第7話神の加護
訓練場についたカインはさっそく一振り剣を振ってみた。
「これは軽すぎるな。もう少し重くしないと魔王の体には切り傷一つつけられないかもしれない。」
そう考えたカインは剣を重くしようか迷ったが、《魔王軟弱化》を付与する事にした。
「この効果を付与することによって魔王を討伐するのが簡単になりそうだな!」
でも、魔王を倒したらその者が魔王になるという仕組みを根本的に変えなければこの負の連鎖を変えることは出来なさそうだな。
そこでカインは考えた挙句魔王の能力を見ることが出来ればその能力の無効化でこの連鎖を止めれると考えついた。
早速ミコを呼び、魔王の能力を見ることが出来ないか確かめてみた。するとミコは
「それはできるけど、それでどうするつもりなの?」と、少し不安な顔を浮かべながら答えた。
案外簡単に出来る事が判明したが肝心の自分の案をミコに伝えていなかったため少し不安にさせてしまったことを後悔したが、すぐにミコにこの考えを伝えた。
「魔王の能力を見ることが出来れば、その魔王の能力の無効化をノエモンに付与することによってノエモンが魔王にならずに済むと思うんだ。」
するとミコはびっくりした顔でこちらを見た。
「前にも言ったけど、能力を定めて付与する事は出来ないんだよ?だから、前の神様でも魔王の連鎖を止めることは出来なかったんだよ!」
ミコはそういうとこちらの顔にまだ違和感を感じたため聞いてみた。
「もしかして、自分の思い通りに付与できたの?」
前の話を忘れていたカインはハッとしたが自分が思ったものが付与できたことを正直に言った。
「どうやら自分の思ったとおりに付与できるらしいんだ。先程も《魔王軟弱化》を付与しようと思って付与してみたが無事に成功した。」
するとミコの顔がパッと明るくなった。
そして、自然と涙も出てきていた。
どうして泣いているのかを聞く前にそっと抱きしめてあげた。
そしてミコが落ち着きを取り戻したところでどうして涙を流してまで喜んだのかを聞いた。
それは、カインがまだカインになる前の神になりたての頃の話。
カインが生まれた故郷が魔王に滅ぼされそうになっていたとき。カインはその場にいた勇太と呼ばれる後の第1456代魔王の生前の姿と共に魔王と闘っていた。
魔王と闘う少し前、とある女性から「魔王に触れてはならない。」と聞いていたがその忘れやすい性格からその事を綺麗サッパリ忘れて闘っていた。
何故その女性は、魔王に触れてはならないと言ったのか。それは、カインが直接触れると浄化させてしまうからである。
浄化すれば間違いなく次の魔王はカインになる。そう考えたその女性は、カインに必死にその事を訴え続けていた。
訴え続けていたというのも、カインが忘れやすい性格だということを知っての上だったからだ。
だが、その訴え届かず、カインは怒りを魔王にぶつけるつもりで直接触れてしまった。
そして瞬く間に1454代目の魔王は死に、そして1455代目魔王。史上災厄の魔王と語り継がれることになるものの誕生であった。
その魔王が誕生したその日、天界では神様不在のため、緊急で神王を呼び寄せた。
そして、緊急会議が行われた。
まず事の発端から語られた。
それはカインが村の人間に持っていた悪の心。
その心を作りだした人間その名もクルス。
村では疫病神と呼ばれていたがクルスという名前がある事は村の村長でさえ誰も知らなかった。
そのクルスは、愛すべきはずの最愛の息子を痛ぶり、そして悪い噂を流し、1人にした。
その経験もあったカインは村に対してそして、母親に対しても同等の悪の心を持っていた。
「こんな世界。無くなればいいのに。」
これがカインの口癖だった。
カインはクルスからの拷問に限界を感じていた。
死が目の前に感じられたのだ。
「ああ、ここで死ぬのか僕。こんな人間に拷問されて死ぬ人生だったのか...」
そんな言葉を口にしたが、まだ希望はあった。
上手くこの部屋を抜け出して職業転生の場所にたどり着くことが出来たならば、クルスからの拷問が無くなると思ったからだ。
だが、そんな方法考えるのが馬鹿だと心は死んでいた。
そんな時だった。
1匹のネズミが部屋の中に入ってきた。
1度はそのネズミを食べて生き延びようと考えたが、今生き延びたところで何も出来ないと思ったカインは最後の力でネズミを育てることにした。
まず、部屋の中に牛のフンや野菜の残りカスが入ってきたら1番美味しそうな部分をネズミにあげた。
そして、ネズミの心が分かる気がしたカインは寝床も作ってあげた。
だが、カイン自身がしてあげられることはこれくらいしか無かった。
だが、その生活をしていくうちに身体は痩せこけていくが一方で、心は癒されていた。
昔から動物を見たくても両親から拷問を受けていたため、もちろん部屋から出た事は無かった。
だが、奇跡的に動物を見ることが出来たのだ。さらに念願の動物を飼うことも出来た。
動物を飼うことで心が癒されることを知ったカインはどんなに酷い仕打ちを受けても動物に八つ当たりをしてはいけないと心に誓った。
しかし、カインの空腹と疲労は限界にもう到達していた。
カインはその頃人間というより動物に近くなっていた。
「俺は人間を許さない。絶対に許さない。」
そう言い放って部屋の扉を蹴飛ばした。
だが、食事をどうしても取らなければならなかったカインは隣にある母親がいる家に忍び込んだ。
そして、静かに台所へ行き、食べ物を貪り食した。
だが、家の窓が空いていることから勘ぐられ、カインは捕まった。
だが、もうあの頃の弱いカインではなく、人間としての正気を失っていたため、その場で母親を殺していた。
その様子は地獄のようだった。
カインの母親が悲鳴をあげても怯むことはなく、攻撃を強めて息の根を止めた。
カインは母親を殺しても正気に戻ることは無く、手に抱えられるだけの食料を持つと自分の部屋へ帰った。
そのまま自分の部屋へ入ると真っ先にネズミに餌をあげた。
ネズミもクルスの死から何も口にしていなかったため、干からびそうになっていたからだ。
ネズミに餌をあげるが反応は無い。
寝ていると勘違いしたのか、ネズミの分を残してカインは寝てしまった。
次の日、目が覚めると部屋の扉が開いていることに気付く。
ゆっくりと閉めようと立ち上がり、扉の前を見ると人だかりが出来ていた。
(俺の前に来るな人間。)
そう思いながら睨み続けていると、ほとんどの村人は恐怖で逃げていた。
だが、そこに2人の子供が立ったままだった。
どうしてそいつらは俺の前に立っていられるのか不思議だったが、そのまま1度は扉を閉めてみた。
すると不思議な事にその扉を軽く叩かれたのだ。
何故なのか困惑したが、昨日たくさん食べ物を食べたせいなのか答えがすぐに出た。
(きっとこの2人は俺を捕まえて食べてやろうと考えているな)と。
その考えを出したカインはすぐ側にあったクルスに使われていた拷問器具を振り回して追い出そうとした。
だが、平凡に育ったその2人の子供は何かの遊び道具だと勘違いして「その道具貸して?」と言い出した。
だが、また拷問されると怖がったカインは道具を投げ捨てると扉を閉めて、閉じこもった。
続く
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