月影



闇夜のはずなのに

演じている役者がはっきり見える昔の西部劇のように

今宵の蒼みがかった世界を創りしは

空高く 南中した 満月



はるか遠くで瞬きながらも その数の多さに物を言わせ

ありとあらゆる線を人に引かせ

この地上にあるものの絵を描かかせ

幸せな未来を予感させる星々の輝きを

この日ばかりは くすませて

自分一点だけに視線を集めさせ

遠い未来も 近い未来も人に思わせることなく

今 と 今よりも前 のことだけを人に思わせる



他の星々とは違い

この光は瞬くことをしない

人は それを

月光と呼び

月明かりと呼び

月影と呼ぶ



ある人は 歩みを停め

ある人は 口をあけて

ある人は 目を細め

ある人は 手を合わせる



月に何を見ん

月に誰を見ん



月に何を思い出す

月に何を馳せる





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