アツ子の事情

誉野史

序章

序章

 

 

ブルーライトが私の顔を照らす。画面に食いつく私は、キーボードを打ち込み、時々スナック菓子の袋に手を入れて口に運ぶことを繰り返し続けている。

 

何をやりたいということもなく、ただ「そこに座って食べ続ける粋じゃない女」だけを、毎日毎日不規則にし続けていた。

 

カーテンを閉め、外の光を遮った。部屋の照明を付けず、外の日差しがカーテンの色を多少繁栄させるだけで、唯一の光は目の前のパソコン画面だけだった。

 

こんな生活を続けて始めて、どれくらいたっているのかさえわからないまま。

 


“ピンポーン”

 


インターホンが轟いた。

 

ネットスーパーの宅配が届いたと思い、何も気にせず玄関を開けた。

 

そこには、母が立っていた。

 


「きちゃった。」

 


満面の笑みを浮かべる母に、私は「終わった」という言葉しか出てこなかった。




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