第10話 あれ?
「あれー、俊いるのー」
インターフォンの小さな画面のなかには、ピザの配達人を押し退けて除き込んでいる顔があった。
やば、お袋だ。何もやましいことはしてはいないが、なんか気まずい。何で今帰ってきたんだ。とはいってもセキュリティゲートは開けなくてはいけない。
「ああ、いるよ。今開けたから」
『つぐみさん、お袋が急に帰ってきたんだ。ちょっとリビングに移動してくれる』
あれ、返事がない。まだ、エレベーターが上がって来るまでには時間があるので、部屋を見に行くと、本箱の2列目から見つけてきたと思われる同人誌を、真剣な眼差しで見ている。
あれは確か、アニメの二次創作ものでエロさ満開だった筈。それを真剣になって見ているなんて、ちょっと声を掛けずらいが、
『「つぐみさん!」』
『「わっ、びっくりした」』
『「それどころではなくて、お袋が急遽帰って来たから、取り敢えずリビングで待っていて」』
『わかったわ』
と言って、読んでいた本を名残惜しそうに机に置いた。出しっぱなしは、等と言っている間はなく玄関の鍵を回す音がしている。
「すみませんねー、バカ息子がさっさと開けないで」
「あれっ、母さんだけ?」
「そうよ、どいてあげるから、ピザ受け取りなさい」
母親をすり抜けて、ピザを受け取る。代金は注文時にカードで支払い済みだ。おまけのドリンク類も受け取って、リビングに急いで戻ると鞄を置いて呆然としている母の姿があった。
「かあさん、どうしたの。こちらは…」
「ラルカちゃんじゃない」
『『「「えっ!」」』』
つぐみさんの前にちょこんと座っている、ラルカが見えている?
「かあさん、ラルカが見えているの?」
「ええ、久しぶりねー」
「久しぶりって、知り合い?」
「そうね、丁度30年位前かしら。お父さんと出会った頃ねー、ってそちらのお嬢さんは?」
「神島つぐみです。俊哉さんとは、ラルカちゃんを通じて、懇意にさせていただいています」
「つぐみさん、ようこそいらっしゃい。バカ息子が悪さとかしてない?こんな素敵なお嬢さんを家に連れ込むなんて、ちょっとは甲斐性があるところを見せてくれないかと思っていたけど、やっとね」
「あ、あの、つぐみさんは今日相談事があって、昼食がてら寄った…」
『話がこじれるから、私が話すわ。お母さんもラルカ知ってるようだし』
「お母さま、本日は急にお邪魔してしまい、申し訳ありません。急な用件とは、ラルカちゃんが関連した事で、もうお察しかと思いますが、俊哉さんと絆でつながって」
「あなた達もなの」
も、って事は母さん達もそうなのだろうか?
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