第3話 いらっしゃいませ、理想の俺
俺が全身サイボーグに改造されてから気付けば5ヶ月がすぎていた。
俺の扱いといえばほぼ軟禁状態。自室にある機材は好きなように使えたが外出は実験がある時のみ。普通なら気が狂ってもおかしくない状況をむしろ俺は楽しんでいた。
実験のない時はひたすら理想のボディの製作。少しずつ形になっていくのをニヤニヤしながら眺めるのが日課になっていた。
そして、今日。とうとう理想のボディが完成した。
出来上がったボディは元の性能をベースに外観は俺が好きなようにアレンジした。
全体的なシェルエットは細身で身体のラインは直線的。色は白ベースでアクセントカラーは濃い目のブルーとかなりヒロイック。
肩、腰、足にには張り出し過ぎない程度の追加装甲。
出力は最大でも人の3倍程度に抑えた。あまりに出力が高すぎてまともに日常生活が送れなくなるのは流石に困る。
あとは換装するのみ。首から下は頭部を挿げ替えるだけで良いのだが、問題は頭部。一旦、生体コンピューターである脳を新しい頭部に移し変えなければならない。さすがにこの作業は自分だけでは無理だ。
今日の実験が終わったら換装の手伝いを喜寿屋女史にお願いしたら快く引き受けてくれた。
何でもあの同意書に同意したのはこの社員2000人を有する大企業でも俺だけだったという。
喜寿屋女史としてはこんな実験に付き合ってくれる稀有な存在は失いたくないらしい。
実験後、ルンルン気分で自室に戻る俺の後ろには珍獣を眺めるような好奇の瞳で見つめる喜寿屋女史と呆れと俺が楽しそうなら良いかという諦めに似たような顔をした長谷川が着いてきていた。
「ここまで好き勝手にやってたとは…」
俺の自室を久方ぶりに訪れた喜寿屋女史は目の前の光景に唖然とていた。
作業台の奥のハンガーには俺の理想のボディの首から下が固定され、作業台にはこれから脳を移植する頭部が鎮座していた。
惚れ惚れするようなイケメンフェイス。
球形頭部の耳に当たる部分はウサギの耳のように細長く先端の尖ったアンテナ。シャープで引き締まった顎を覆うマスクフェイス。黄色く輝くツインアイを覆うのはクリアブルーのバイザー。
デザイン通りの出来に我ながら感心する。
『では、お願いします』
深々と俺は2人に頭を下げる。
「うむ。任せてくれたまえ」
「頑張ります!」
自信に満ちた喜寿屋女史とこちらもやる気に満ちた長谷川の顔を見て俺は安心しながら感覚をシャットダウンした。
次に目が覚めた時が楽しみだ。
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