第4話冒険者と商人
すると、レミアスが一瞬ムッとし、毅然とした態度で、俺の腕を抱き寄せ、反論する。
「お待ち下さい。その新シャルマン規則は来月施行されるはずです。よって、このお客様には適用されません」
「そうね。でも、レミアスさん、あなたは受付嬢を外れたはずよ、お客様対応は認められていないの、どうか分かってちょうだい」
「そそ……そんな……このお客様には私のことは関係ないじゃないですか」
俺……厄介者になってるな。
「レミアス、もういいよ。俺は他のギルド行くからさ」
「ちょっと、ゼルフォード様は黙っててください」
こわい……。
「は、はい」
「とにかく、新規則施行前にギルド加入したこのお客様はシャルマン冒険者ギルド、シャルマン商人ギルドの加入は有効です」
そして、美人受付嬢達の軽蔑の表情は苛立ちへと変わる。
「レミアスさん……あなた……いい加減にしなさいよ」
「あなたは下がっていなさい。私が代表として、真摯に彼女に向き合うわ」
「でも! 何度訴えても、彼女は理解しようとしないじゃないですか? みんな困っているんですよ、この空気の読めないこの女に」
「お客様の前ですよ……言葉を慎みなさい。レミアスさん……私もこんな風に鬼のようになって言いたくはなかったわ。決してあなたを嫌いになった訳じゃないけど、言わせてもらうわね。自分勝手な思いで、せっかくみんなで話し合って、数ヶ月かかってようやく決めた規則をあなたがいきなり破るってどういうことなの? それはあんまりだわ、私達の立場がないの、秩序を乱す行為は今すぐやめなさい。現にこうやってみんなに迷惑を掛けてるじゃない? そのぐらいのことは分かるわよね? 少しは大人になってちょうだい」
受付嬢の世界は慈愛のある、優しい世界だと思っていたが、案外大変なのかもしれない。
でもなぜレミアスはここまで嫌われるのだろうか、彼女が他人に嫌われるような行為をするとは到底思えない。
「私は……私は……私はやめたくないです。小さい頃からたくさんの冒険者様が集まったこの場所で働くことが唯一の夢だったんです。せっかくその夢が叶ったのに、やめるなんてできない……どうかお願いします……この大切な場所に私をいさせ……」
気の強い受付嬢は一歩も退かないレミアスに苛立ちが最高潮に達し、先輩を押し退け、トドメとばかりにはっきり言った。
「レミアスさん、お願いだからシャルマンギルドを辞めて。顔も見たなくないし、声も聞きたくない」
「どんなに嫌われようとも、私は毎日このギルドに来ます」
「だからっっ!本当……いい加減にしてよ! そういうところがムカつくのよぉ。あんたの独り善がりの思いでどれだけ迷惑を掛けたら済むのよ! もう、本当どっか行ってよぉぉぉ!」
「や、やめなさい!!!!」
「駄目よ! リリラーテ!」
気の強い受付嬢は涙を滲ませ、カッと目を剥き、手元にあった万年筆を振り上げる。
「えっ」
そこまでする必要はないだろ。
すると、俺が止めるより先に現れた白紫髪を揺らし、ロリ顔巨乳の美少女が鉄拳の一撃で、万年筆は床に転がり、大事には至らなかった。
「……ギルド内での暴力行為は厳禁、私達がどんな存在か忘れたの? 冒険者がダンジョンへ最高の状態で行って頂くために最上の癒やしを提供する存在なの? 暴力行為なんてもってのほか……受付嬢を穢がすことになるの」
レミアスを庇う者は一人はいるようだ。
「こいつは一回ぶたないと、分からない奴なのよ!」
「皆が見てる……」
「なんで……うぅぅ」
気の強い受付嬢は涙が溢れ出し、その場に崩れ落ちた。
その後、仲間達に優しく介抱されながら、離れて行った。
一方、レミアスも俯いて、涙をポロポロと流し泣いていた。
白紫髪のロリ顔巨乳の美少女はレミアスの背をさすっていた。
「気にすることないよ……レミアス」
やがて、その美少女が俺の目の前に来た。
冷たい群青の両眼、白紫色のショート髪、タオルを巻いただけのような白紫色のドレスを着て、ぽろっと上乳がはみ出した美少女。
鑑定眼を発動する。
ヴァレンガーデン=サリヴァン
シャルマン冒険者ギルド人気No.1受付嬢。
「あのじろじろ見ないでくれます? 恥ずかしいので」
「悪い」
胸元を整え、溜め息をついた後、急に天使の笑みをして、俺の開いた第一ボタンをそっと直す。
「お客様……お大変見苦しいところをお見せして失礼致しました。ですが、誠に勝手ながら、あなたをシャルマン冒険者ギルドにお迎えすることはできませんから……規則ですから」
「俺は別に……」
「は? とにかく、か、え、っ、て、く、だ、さ、い。ほら、早く帰れよ」
めちゃイラついてる。
すると、紺色の修道服を纏った坊主の男が声を掛けてきた。
誰だ?
利発な白眼、ダンディーな髭、落ち着いた雰囲気の30代ぐらいの紳士。
佇まいから相当なお金持ちと推測できる。
【鑑定眼】レベルMAXで詳細な情報を見ようとしたが、キャンセル表示された。
【隠蔽】の類を使われたか。
「話は聞いていました」
「辺境伯ボーデンバレット=ソルトさまぁ!」
ボーデンバレットって上層の領土を莫大な財力で買い上げ、大型商店を次々に出している、勢力拡大中の辺境伯か。
「君は少々お客様に失礼な態度をしているようだ」
「大変申し訳ございません……」
サリヴァンは髪を耳に掛け、恥じた表情を作り、ソルト辺境伯の胸元にそっと飛び込み、その彼の手をぐっと自らの左乳房に入れさせ、艶やかな吐息を漏らす。
「君……何を」
「そんなつもりはないんですよ。私あのお客様を決して蔑ろにしようなんて……ソルトさまぁ」
首を少し傾かせ、愛らしい表情とは裏腹に、顔から下は艶やかに、淫らに動いている。
「も、もちろん、全てが君のせいだと言っている訳ではないよ」
「そうですよね。全て悪いのはあのお客様です……よね?」
「まあ、多少はね。そもそも、初心者という階級に甘んじていること事態は怠慢という意見は一理ある」
助けてくれるんじゃないのかよ……。
「ね! ですよね」
「だけど、君の態度は受付嬢として相応しくない。とにかくお客様に非礼を詫びるべきだ。それと、早く離れなさい!
「はい……」
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