写窓 20191027

 窓から見える景色は実に写真的だね。

 そう言ったあいつを、ぼくは殴った。

 写真的。なんだそれは。ふざけてる。

 じぶんを守れば守るほど、おまえは、おまえから離れていくよ。

 ぼくは、窓を開けた。

 風。

 冷たい空気が、からだから熱をうばっていった。

 このせかいが真実に写真ならば、あいつの名残を、こんな強引に剥がさない。

 ぼくが、ぼくに近づくにつれ、こんなにも寂しい気持ちになるなら。

 このすかすかの、土のこころに、おまえの種が芽吹くように。

 ぼくは、窓を閉めた。

 音。

 あいつの血のリズムが、再びきこえる。

 ぼくの冷めたからだが、再び熱を纏う。

 それでもまた、この部屋の中でぼくは繰り返す。

 写真には、カーテンはかけられないから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る