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「だから、ユウちゃんとは結婚できない」
「……なんで」
「ようやく言えた。ごめんね……」
「俺を…助けてよ!寂しくなるじゃん!なんでだよ!せっかく結婚できると思って…嬉しかったのに…」
「……ユウちゃん」
「……なんで」
「私は、変わったよ」
すると、チャペルのドアが大きな音を立てて開いた。
そこには、剛将さんが立っていた。
剛将さんは私とユウちゃんを目を大きくして見つめ、まっすぐ、まっすぐと歩み続ける。「お客様?!」と従業員の静止を振り切ろうとする。そして、バージンロードに足を踏み入れようとした。
「剛将さん!!!」
「紅谷さん!まだ間に合う?!」
大きな声で叫び、こちらに走ってこようとする剛将さん。
「ちょっと止まって!!!!」
「えっ???!!!」
「そこ……渡っちゃダメ……」
剛将さんは、一人でまだ始まらない結婚式場のバージンロードを歩こうとしていた。内覧の時、担当の人にはどこの式場でも「ゆかりのある正式な道」だと、歩くことを止められるほどの道。
「回って!そこ!」
「えっ?!どこ?!」
「そこから回ってこっち来て!!」
いや、私が向かうべきかとも思ったけど、まだ結婚式自体してないけど、とりあえず来てもらったからには傍に来て欲しかった。
傍に……?
剛将さんは、私のジェスチャーの言う通り、バージンロードに足を踏み入れることなく、静止してくれた従業員の人に「すみません」と頭を下げながら大回りをして壇上にたどり着いた。
「長い…道のりでした…」
「お…お疲れ様…」
「まだ……間に合いますか?」
「え?」
「結婚式……間に合いますか?」
剛将さんは、おどおどとした様子で周囲を見渡す。
「あれ…あれ?」
「剛将さん……今日内覧で……」
「えっ?内覧?」
「まさか結婚式してたとか、そんなことを想ってたんじゃ……」
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