第36話休日2


「やっぱり……見つかったか」


「当たり前よ」


 クロテアは白いブラウスに短めの黒スカートの派手な私服。

 普段は制服姿しか見慣れていないので、急に女の子らしい私服に少しドキッとする。

 次いでにお馴染みの二人も遅れてやってきた。

 続いて来たフレスはレース素材の白のブラウスにネイビーのスカート。

 白肌の太股が艶めかしい。


「ゼルフォード君っ!!」


「おお……」


「ここで何をしてたの?」


「いや、ちょっと買い物に」


「ここ女性用の下着売り場しか無いけど……」


「……そうだな……なんて言うか……その」 


「ねぇ? 誰か待ってるの?」


「……友達、友達だ」


「……女? 男? どっち?」


「いや……」


「私の裸……見た癖に他の人とデートするの?」


「え? それは今関係ないじゃないか」


「最低、最低……私の裸見たのに……浮気するなんて」


「え? 浮気? どういうことだ?」


「ねぇゼルフォード君? 私の裸を見た時の事覚えてる?」


「その時のこと、正直あんまり、覚えてないんだ……気絶しちゃったから」 


「酷い……」


「え……」


「ゼルフォード君は何も分かってない!! 嫌い嫌い嫌い嫌い」


「だから、フレスの気持ち考えてやれなくて悪かった」


 フレスは嫌悪の表情をした。

 陽気で明るいアイドル的な少女は見る影もない。

 次の瞬間、フレスは右拳で襲ってきた。

 いきなりどうした。

 やめろ。

 俺は躱わすが。

 フレスの攻撃は左拳、蹴り上げ、下ろし、左足回転横蹴りと徐々にバリエーションとスピードを増やしていく。 


「フレス……ここはショッピングモールだ。落ち着け」


「黙れ」


「ど……どうしたんだ」


 これは俺が知っているフレスではない。

 咄嗟にフレスの右腕を掴み、身動きとれなくする。


「や、やめろ。とにかく、落ち着こう。な?」


「何で分かってくれないの!! 何で分かってくれないの!! 何で分かってくれないの!!!!」


 何だと言うのだ。

 目でクロテアに助け舟を求めるが、逸らされた。

 助ける気無しのようだ。

 どこかに行ってる……。

 すると、ユウラとアリアが袋を片手に戻ってきて、この状況に首を傾げる。


「へ?」「え?」


 良いところに来た……。

 そして、事の経緯を説明する。

 なんとか、フレスの怒りは静められ、やがて、カフェで皆でお茶をしようという事になった。

 三対三対で座る事になった。

 ユウラ、アリア、俺。後はクロテア、フレス。 


「ごめんね。えへへ。ちょっと怒った感じ出しちゃったけど」


「ああ……誤解が解けて良かったよ。ははは」


 怖い。

 怖い……。

 さっきまで、鬼のような顔だったのに。


「すいませんでやんす。アリアがゼルフォード君にどうしてもお礼がしたいというもんで」


「そうだったんだねっ」


 笑顔を振り撒くフレス。

 怖い……。

 俺の休日は終わったのだった。

 

 

 

 

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