そっと見てね




今夜は曇り空の新月だから

このまま風が吹かなきゃ

あの池でたくさん飛ぶはずだよ

歩いている途中でふわっと光りながら飛ぶのを見つけても

声を出しちゃだめだよ

こどもの声は聞こえてないけど

大人の声は聞こえてるんだ


呼吸を止めて 気配を消して

両の手でそっとつかまえたら

親指と親指の間を少しだけ開けるから

そこにそっと顔をくっつけて見てね

でも きれいに光っても声を出しちゃだめだよ

そっと そっと見てね


そうそう

僕の手のひらはあったかいほうだから

びっくりしちゃって 前は光らなかったのかも

だから 池に着くまでは手を繋がないからね

もちろん ポケットにも手を入れない


今度は僕の手の中で緑色に光ってくれるかな




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る