第5章『目覚めるモノたち』①
「──ほう、今度は
持ち主と同じく、その薙刀も
「ならば、こちらも──!」
瑠姫は右手の刀印で宙を斬りあげた。
その軌跡に沿って青い炎が走り、
「
剣をとって構えると、
その
まるで舟を漕ぐ
「へぇ。あいつ、あんな武器を持ってたんだな」
やや離れた場所で観戦している伶人が、状況のわりには呑気な口調で言った。その
「木で出来てるのか? あれ」
「うん。見た感じ、
伶人と千花の会話に、固唾を呑んで見守る、というような緊迫感は無い。
瑠姫が負けるとは夢にも思っていないのだ。
事実、この一週間で瑠姫は五体の
夜な夜な
しょせんは
かくして八日目の夜である今しがた、郊外の公園で六体目の
「参る」
剣を正面に据えた
対する
それを紙一重でかわし、ほぼ垂直の斬撃を浴びせる瑠姫。
薙刀の柄で受け流されるも、返す刀で
その攻撃は
欲しかったのは、必殺の一撃を確実に当てるための間合いなのだ。
「もらった!
瑠姫は月華方剣を抜き打ちの姿勢で構え、
白木の刃が
「──
輝く剣を水平に一閃するや、その一瞬だけ刀身が巨大な光の刃となり、
まさしく一刀両断された
「お見事」
伶人は拍手した。
千花も拍手するが、いかんせん肉球を打ち合わせても、いい音は出ない。
「気に入らんな……」
あざやかな勝利にも関わらず、瑠姫は不満げだった。
何がだ? と言いたげ伶人を一瞥しつつ狐仙変化を解き、千花に問う。
「士郎という奴は、式神を一匹しか打てんのか?」
「んーん。たぶん、五体くらいは同時に操れるんやないかなぁ」
「ならば何故、
「──確かに、戦力の
そのことは、実は伶人も気になっていた。
同時に複数の式神を繰り出せるのなら、そうするほうが断然有利なはず。
なのに士郎は決して力押しで攻めてこようとはせず、持久戦に持ち込もうとしているように思える。
それでは消耗するばかりだろうに、どうして?
石橋をこれでもかと叩いてから渡る性格なのか?
さもなくば、何か
「……なんか、嫌な感じだな」
伶人は眉をひそめ、夜空を見上げた。
ほんの少しだけ欠けた月が、雲間に浮いている。
「もしかすると、俺たちは狸の策にはまってるのかも」
「……どういう意味じゃ?」
「いや、陽動の可能性があるんじゃないかと思ってさ」
「ようどう?」「よーどー?」
瑠姫と千花が声をハモらせた。
「
伶人には、そう思えてならなかった。
だとしたら、俺らは
翌日。
いつものように朝のワイドショーを観ていた伶人と瑠姫は、昨晩のいい知れぬ不安が
瑠姫が六体目の
残すは、あと一人。
八人の
(してやられたわ。こうなったら奥の手を使うしかないか? じゃが、それは──)
腹立ちまぎれに
【つづく】
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