究したらダメですよ」

 ビスコッティが笑った。

「ヤダ、研究する。予備機くらいあるでしょ」

「なおせないと思いますが、予備機はあります。確か三十機はあるので、一機くらい分解してぶっ壊します?」

「うん!!」

 私は笑った。

 しばらく犬姉機はフラフラしていたが、何とか前進しはじめ、空のどこかに飛んでいってしまった。

「なんか、楽しんでるみたいだね」

「はい、師匠。戦場の猟犬ですからね。なんかぶっ壊さなきゃいいですけど」

 ビスコッティが笑った。

「さて、私たちは帰る準備をしましょうか」

 ビスコッティが笑った時、犬姉機が帰ってきて、空港のフェンスをちょっとだけぶっ壊して着陸した。

「んなだこれ、飛ぶけどこえぇ」

 すぐにまだ駐機してた輸送機と技術者っぽい人が現れ、先端の折れたピトー管を交換しついでにぶっ壊したフェンスを直して、あっという間に撤収してしまった。

 輸送機はブッシュバックを終え、そのままとんでいった。

「さて、こちらの番ですね。飛行機に乗りましょう。

 私たちは飛行機に乗り、ベルトを締めた。

 隣にマールディアが座り、小さく笑みを浮かべた。

「ずっと気になっていたんだけど、その鎧と剣って、材質が……あれ?」

 私は鎧をみながら小首を傾げた。

「はい、なにやら特殊な素材のようで、軽くて頑丈でいいですよ。

 マールディアが笑みを浮かべた。

「うん、滅多にみないね。鉱石なのかガラスの変形なのか……研究する。

 私は見た目をスケッチした。

「あのさ、ちょっとでいいから触っていい?」

「はい、いいですよ」

 マールディアは頷いた。

 私は鎧を触り、ひんやりした感覚を確認した。

「鉱石だね。かなりの業物だよ。いいね」

 私は笑みを浮かべた。

『おーい、マルシル。ちょっと、コックピットきて!!』

 機内放送で犬姉の声が響いた。

「えっ、私?」

 ビックリしながら、マルシルは前方のコックピットに向かっていった。

 パトラが、指を咥えてそれを見つめていた。

「へぇ、珍しいね。パトラが後席なんて」

「まあ、なんかあるんでしょ。あれ、その鎧ポンズ……マジで!?」

 パトラが声を上げた。

「ん、有名なの?」

「有名もなにも……」

「ポンズ工房は知ってるけど、みるのは初めてだね。だから、材質が気になったんだよ。なんだろうねぇ。なにせ異国だから、調べに行くこともできないし」

『ベルト締めて。揺れるし、谷間の夜間飛行だから』

 気が付けば、窓の外は夜闇に包まれていた。

飛行機大きく旋回し、ほぼ真横近くまで期待を傾けて飛び、続いて反対側に傾いて大きく旋回した。

『これで滑走路空いてなかったら踏み潰してでも降りる!!』

 犬姉の気合いが入った声が聞こえ小刻みな旋回と、大きな旋回を、繰り返しやっと水平飛行に戻った。

 市場の滑走路が近いのか、ギアダウンした風切り音が聞こえた。

 飛行機は滑走路に着陸し、素直に誘導路に入った。

 駐機場に駐まると、私はホッとため息を吐いた。

『ついたけど、早い方がいいよ。カリーナ辺りで天候が怪しい。まだ平気だけど、三時間以内で回れるかな』

 機内放送で犬姉の声が聞こえた。

「……三時間ですか。五時間は欲しいですね。師匠、前を通ります」

 ビスコッティは前方のコックピットに向かっていった。

『新情報、嵐を通り過ぎた方が早い。時間は無制限にしておくよ。好きに見て回ろう。但し、あんまり大きいのはやめてね。コンテナに余裕がない』

 機内放送で犬姉の声が聞こえた。

「よし、降りよう」

 私たちは飛行機を降りた。

「ここは通行証が必要です。回して配って下さい」

 ビスコッティは、通行証を一人一人渡した。

「では行きましょう。間違っても、航空機はダメですからね」

 私たちは武器市場に入った。

「では、バラバラになりましょう。レジを通った先に集合で。領収書を忘れずに」

 ビスコッティが笑みを浮かべた。

「さて、拳銃コーナーですね。小型は……」

「……これ、いいかな」

 私はグロック26を手に取った。

「これならいいですね。癖が矯正されています。ちっちゃすぎるかも知れませんが」

 ビスコッティもグロック29を手に取った。

「あれ、ビスコッティも買うんだね」

「はい、ちょうど小さいのが欲しかったのです」

 ビスコッティが小型拳銃を取った。

「グロック26です。ばら撒くにはちょうどいいでしょう。十ミリですし」

 ビスコッティが笑った。

 レジに並ぶと、すぐ後ろにマーティンとアンガスが、なんか剣を大量の抱えていた。

「ど、んだけ買うの!?」

「まあ、備えあれば憂いなしっていうだろ」

 マーティンが笑った。

 レジで会計を済ませ、みんなが待っているところにいくと、エルザが巨大な重そうな斧を持ってきた。

「おっと、忘れていた。すまん」

 レジから離れたエルザは、銃を持ってまたレジにならんだ。

「あれ、撃てたんだ」

「いえ、まだでしょう。練習しないと」

 私の問いにビスコッティが笑みを浮かべた。

 そのまま待っていると、キキがショートソードを持ってレジに並び領収書を切ってもらったのが見えた。

「お待たせしました」

 各々買い物を終え、私たちは飛行機にのった。

 飛行機がプッシュパックされ、エンジンが始動した。

 マルシルが戻ってきて、パトラが満足そうにグラスコックピットにしてやろうとかいいながら、前方のコックピットに向かった。

「おい、刺身が出来たぞ」

「あれ、よくみたら漁師のおじさんが……でも、マグロ!!」

 私は笑みを浮かべた。

 マルシルとキキがマグロの刺身を配り始めた。

『さすが、刺身がうめぇ。あっ、いけね。乗ったね。いくよ!!』

 飛行機がプッシュバックされ、誘導路に向かって行った。

『だいぶカリーナの周囲の天気が回復したよ。今のところ、大したことないみたい』

 犬姉の声が聞こえた。

 二基のエンジンが快調に回り、飛行機は誘導路を走り、夜空に向かっていった。


 小一時間ほど飛行機は飛び、カリーナ目指して降下していった。

 ガンと音が聞こえ、機体が激しく揺れた。

「なんだ、いまの揺れ?」

「さぁ……」

 エルザとパトラの声が聞こえた。

 飛行機は何事もなかったかのように、滑走路に着陸した。

「さて、ついた。明日なんだっけ?」

 私は笑った。

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