私に恋愛はまだ早いです!

漣優

第1話 高校ってこれが普通なの...?

「えー。あなた方は今日からこの学校の一員です。皆仲良くこれから宜しくお願いします。」


(あー終わった終わった。図書館にでも寄ろうかな。)


4月1日。県内の学校は一斉に始業式を迎えていた。昨夜はバケツをひっくり返したかのような大雨が降っていたにも関わらず、カラッと乾いた空気が頬を撫でていくのには驚いた。


駿しゅん君!今日一緒に帰らない?」


クラスの中心にはTHE陽キャラという感じのキラキラした男子と女子が3人ずつ固まっていた。男子は女子を褒めちぎり、女子は男子と少しでも仲良くしようとしているのが見え見えだ。しかし客観的にみても男子はかっこいいし女子も可愛い。私なんかは見るのも変な罪悪感が芽生えてしまう。


「あ、神平かみひら!この書類佐々木先生のところに持って行っておいてくれないか?」


中学で暗い容姿を散々虐められていた私は地元を離れ進学校に進学した。だがその努力も水の泡。中学の頃の虐めっ子が同じクラスにいたのだ。案の定中学の頃の黒歴史は一瞬で学校中に広められ、やりたくもなかったクラス委員長を押し付けられた。入学初日だというのにクラス内にはもう派閥やカーストができていて当然私は最底辺。軽い虐めも始まったが今回当たった担任は虐めを見て見ぬふりする先生らしく、また中学が戻ってきた事は明らかだった。


先生に押し付けられた仕事を終えるために数学科の佐々木先生のところへ向かう。階段を降りようとした時だった。クラスの陽キャラグループの男子と他のクラスだろうか。見たことのない女子が話しているところにでくわしてしまい、反射的に傍の陰に隠れた。特に意味は無い。自分でもなぜ隠れたのかわからない。


「駿君!今日は一緒に帰れるの?」


「ごめん今日は急いで帰らないといけないんだ。」


「えー!昨日良いって言ったじゃん!」


「ごめんなぁ。急だったからさ」


「駿君...私に隠れて女の子と会ってない?」


「そんなわけないじゃん!俺の彼女は真弓まゆみだけだよ!」


その真弓と呼ばれていた女子が去った後。入れ替わりでおさげの女子が階段の踊り場に上がってきた。男子を見るなり飛びついて


「駿君~!会いたかったよ!」


等と聞いているこっちもこそばゆくなるような甘い言葉をこれでもかというほど発する。


「駿君に別の女の子がいるっていう噂聞いたんだけど嘘だよね?駿君は私だけだよね?」


「なんだよその噂!俺が好きなのはさぁやだけだよ!」


私は自分の耳を疑った。


(さっき来ていた女子はこの人の彼女で、今来ている女子もこの人の彼女で...?これって噂の二股...?)


この後も何人もの女子が踊り場にやってきては愛の確認を済ませて帰っていく。最後は学校の門が閉まる直前にやってきた女子と一緒に階段を降りていった。肩の力が抜けそのまま地面に座り込む。


「高校ってこれが普通なの...?」


身体から力が地面に流れ込む。門が閉まる最後のアナウンスではっと我に返り家に帰ることができた。

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