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高揚感を落ち着かせたいところだが、次の先約があった。ユウちゃんに電話をかける番である。
「もしもし?ごめんね、電話もらってたみたいで」
「も…もしもし。こっちこそごめん。急に電話して。」
電話口から聞こえるユウちゃんの声は少し暗く、元気がない。ここ最近食事に行ってもいつものように話しているほんの隙間の滞空時間で目が曇っていることがあった。
あの目。私は見たことがあった。
「何かあった?」
「う~ん…何かあったってわけじゃないんだけど…」
「うん、聞くよ?」
「いいの?」
「そりゃあ元気ないような声だされてちゃ、こっちも気になるもん。もし今言いにくかったら今日ご飯でも行く?」
「あ…その方が…いや、言うわ」
珍しいなと思った。いつもなら「行く!」と元気になるユウちゃんだが、今日は電話で話したい様子。少し緊張しているようにも聞いて取れた。
とりあえずコーヒーを飲もうと、スマートフォンを持つ右手と反対の左手で取り、口に運んだ。
「俺さ、アッちゃんのこと好きなんだわ」
コーヒーを、本当に噴出した。幸いパソコンに直接噴射することはなく、机の右側にあった私のカバンに敢無くバリスタシャワーを噴射してしまう。
「おふっ…ぐふっ……おおう?」
「え?!あ?!大丈夫?!…なんか変な音がしたけど」
その好きは「どんな好きですか」なんて聞きたいけど、その好きは「こんな好きなんだな」というのは、長く恋愛にご無沙汰をしていた私でもよくわかった。
「あ…あ…」
「…」
「……だからさ」
「え?!…ええ」
「だからさ」
「ええ」
「……」
「……」
言ってください…言ってください頼みます!この沈黙、破れません。それほどの免疫持ってないし、技術もない!
「……」
「……」
「ご飯…やっぱり今日行こ」
「……そうだね」
そして、正式にユウちゃんとお付き合いをすることになりました。
まだ、両親には伝えていませんが、そのうち言わずともバレると思っています。
紅谷敦子。少しずつ成長しています。そう思えた一日でした。
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