左耳




君の右隣の席から 君の右顔だけを見てきた

視線をデスクに向けたまま 

君は 右耳だけで僕の話を聞いて

ごくたまに 短い相槌を打った

滅多なことでは 正面の顔をこっちに向けてはくれず

ましてや

左の耳は 見たことがなかった


その左耳に 僕は 今 キスしてる

キスしていると

やっぱり 左耳を見れないんだけど


顔を上げてしまうと

これは 本当は夢なのよ

って 言われてしまいそうで どうしてもできない


僕は その左耳に キスしている



これが

これが 夢 ではありませんように




小声で言ってみる






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