専門学校時代8  2014年04月17日(木)

 さて、専門学校時代も佳境を迎えて来ました。ここでは私の恥ずかしい過去を書かなければなりません。


 どうぞ、笑って下さい。軽蔑される方もいるでしょうね。


 ですが、何もかも書いて置きたいのできちんと書こうと思います。中々(なかなか)全部一記事にまとめられるかどうかわかりませんが一息に書いてしまいたいですね。



 専門学校で2年時、頑張ったと言えば就職活動です。せっかく戻ったんだから、学校に来る良い求人にありつきたかった。みんなでマイナビに登録して、お直しの会社も受けたし東京の大手メーカーに就職したかったし、LIMI feu(リミ フゥ)のエントリーも携帯のメールでしました。


 私の専門学校からヨウジヤマモトに就職した人が居たので、その人みたいになりたかった。


 けれど、ヨウジヤマモトからもコム・デ・ギャルソンからもイッセイ・ミヤケからも求人は来なかった。


 年によって違うんだ。と就職担当の先生は言った。ホームページも見てたけど、募集はしてないようだった。記念受験もできなかったのである。


 就活してる学生だけで、東京の就職説明会にも行った。大勢人がいたし、色んな会社があることに驚いた。


 クレヨンに山田屋、三陽商会にストロベリーフィールズ、みんな入りたい会社だった。


 けど、以前にも書いたがパターンメイカーというのはほんとに優秀な人しか採用しない技術職なのだ。


 どこもかしこも書類審査で落とされてしまった。三陽商会などは体育館のような大きなホールで説明を受けたのだが、そこには200名以上集まっていた。ちょっとした講演会である。


 だが採用人数は2~3人である。レディスパターンメイカーになりたかった私は必死で出された課題を提出したが、駄目だったのである。

 でも課題が出ただけ良かった。面接にも進めずに履歴書とシラバスを含めた内申書だけで判断されるわけじゃなかったから。


 他の会社でも簡単なポートフォリオを作成して出したり、雑誌の種類を傾向分析として座標に埋める問題なんかが出された会社などがあったがどれも駄目だった。


 積極的に質問して、ちゃんと就職活動に取り組んでいたが、付け焼き刃ではどうにもならないのだ。


 もう一つ、私が駄目な理由があった。


 面接官に後(あと)をつけられて報告なんかされて無いだろうが、東京に行くまたとないチャンスだっただけに、私は吉原のソープランドに遊びに行ったのだ。


 そんなことしてる奴に就活の女神は微笑(ほほえ)まない。


 でも、見た事のあるモンロー女優に会えると思うと胸が高鳴った。


 それに、一番って言われてるところに行けば、何か分かるような気がしてた。


 入俗料と言って、館内に入るだけで3万円かかる。指名した女性には5万円払うのだ。


 計8万円だ。でも、渋谷でお土産を買って、就活が終わって帰るだけになって時間が余ったのをいい事に遊びに行った。


 これで、ピンサロもホテヘルもデリヘルもセクキャバもなにもかもピンク街は制覇である。やっちまったんだ。


 でも、楽しくなんてなかった。ソープ嬢はアダルトビデオみたいなセクシーなことなんて一切しないのである。


 よく話して仲良くなった方がセックスも楽しいものよ。なんて言って、欲求不満だった私の下心を逆撫(さかな)でして扱った。


 シュンとしてしまったものだ。だいぶ期待してたのに、たった90分しかないのに、最後はコンドーム越しに嫌々セックスしてくれたって程度で終わり、消化不良だった。


 要(よう)は若いからボラれたのだ。


 次は残り少なくなった金で、行けるところに行ったが、ベテランさんを指名しただけあってエッチな雰囲気はするがもうとっくにオバさんである。

 それでももうお金がないから、最後だと思ってオバさんと今度はこっちが嫌々セックスしたのである。


 タバコなんかもオバさんが口に加えて火をつけて渡して来た。別に悪いオバさんじゃなかったし、テクニックはそりゃ最高だった。でもこんな人と抱き合うために来たんじゃないのになって思って帰って来た。


 仙台に帰って来て、そのオバさんの携帯番号入りの名刺をコンビニのゴミ箱に捨てた時、何か言いようの無い罪悪感に侵(おか)された。それは人間の大事な部分を捨てたような気がしたのだ。



 それでも就活は続くのである。地元の仙台で高校生の頃から足しげく通っていた路面店があった。そこで働きたいと販売員のS6さんに持ちかけて、社長に会わせてもらったり、小さいけど仕事をもらって、パーカーのリメイクのためにパーカーを一旦解くなんて作業を任されたりした。


 好きな会社だけど、私は販売員じゃなくて物作りがしたいと打診したんだ。


 すると、そこで物作りを担当して働いてる人を紹介されて、そういう仕事を貰ったのだ。


 そんな時だった。H5が死んだのは。冬の寒い朝、H5は首を吊って自殺したのだ。


 H4が言うには、ビンラディンみたいに髭も髪もぼうぼうだったって言う。


 M3が言うには、なんか日記みたいなノートがあって、自分が死んだことはこのメンバーにしか伝えないでくれと、縮こまった弱気のまんま死んでったようだ。


 そのノートに私の名前が上がったのかわからないままだが、H4から連絡があった。


 寝耳に水だった。私は就活を断念してスーツを新調し、急遽お葬式に参加したのだった。


 H5が死んでから気づいたのだが、私はmixiの紹介欄にH5のことを書いていなかった。


 H5は私を親友だと紹介してくれていたのに、私はマイミクになった人全てに紹介欄を書いていた。


 150名から200名近くである。単にH5のことは後回しにしただけで、書き損なってそのまま忘れてただけだった。


 でも私はH5の心を傷つけて死なせてしまったのかもしれないと悔やんだ。


 思えば仙台から東京に出て行く日、H5にも手紙を書けばよかった。


 M3とH5は同じラグビー部で幼稚園児の頃からの同じ幼馴染である。H5はお金持ちだったが、母親が離婚していなくなっていた。


 H5の兄貴が結婚する時、兄貴はこれで風俗で遊べなくなると言っていたそうで、それをH5は軽蔑していた。M3が初めて童貞を捨てた時、アイツ許せないと嫉妬したとも言っていた。そんなこと言われても、私も同じ穴の狢(むじな)である。なんて言ってあげればいいかわからなかった。


 H5は童貞のまま死んだのだ。私は悔しかった。


 初めはH5が自殺だったなんて知らなかった。でも高校の頃のラグビー部と私とで挙げた葬式でラグビー部の顧問だった先生が来たのだが、その先生が車の中で遺族が首を触って縄の後が見えなくて良かったと漏らしたと言っていたと聞いた。


 そんなこと言わなきゃいいのに、それで自殺したって知ったんだ。


 M3は全部知ってたのか知らずが、「最悪のことだけは考えたくない」とだけ私に言った。


 そもそも仲の良かったM3とH5の間に、私が割って入らなきゃ、こんなことにはならなかったんじゃないかとよくよく考えたものだ。


 M3はH5の母親と同じようにボロボロと涙を零(こぼ)してH5を弔っていた。


 でも私はその場で泣けはしなかった。


 同じラグビー部員一人とM3と私で顧問の先生の家で吞んだのだ。その時酔いに任せて泣きに泣いた。


 M3に「子供じゃないんだから、そんなふうに泣くな。」って言われた。でも泣いた。いつまでも泣いた。そして吐いた。M3の礼服は私のゲロで汚くなった。


 聞けば記憶になかったが顧問の先生とキスしてたらしい。どんなことになってたんだ。シラフになってからそんなこと言われて血の気が引いた。


 無論、風俗に行って口直ししたのだ。


 M3とも、親友だと言い合っていたが、私たちはそんなに頻繁に連絡は取らなかった。


 M3がだいたい返信して来ないのだ。私もエッチな電話にかけ過ぎて、番号を変え過ぎた。


 今はFacebookで繋がってるだけである。M3も新潟に引っ越したし、番号もわからない。


 M3はミュージシャンに、私はファッションデザイナーに、同じく夢を見て青春を費やした二人だったが、どちらも夢は叶わず、普通のオジさんになった。そして、今も大した連絡など取らない。


 そんなもんだったのだ。悲しいとは思わない。でもどこにでもありそうなありふれた思い出にしかならなかったようだ。


 そうそう、この頃、文通してた22が就職して学校の先生になった。


 初めのうちはニートになったなんて喜んでた22だったが立派に教師になったのだ。


 だからと私は大枚(たいまい)叩(はた)いてティファニーのボールペンを名前入りで贈ったりした。


 そんなんで貯めてた30万はすっかり消えた。このプレゼント以外には良い事に使わなかったからよく覚えている。


 お金って良い事に使えば気分も良いんだよな。って、ダサいな自分って思ったものだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る