ロスタイム

勝利だギューちゃん

第1話

命はあっけない。

こんなにも、もろいものなのか?

気がついたら、器から抜け出しているという例も少なくない。


僕もそうだ。


幽体離脱のか、臨死体験とかいうのを、聞いたことがあるが、

夢だと思っていた。


しかし、自分が今、それを体験している。


「あれ、あそこで寝ているのは僕じゃないか?

父さん、母さん、妹までいる。

他にも、知り合いが何人かいるな?

心配そうな顔で、僕の周りにいる。


そっか・・・

僕、死んだのか・・・


「お気づきだったら、話が早いわね」

後を振り向く。


「あなたは、今、人生にピリオドを打ちました。お疲れ様」

女の子がいる。

天使か女神か、死神か・・・


まあ、どれでもいいや。


「ありがとうございます。一生懸命生きました」

誰かは知らぬが、一応挨拶しておこう。


「本当?」

「えっ?」

「本当に、一生懸命生きたと、胸を張って言える?」


なんなんだ?

この女・・・


「なら逆に訊きますが・・・」

「何?

「僕が、『まだ死にたくない』とか、『今死ねば、後悔する』と言えば、

あなたは、生き返らせてくれますか?」

逆に訊いてみた。


「それ、無理」

「ですよね。だから言いません」

「あきらめいいんだね」

「取り柄ですから・・・」


女は、まじまじと見る。

何か、ついてるか?


「不合格。まだ、連れて行かない」

「どうして?」

「彼女を悲しませる気?」


喧嘩売ってんか?

この女・・・


「僕に、彼女はいませんが?」

「あそこにいるのは誰?」

妹に指をさす。


人を指差すなんて、失礼にあたると思う。

なのに、人差し指という表記は、おかしい・・・


「へりくつはいいから、あの子・・・」

「あの子は妹です」

「でも、血のつながりはないんでしょ?」


何で知ってるんだ?


「あの子の気持ちに、あなたが気付くまでは連れて行かない」

「ケチなんですね」

「サービスと言って・・・」


なら、気付けば本当に死ぬのか?

いや、いい気持ちとは限らないからな・・・


「鈍感だね」

「取り柄ですから・・・」


らちがあかない。


「とにかく、あなたは死ぬのは失格。まだゴールさせない。

もっと、走りなさい」

「疲れる」

「贅沢言わない」


こうして、生き変えさせられた。


目が開く。

妹を見る。

抱きついてくる。


なんなんだ?


やはり、夢だったようだ。


≪夢じゃないよ。


ロスタイムは、長めにしておいたから・・・

彼女を泣かせないようにね・・・≫


だから、義妹だってば・・・


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ロスタイム 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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