第10話ダンジョんへ

 

「あの……それでなんですが……………」 


「ん? なんだ?」

 

「実は私……明後日私の誕生日なんです」

 

「そ、そうなのか?」


「祝ってくれるような人もいませんので、それで自分で誕生日ケーキを作ろうかなとか思っちゃっているのです……それで……」


「よし、ダンジョンに帰ったら、レミアスの誕生日パーティーをやろう」


「ほ、ほんとですか!?」

 

「帰ったら、すぐやろう」


「じゃ、ダンジョンに帰還したら黒牛料亭にき……きてください!」


「そこに行けばいいんだな。分かった」


「ゼルフォード様……絶対……絶対に来てくださいね」


「約束する」


「待って」


「え?」


 振り返ると背後には白紫色のショートカットの美少女が清楚なワンピース姿で、頬を紅潮させ、風で揺れる髪とスカートを押さえ、斜め下で俯いていた。


「サリヴァン」


 確か今日は休日と言っていたはずだが。


「ねぇ……行くの?」


「ああ、そのつもりだ」


「ダンジョンは危険よ、半端な覚悟なら行かない方がいい。私は今まで、ダンジョンで死んで行く冒険者達をたくさん見てきたから……大事な人を失う悲しみを一生背負った人もね」


「そうか……でも、別にダンジョンを甘く見てる訳じゃない、今回の依頼はそう簡単にはいかないだろう」


「そう。あんた専属の受付嬢は取らないの?」


「なんだそれ?」


「上級の冒険者は専属の受付嬢を取ることが出来るの。専属受付嬢は依頼の手続きや体調管理、アイテム購入などの完全サポートをする、冒険者は万全な状態でダンジョンに臨めるの。そして、私はシャルマンギルド人気No.1受付嬢……私を専属受付嬢するなら、それ相応の実力と大金を持ってきたら」


「へぇ……そうか。だが、俺は金もないし、初心者冒険者だしな、お前とは到底縁はないだろう。それに、専属受付嬢を雇うならレミアスだ……それじゃ、時間もないし、もう行くぞ」


 すると、突然サリヴァンは甘えた表情で、俺の背中に、柔らかな胸を押し当て、抱きついた。


「待ってよ……何で……レミアスなのっ?」


「何だ? サリバァン、少しおかしいぞ。どうした?」


「答えて」


「レミアスを選んだ理由か……そう言われてもな。かわいいとか? 優しいとか?」


「馬鹿じゃないの……あんたは人気No.1である私より、人気最下位のレミアスを選ぶの? 人気があって、かわいくて、胸だって、頭の良さだって、何もかもあの子より私の方が上なの。それでも、レミアスを選ぶっていうの?」


「サリバァン……何が言いたいんだ?」


「そう……ふーん……なかなかね。私の【誘惑】レベルMAXスキル効かないなんて」


「なぁ……聞きたいことがある。依頼書を破ったのはサリヴァンだな?」


「私がした証拠でもあるの……」


「俺の【分析解析】のスキルには人間、異世界神のDNA(遺伝子情報)を分析できる力がある。疑問に思った俺はあの時、あの場で破れた依頼書から採集したDNAとお前から採集したDNAを照合したら、偶然にも一致したんだ」


「信じられない話ね。正直言うけど、DNAとやらが何なのか私には分からない、そもそも、この世界にはその概念はない。私達の身体には魔力と魂があることだけは知っているわ」


「見せてやるよ」

 

【画像転生(転生をゲーム応用学習した結果、スキル本に記載されていない新種スキルの画像転生を創造した)】レベルEX100

 ランク S

 効能 データ、グラフ、統計資料の類を画像に変換(転生)する。


 指紋が浮かび上がった二枚の画像が出現した。 


「確かに一致してる……って言えばいいの?」


 これを見せたところで、サリヴァンという女は罪を認めるような女ではないか。


「なぜ彼女は嫌われる……彼女はいったい何を背負ってるんだ?」


「はぁ……レミアスのことばっかり……さあ、もう行って」


「話がまだ……」

 

 そして、サリバァンは改まった表情で、俺の背中を押し、姿勢を正し、頭を軽く下げた。


「お客様……いってらしゃいませ……ダンジョンからご無事にご帰還されることを願います……あなたに神の御加護がありますように」


  

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