6話
街道に着いた三人は、整備のあまり行き届いていない道を辿って歩いていた。三人の他には馬車も、人も通らない。三人の心中は「暇だなぁ」の一言で占められていた。
見渡す限り平和な大地と空が広がり、街道に入ってからはほとんど景色も変わらない。くねくねとたまに曲がる道の先に動物がいるくらいだ。その動物も狩って食べるわけでもないので、必要もないのに追うことはしない。
「暇だねぇ。ルヴォルス、何か楽しい話ない?」
「ローレンスの話でよければ」
「却下。聞き飽きたわ。ロベルトは?」
「楽しい話……あ、パン屋の小麦粉が爆発したやつとかあるけど」
「そんなことあったの? 聞かせて!」
「あれは多分、一ヶ月くらい前だったと思うけど」と切り出したロベルトは、その時のことを思い出しながら話し始めた。
約一ヶ月前、ロベルト達の故郷、エレパスのパン屋で小麦粉が爆発するという事件が起きたのだ。原因は魔法。五歳になるパン屋の一人息子が魔法に目覚めたからだった。
父親の手伝いをしようと小分けされた小麦粉を持って行こうとしたところ、どういうわけか急に魔法が覚醒。急激な魔力の膨張で魔力波が発生してしまった。そしてその魔力波をまともに受けた小麦粉が袋ごと爆発、というわけだ。
ちなみに、爆発を起こしたパン屋の子どもは小麦粉で全身を真っ白にしながら魔法を使いまくっていたそうだ。
「へぇ、ついにロベルト以外の魔法使いが誕生したのね!」
「五歳で覚醒とは、素質があったんだね。将来が楽しみだ」
「基礎属性魔法の中でも火が得意だと聞いたな。あと、風もぼんやり使えたって」
基礎属性魔法には、火、水、風、土、光、闇の六属性がある。魔法使いのランク的には基礎属性魔法一種使い(自分が一番得意な属性)が一番低く、基礎外無属性魔法使い(オリジナル魔法)が一番高い。
パン屋の子どもは既に二種類使えているようなので、下から二番目の基礎属性魔法二種使いに入る。多くの偉大な魔法使い達は覚醒当時から二種、三種の魔法が使えていたというので、将来が期待されるのに十分な素質だ。
「そのうち、俺も超えられるかもな」
「それはないでしょ。ロベルト以上の魔法使いなんて見たことないもん」
「えー、意外といるかもよ? 世界はまだまだ広いんだからさ」
そうして三人は、魔法談義へと雪崩れ込んでいった。
ちなみに、ロベルトの得意魔法属性は……。
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