第33話浴場にて

 ある金曜日の夕方。

 俺とガロロは寮の浴場へ向かっていた。

 ガロロは一直線の廊下を一目散に駆け抜けていく。

 

「ヒャホホホホイ!!」

 

 とタオルを回し、奇声を発しながら。

 怪我だけはするなよ。

 寮の浴場にしては新品タオルや衣類が風呂場に常備し、大勢が入れる。

 そうこうしている内に、一階奥の浴場へ到着。

 男と女風呂場に分かれている。


「おいゼル! 何女風呂じろじろ覗いてるんだよ! 女風呂入ろうなんて良くないぞ」


「全く、お前には付き合ってられない」


「なぁ? 想像してみろシウス=フレスの胸を? あの大きさはほんと素晴らしいぜ。いっぺん拝みたいな」


「お前は何を言ってるんだ」


 まあ確かに……大きかったな……。

 俺は触ったことがあるしな。

 フレスの胸は巨乳に分類されるだろう。

 あれは何カップなのだ。

 制服からはちきれんばかりのたわわに実ったマッシュマロだ。

 見たい触りたいという男の性欲をくすぐらせる。

 頭に浮かぶのは、お湯に濡れた金髪、S字妖艶なる白い肌の裸体。

 ザパッという柔らかな裸体にお湯をかける。

 湯煙でよく見えない。


「クロテアもなかなかもんだな。形の良い乳だし、なんと言ってもお尻が最高だろ……あいつ」

 

 そんな風に見ていたのかこいつは。


「……さあ、風呂に入るぞ」


「ぎゃはははは。そうだろ」


 すると、


「最低ね」


 黒髪エルフの美少女が軽蔑の目で見てるのを察知した。

 完全に標的は俺だった。

 というか……なぜここにいるんだ。

 ガロロはすぐさま状況を察し、何食わぬ顔で浴場へと向かう。


「ゼル! 先に行ってるぜ!」

 

「あっ! 俺も……」


 しかし、肩を掴まれ、後ろに戻された。


「……待ちなさいよ。さっきの話を説明してもらえる? ゼルフォード君?」


 軽蔑の無言を貫かれる。

 怖い……。

 咄嗟にどう言い訳するか考える。

 即断即決で。


「というか……ここの寮じゃないのに、なぜクロテアがいるんだ」


「フレスさんともっと仲良くしたいのよ」


「ずいぶん変わったんだな」


「まあね……ねぇ? そんなに私の裸見たいなら一緒にお風呂でも入る?」


「はぁ?」


「……冗談よ」

   

      *



 その頃、女子の大浴場では、湯煙が辺りに漂う。

 クロテアは艶のある長い黒髪を泡で丁寧に洗い、表情は赤らめ、どこか明るい。

 鼻歌も混じりながら、シャワーで全身の綺麗な肢体を洗い流す。

 全身の疲れが癒えてくる。 

彼女は大きく息を吐く。


「ふっーーー」

 

 隣ではフレスがシャワーを浴び、金髪を揺らし、お湯で泡を取り除く。

 熱さで顔を赤らめ、クロテアに声を掛ける。

 クロテアは一瞬びっくとし冷静に応答する。


「気持ちいいねっ」


「えっ? そうね」


「あっ、露天風呂に行こう」


「まだ、入ったばかりよ」


「行こうよ?」


「行かないわ」


 そんな短い会話をした後、フレスはクロテアの左腕を強引に掴む。


「行くのっ!」


「ちょっとと……もう」


 露天風呂へ。

 外は暗く、森林が不気味に揺れている。天井には明かりがあるだけ。

 湯も熱く、湯煙が漂う。

 フレスも勢い良く「バッジャン!!」と音を立たせながら湯船の中に入る。

 静かにクロテアも後から続き、陽気な声で、両手で伸びをする。


「気持ちいいっ!」


「そうね」


「うん!」


 


 

 

 

 

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