第30話 我が家にて

第30話 我が家にて


 駅前のスーパーマーケットに着く。つぐみさんは2階にある服や家庭用品・ドラッグ売場に、俺は昼飯の材料を1階で仕入れる。焼きそばとか、カレー辺りが作れれば良いので、ざっと材料を買って、つぐみさんと合流する。


 目当ての物は買い込んで、ナップザックにしまっているようだ。


『昼食の材料は適当に買っておいたから、なんとか成ると思う』


『ありがとう、あと、あれを買わなくても良いの?』

『あれって?』

『あれよ』


って視線を追っていくとそこには、うすうす……と書いた箱が山積みに成っている。


 もしかして、あれって


『ひとケース位買っておく?』


 ひとケースって、大体1箱に何個入っているんだっけ。


『ケ、ケースは要らないんじゃないかな』


『じゃあわかった、買ってくるわね』


って、あれを女性が買うって、ここは俺が買った方か良いのでは等と考えている間に、つぐみさんはすたすたと売場に入っていって、ケースではなく、セットを取り上げた。


 それは、俺の目線よりも先にあったスタミナドリンクの3本セットだった。彼女には手前のうすうすは、眼中に無かった様だ。なに考えているんだ俺、備え有れば憂いなしだが、つぐみさんがそれを考えているなんて考える事自体、ギルティかも。


 動揺を悟られないように、平常心で戻ってくるつぐみさんを迎える。


 スーパーマーケットを出て、家への道は昨日のコーヒハウスからと同じに成るから、昨日ほどつぐみさんはキョロキョロしていない。それに今朝の大移動のせいか、心持ち蝉の声が静かなような気がする。


 スーパーマーケットで、少し涼んだとは言え家に着くまでにはまた、また汗をかいてしまう。


 エントランスでインターホンを鳴らすが、お袋は出てこない。こっちも出掛けているのか。鍵は、ちゃんとある、良かった。が、つぐみさんとふたりきりに成る訳で、まずいことだが何か意識してしまっている。


 上がっていくエレベーターの中、何故かふたりとも言葉がでない。


 部屋の有る階について、家のドアを鍵で開ける。


『どうぞ』


「『お邪魔しまーす』」


 やはり、お袋は居ないようだ。玄関で、靴を脱ぎながら、


『先にシャワー浴びちゃって下さい。着替えは用意しておきますので、下着類はこのネットに入れて、服と一緒に洗濯機に入れておいたら、回しておきますから』


『ありがとう、先に入らせて貰いますね』


 風呂場の窓を閉めて、お湯が出るようにセットをする。シャワーを少し出しながら、風呂場を片付けて、石鹸とシャンプーとリンスを用意しておく。そうだ、あと洗い用のタオルとスポンジも置いておく。これで、中はOKだ。


 洗面所にバスタオルと、下着類を洗う用の洗濯ネットを用意して、取り敢えずつぐみさんに入って貰う。


『つぐみさん、着替えは入っている間に用意しますからどうぞ』


『ありがとう。先に入らせて頂きますね』


 洗面所に入ってきた彼女に、洗濯ネットと洗濯機を指差して教えてから、洗面所の扉を閉める。


 まずい、彼女が服を一枚づつ脱いでいく光景が頭からは成れない。今まさにそれが現実起きている訳で、この扉1枚向こう側に裸の彼女がいる。


 いかん、気を取り直して貸してあげる服を選ばねば。上下でスウェットみたいな服がいいか、もしくはTシャツやトレーナーに短パンみたいなのが良いだろうか。俺としては、つぐみさんの綺麗な脚を見ていたいから、後者押しなのだが、露骨と思われるのもなんだから、 両方用意してつぐみさんに選んで貰おう。


 あと用意するものは、そうだドライヤー、それは洗面所に有ったから。それを出せば良いか。他には?


 まずい、何かをしていないと、シャワーの音からどうしても想像を膨らませてしまう自分がいる。このイメージが彼女にだだ漏れていないことを祈るだけだ。

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