ある日の雨の日
@akanetutumi526
第1話
ねぇ、こっちを見てよ。ねぇ、こっちを向いてよ。ねぇ、私の言葉を聞いてよ。
私は歌う、そんな言葉を歌にのせて。
私は歌う、心からの思いをのせて。
私は、路上ライブというものを毎日この場所でしている。
商店街のようなココは人通りが多く、少しだけ屋根があるので、屋根の中で雨に降られずに歌える。
ここは、結構な路上ライブスポットだ、いろんな人が歌っている。
だが、路上ライブを始めてから全く人が私前で止まることはなかった。
私だって一生懸命歌っている、なのに誰も見てくれない、誰も聞いてくれない。
すると、一人の少女が目の前に立った。
その少女はとても印象的だった、
白に近いクリーム色の髪に、人形のように真っ白な肌に綺麗な赤い目。トップスはオレンジで赤いライン、スカートはショッキングピンクと黒の太いストライプ。
派手だが少女はそれを着こなしているし、とても似合っている。
「いい曲ね。とてもいい曲。」
「そ、そう?でも、誰も立ち止まって聞いてくれないの…だからちゃんと聞いてくれたのは貴方が初めてよ。」
そう言うと、少女は寂しそうにした。
「そう……私が初めてなのね。」
少し困った顔をしてそういう少女、
私はわけがわからなくて少し首を傾げた。
「そうだ、もう一曲歌ってあげる。」
「本当?それは嬉しいな。バラードがいいわ。とてもきれいな、レクイエムになるようなものが。」
「なんでレクイエム?」
「………」
聞いてはいけない事だったのだろう、少女は悲しそうな顔をして黙ってしまった。
「あっ、えぇっとぉ。
い、いい曲があるからそれにするわね!」
あたふたと私はそう言い、そのバラードを歌いだした。
この曲は、死んだ✕✕のために多分作った歌だ、誰のために作った曲かは忘れてしまった、というか、私が作ったかも定かではない。ただ、次の日起きたら持っていたのだ。
「〜♪」
歌い終わると、少女は満足そうに微笑んだ。
「ありがとう、とてもいい曲だったわ。
これならきっといいお土産話になる。」
「?貴方ココらへんの人じゃないの?」
「えぇ、少し遠くからきたの。」
すると、雨がポツポツと降ってきた。
少女が空を少し見上げた
「あら、雨だわ。」
「あなた急ぎ?急ぎでないならここで雨宿りしていったら?」
「ごめんなさい、急ぎなの。あと少しの電車に乗らないと」
「あぁ、そうなの?じゃあ、私の傘あげるわ。つかって。」
少女は少し驚いた顔をして、ニコリと笑った。
「お言葉に甘えさせていただくわ。ありがとう。」
「いいえ、どういたしまして。それじゃあ気をつけてね」
「ええ。」
そういって少女は立ち去った。
私が立ち去っても、彼女は歌い続けている。
もう誰にも見てもらえないのに、もう誰にも話しかけられないのに。
ふと、彼女の声がしなくなり、穴の開いた傘をさしながら、後ろを振り向いた。
彼女は消えていた。
「あぁ、あの子、やっとあっちに逝けたのね。
未練はもう無くなったのね……よかった。」
そう言い、私はまた歩き出した。
さてと。このお話はこれで終わり。
楽しんでいただけた?
希望がなくなった娘は、文字通り死んでも夢を叶えようとしてる。
あのレクイエムは、誰のためなんでしょうね。
ある日の雨の日 @akanetutumi526
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