PUNQUEEN

エリー.ファー

PUNQUEEN

 この学校には女王がいる。

 僕は歯向かうこともかなわない。

 何故か、単純だ。

 僕は彼女のことを知らないのだ。

 多くのことを語らない彼女のことを知らないのだ。

 この学校の生徒たちは、彼女の噂をよく話している。いつも、一人でいる。放課後は図書館で時間を潰している。屋上から飛び降りようとして先生に止められた。その先生と恋仲になっている。何者にもなれない、というのが口癖。

 他、色々。

 そのどれもが正確ではないらしい、

 という。

 噂すらある。

 私には分からないことだ。

 私には。

 その女王のことなど考える余裕もない。

 忘れてしまおうと思う。

 もうすぐ。

 期末試験あるし。

 私は数学が得意であり、いつも学年で一番の成績を撮っている。それだけ優秀ということだ。お母さんにも、いつも褒められているし、お父さんには、将来を期待されている。

 正直、毎日が愉快だ。

 だが。

 最近。

 この学校で僕の数学における神話を崩そうと思うものが現れた。

 それは、王様だ。

 この学校の王だ。

 何物にもこびず、教師にすら鉄建を振るうという。僕は会ったことがないので、全く知らないが、そういうものであると認識している。そもそも、生徒であるのか概念であるのかすら分からない。

 女王と王様の違いや、共通点も分からない。

 存在している女王。

 存在すら不確定な王様。

 私は今日も放課後の図書館で全教科の勉強をする。特に、数学の勉強はとても楽しく、正直やりがいがある。ただし、今日は違う。今日だけは違う。楽しい楽しくないの前に、成績をあげて、王様を倒す、という目的がある。

 そのためには。

 どうするべきか。

 どうしたらよいのだろう。

「お困りみたいね。」

 そこには。

 女の子がいた。

 背が高く、顔が小さく、モデル体型である。

「別に困ってないです。」

「いや、困っているでしょう。」

「困っていないです。」

「どうやったら、成績があがるか、ということを悩んでいたみたいだけれど。」

「自分で考えます。」

「ちょっ。」

 その瞬間、その女の子は僕の頭を軽く叩き、チョップをお見舞いしようと言わんばかりに右手を高く、左手の指先を伸ばして胸の前で止めて見せる。

 そのままの体勢で動かなくなるのは、彼女の癖なのだろうか。視線は私をとらえたままであり、それ以上の変化はない。

 私はそのまま女王を見つめた。

「マネキン。」

 動かないとは思ったのだ。

 その瞬間。

 グラウンドの方から、声が聞こえてきた。

 誰かの声ではない。

 私の声だった。

 窓に近づくと、自分によく似たマネキンが壊されていた。いや、壊されたのではない、上から落ちてきて粉々に砕けたという感じだった。下敷きになった生徒がいたようで、教師が駆け付けている。

 私はそれをしり目に、また、椅子へと座り、勉強をし始める。

「そんなことよりも、数学の勉強をしないと。」

 何度も何度も、何度も何度も何度も。

 そんな言葉ばかり繰り返し、しまいには図書室が閉じてしまうまで勉強し閉じ込められてしまった。

 外に出る機会を失い、学校が朽ちるまでこの中にいることになるだろう。

 久しぶりに窓の外を見てみる。

 誰もいなかったが、やけに夕日だけは綺麗だった。

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