第8話過去【1】
暫くしてから扉を叩く音と泣きながら「ごめんね」と言ってくる謎の声が聞こえた。
その声の主は先程来た2人の子供だろうと検討がついたが、この際どう返答したらいいのか分からず、部屋の扉を開けてみた。
すると、やはりそこに立っていたのは2人の子供だった。
なんの用なのか分からずそこに立って居ると、なんと拷問道具を手に持っていたのだ。
これにはびっくりしてカインはすぐに扉を閉めた。
だが、拷問道具を持っているならすぐに扉をこじ開けてでも拷問してきたクルスと違い、ただそれを持って立っているだけだった2人の子供の事をたいへん不思議に思ったカインはそっと部屋の扉を開けてみた。
するとこちらに拷問道具を渡しているではないか!
これにはびっくりしたが、すぐに受け取り元あった場所に戻した。
そして、その2人からはまず謝られた。
どうやらその2人はその拷問道具を遊び道具だと勘違いして貸して欲しかっただけらしい。
そして、それを家に持ち帰ると両親に激怒されて、「そんなもの持っていたらあの子とは仲良くなれないよ!」って言われたらしい。
そして、こちらが思った事を少しずつ話してみた。
「僕が思ったのは、君たちにこの道具を渡したら君たちに拷問されると思って、怖かったから扉を閉めたんだ。」
意外と流暢に言葉が出てきた自分にびっくりしていると2人もびっくりしていた。
どうやらまだその道具が拷問道具だとは気付いていなかったらしい。
そして、そのままお詫びを言って帰るのかと思いきや「今日はこれだけだけど、早く元気になって欲しいから毎日食べ物持ってくるね!」と、思わぬ言葉を言われた時は涙が出てきた。
今までこんなにも優しい言葉は聞いたことがなかったのだ。今まではずっとお前はいない方がいいとか気持ち悪いとかそんな言葉しか聞いたことがなかった。
だから「ごめんね」と言われた時は謝られたとは思わず、これも何か悪い言葉なのか?と疑ってしまったほどだ。
優しく接してくれた2人には感謝したがそれ以上に食事に辿り着けると感じた時はかなり嬉しかった。
食事は食べたことの無いものだったが、美味しく感じたため、ネズミにもあげようとしてみた。
だが、一向に目が覚めることも無いし、触ってみると恐ろしい程に冷たい。
どうやら自分が食事を与えなすぎて死んでしまっていたようだ。
その瞬間。自分の頭の中は真っ白になって気絶してしまった。
気絶してから暫くして目が覚めると体の外がフカフカしている。
異常な感覚からすぐに外に出ようとしたが、意外にも気持ちよかったのでそのままにしていた。
すると次の瞬間扉が開きそこから見た事のある2人の子供が来た。
「目が覚めてる!」と二人は言うと次には知らない顔が入ってきた。
誰なのかわからない恐怖はあったもののそのままにしていると優しそうな顔で「そこは居心地いいでしょ?」と言った。
カインは少し戸惑ったがコクっと頷いた。
するとその人は食べ物らしきものを食べさせてくれた。
それはとても美味しかった。自分が食べた中で1番美味しいと感じた瞬間でもあった。
その美味しさに魅了されていると、自分がどうしてその場にいるのか気になった。
そこでカインは自分がどうしてここに居るのか聞いてみた。
「なぜ僕はここにいるの?」
その言葉だけを発してまた横になってしまった。どうやら相当疲れていたようだ。
だが、目を開けていたためその話をしてくれた。
まず、今話してくれている人間はムーヤと言う2人の母親だという話だ。
そして2人の名前は男がダンノ、そして女がレイと言っていた。
まず、ダンノとレイがカインと遊びたいと前から話していたと言っていた。
だが、カインの両親はかなりの悪評があったため近付かせてはならないと注意してみていたという。
しかし、カインも同じように悪評があったがそれがどれもデタラメだと言うことは村人はみんな知っていた。
なぜなら、カインの悪評は全て子供達への嫌がらせについてだったからだ。
この嫌がらせの悪評は恐らくクルスによるものだろう。
カインは1度も村の子供達と関わりを持ったことは無かった。
それどころかカインの悪い噂は耳にしても、カインの姿は誰も見た事がなかった。
しかし、とある日カインらしき人物が目撃されたと情報が村人達の間で広まった。
カインらしき人物が拷問を受ける様をたまたま目撃した人間がいたのだ。
そして、その目撃した人間が言うには拷問によって爪は剥がれ、体もアザだらけの酷い有様だったという。
この事は村の大人達だけの秘密事項としてしまわれていたのだが、クルスが亡くなったとの報が入り、1度村人はカインの姿を見に行ってみる事にした。
そして、次の日カインの家を訪れるとそこには母親がいるだけでカインの姿はありませんでした。
そこで、暫くの間カインの家を監視することにしたのです。
すると、恐ろしいことが判明したのです。
カインが実際いるのは母親がいる家ではなくその隣の小さな小屋でした。
その小屋からは悪臭がするとの事で誰も村の人々は近寄っていませんでした。
しかし、その場所も監視し始めてしばらく経ってからそこからカインが外の様子をチェックする姿がありました。
どうやらクルスがまた来るのかもしれないという恐怖からのようです。
しかし、クルスがいないのを確認するとすぐに扉を閉め、そこから動きはありませんでした。
わずか5歳の少年がそこまで自己防衛に徹底しているとは信じられませんが、カインではその方法しか自分を守る方法はありませんでした。
そして、しばらく時が経った時カインに変化が現れました。
カインが小屋から抜け出ていくのです。
信じられませんがこの姿は監視員によって目撃されました。
そして、そのまま母親の居る家に入り込むと母親の悲鳴とともにカインが出てきました。
その姿は人間と呼べるものではありませんでした。
そして直ぐに村長のタゴンに連絡するとその小屋にすぐに村の全員でいくとの命が入りました。
そして、全員で小屋の前にいき、少し待っていると異変を感じたのか恐る恐るカインが扉を開きました。
そして、大量の憎たらしい人間を見るとそれを睨みつけて威嚇しました。
その様子を忌々しいと怖がったタゴンは一目散に逃げ出し、他の大人達も怖くて逃げ出しました。
そして、その場にはカインとダンノとレイ以外の誰もいなくなりました。
そこではまだカインにはなぜこの人間は残るのか不思議に思っていました。
ですが、ダンノとレイにはカインと遊んで見たいという希望がありました。
そこで、カインは拷問道具を持ち出すとそれで威嚇をしました。
しかし、2人は「それを貸して?」と言ってくるのです。
恐怖に怯えるカインはすぐに拷問道具を投げ捨てると扉を閉めました。
そして、不思議に思ったダンノとレイはそれを持ち帰り、両親に経緯を話しました。
するとダンノとレイを両親は叱り始めました。
それもそのはず、その説明ではカインと仲良くなるどころか、怖がらせていると察したからです。
そして、叱り終えたあとはカインの小屋に行き、「謝ってきなさい。」と、優しく言うと、同時にカイン用の食料も持たせてくれた。
そして、ダンノとレイはカインの小屋へまた歩き始めました。
続く
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