52話
重苦しい沈黙の末、先に口を開いたのはエメルダだった。
「オールドマスター一門は、あの日のうちに壊滅。目ぼしい実力者以外の一般門下生は軒並み死んだわ。残ったのはイデアと準イデア級、それと親衛隊くらいね。そしてその全員が投獄もしくは絶対拘束の魔法をかけられた。ちなみにライが投獄、私が絶対拘束ね」
死んだ、と聞かされたロベルトは顔を青くさせた。すっと血の気が引くのをはっきり感じる。
あの頃、隆盛と栄華を誇った一門は相当な実力者揃いだったのだ。それが軒並み。信じられないのも無理はないだろう。
「そ、な……あいつら、が……」
小刻みに震える体。青白くなる顔。息が苦しくなる。
ロベルトは普段はそういうことを言うことはなかったが、仲間をとても信頼していた。自分達は紛うことなき最強の一団だと自負していた。一門のことが、大好きだった。
他人のことはあまり信用していなかった当時のロベルトにしては珍しく、背中を任せられる人達だと感じていたのだ。
つ、と一筋の涙がロベルトの頬を伝った。
「いい、奴らだった。優しくて、強くて、いい奴らだったんだ」
「ええ、本当に……」
泣き叫びたい気持ちを押し殺し、ロベルトは涙を拭うことも忘れて言った。どれほど辛くとも、これだけは、聞かなければならなかった。
「それで、お前らは、どうなった……?」
その痛々しい姿にエメルダは顔をしかめた。
(この状態のこの子に、話していいのかしら。これから先の話は、あまりに……一門を愛していたロベルトには辛すぎるわ)
ずっと前から知っている。近くで見てきたから。ロベルトは門下生達の中でも、どちらかと言えば精神面が弱い方だ。
エメルダも、当時のイデアメンバーの一員だった。ロベルトより一つ下の六番手。自分より若いロベルトに嫉妬した時期もあったが、意外と子どもっぽい一面もあると知ってからは弟のように可愛がっていた。本人には嫌がられていたが。
大抵が三十代や四十代のような熟練した者が多いからか、まだ若いロベルトとライはイデアの中でも弟のポジションにあったのだ。
二人を可愛がっていたエメルダからすると、壊れてしまったライを見るのも生まれ直して違う仲間といるロベルトを見るのも少し寂しい。まるで子離れできない親のような気持ちだ。
少し悲しげな微笑を浮かべたエメルダは、席を立つとそっとロベルトの隣に座り、その手を握った。
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