Repeat & Fade




「ボトルから最初にグラスに注がれるときだけトクトクトクと音がするのよ」


 君の言うとおり 君のグラスの上でワインボトルが喉を鳴らした

 仕切りなおして

 さっきよりも少し慎重に僕のグラスに注ぐも やっぱり無言だった


「でしょ?」





「ほら やっぱり今夜も私のほうからキスをした」


 美味しい料理とお酒を楽しんでいる時にそれはないよ 

 と思ったけど

 案外 それとその台詞をいつも待っているのかもしれない


「でしょ?」





「そんなこと全然ない 買い被りだって」


 君のいいところや好きなところを褒めても

 まだ料理が残っている皿に視線を変えながら

 君は否定する


「でしょ?」





「私とは結局遊びだったのね」


 中身を全部スルーしてゴールを目指す君に

 聖書も仏陀もラブソングも通用しない

 溜息をつく暇も与えず

 

「でしょ?」




「でしょ? やっぱり」





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