雨あがり
甲高い声のDJのしゃべりが煩わしくなって
ボリュームを0にしたら
エンジン音と
ワイパーが水滴を掃う音
だけになった
途端に
昨日からの24時間が現実味を失って
薄い灰色の空や
前を走るワンボックスカーのブレーキランプだけが
目の前の 全て になった
楽しそうに止めどなく語る彼女の口元
輝かせる二つの大きな目
しなやかだけど しっかりと張りのある黒髪
箸を持つ大きな手
スカートから覗いている 白くてきれいな足
黙ったときに聞こえる 鼻から漏れる呼吸の音
くだらないテレビ番組に 短く笑う声
「それでね…」と次の話題に移るのに
ボーっとしている僕に注意を促す言葉
髪を洗うポージングで 自分の腕の筋肉を誇らしげに見せる姿
ベランダで育てている花たちを しゃがんで見つめる後姿
それらのひとつひとつは
しっかりと僕の眼の裏に焼きついている
彼女が眠り込んでいる中 僕がいくつかの質問をすると
時々 首を振ったり 頷いたりするのを楽しんだけど
「あっちの世界から帰って来れなくなると嫌だから やめて」
って 以前に言われたのをようやく思い出して やめた
本当は
僕にやってほしかった
帰って来れなく してほしかった
気がついたら 雨はとっくにやんでいて
変な音をさせながら
2本のワイパーが前を走るワンボックスカーのお尻を拭いていた
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