高校時代 2014-01-12

 高校時代は激動の三年間でした。


 サッカーを辞めることになるし、新しい夢ができるし、短かったけど恋もしたし、友人も今までよりたくさんできました。


 中学時代より高校時代、高校時代より大学時代、どんどん楽しくなって行って私の半生のピークを迎えます。一番色々なことがあった青年前期。


 まさに青春時代という奴です。



 高校入学と同時に天地がヒックリ返りました。


 入学直後に行われた実力試験で320人中308位を記録してしまって…


 受験を通過せず、もう高校のフットボールクラブに顔を出してサッカーに精を出していた結果、半年くらいで何もかも忘れてしまったみたいです。


 頭の良い人が集まった高校だし、みんな受験してきちんと勉強して来たわけですから差はすぐに埋まって追い越されたというか、私の方から転げ落ちてったというか成績は最低に落ちこぼれてしまいました。



 それでも、半年くらいは大きな鞄(かばん)にサッカーの用具を詰めて、フットボールクラブに通ってました。


 同じ高校から通ってた人も居たんですけど、私は高校のフットボールクラブの監督が怖かったです。


 鬼軍曹(おにぐんそう)と言いましょうか。私に対しては割と優しい監督だったんですけど、高校の友人と監督の電話番号を間違えて、監督にタメ口訊(き)いて怒らせてしまったことがありました。もちろん謝ったし、監督ももういいからと言ってくれたんですけど、少し気まずかったですね。まぁそれが直接の原因というより、文武両道だった私の成績が急激に落ちたことがサッカーを辞めるのに大きな原因だったと思います。



 そもそもプロになるために結局は東京のサッカー強豪校(きょうごうこう)には通わなかったのだし、勉強よりサッカーに情熱を傾(かたむ)ける絶好の時期が高校生なわけですから勉強ができないことにくよくよする必要はなかったのですが、初めて芽生えた劣等感は思いの外(ほか)、効いたんですね。



 さらに言えば、女性への興味が異常に加速したことも。


 サッカーの練習内容がボールを使うものよりフィジカルを虐(いじ)め抜くことに変わったことも。


 それから、今までストイックに頑張り過ぎてて、心に余裕が無かったことも。


 総合的に影響してきます。私は本心から、もう諦(あきら)めて楽になりたいと自分のサッカーの力量から言って、プロになる可能性が客観的に見えるようになって行くにつれ、そう思ったのかもしれません。



 その証拠に、2年先輩で、同性の私も憧れるくらい格好良(かっこよ)かった先輩が居たのです。


 格好いいというのは、サッカーのプレイスタイルが格好いい。才能の光る選手が居ました。


 その人と私とのレヴェルの差は明らかで、サッカーで言うセンスの良いプレーをする選手が居ました。


 足の速さも申し分ない。ドリブルでのスピードはもっと申し分ない。


 キックの仕方も独特で振り足が速くてインパクトが見えません。正確だし何より攻撃でのアイディアがセンスが良くて洗練されてました。



 でもその選手でも、地元仙台のベガルタ仙台でのプロ契約でさえ、できないんです。


 いろんなクラブのプロテストを受けてことごとく落選するのを間近(まぢか)で見ました。



 その選手の最大の弱点は背が低いという事でした。メッシみたいな選手だったんです。


 でも、私情が入ってると思いますがテクニックにはメッシに部があったとしてもサッカーのセンスはその選手の方が上なんじゃないかと思うくらい光るプレーをする選手でした。


 でも受からないんですね。だから彼はフィジカルを強くして幾(いく)らかでも自分のウィークポイントを目立たないようにする訓練をしてました。



 結局、その人はサッカー選手になったんです。山形でプロになり、その成績が認められ、ガンバ大阪にスカウトされます。


 そしてガンバ大阪でタイトルなどを取り、2部リーグ降格と同時に仙台に凱旋(がいせん)して補強メンバーとして招集されます。


 私は29才ですから彼は31才です。25才以降でプロ契約できるサッカー選手はプロ契約できるサッカー選手のうち1%しかいません。


 ですからプロ中のプロなわけです。全国的には名前は轟(とどろ)きませんでしたが…



 だから私もフィジカル中心の練習にめげずについて行けられればどっかで花開いたかもしれません。監督が私に最後、辞めると言って挨拶した時にくれた言葉は


 「俺は、おまえを使おうと思っていた。」でした。私からすれば身に余る光栄です。



 ですが、フィジカルを虐(いじ)め抜く練習は基本的に走るんですが、終わりがどこで来るのかわからない状態でずっと走り続けます。もちろん神社の階段上がりも筋トレもありましたがそういうのに負けないメンタリティがありませんでした。



 私の弱点はメンタルが弱いことです。フィジカルの練習でしたが、メンタルが続かなかった。


 それより目の前にある甘い蜜に縋(すが)りたかったんです。



 当時、高校でPHSに女からメッセージが入って来たという男子がいました。


 勉強のできる真面目(まじめ)なタイプで、俺どうしたらいいかわかんないよ。って言ってました。


 男子校に入ったことを後悔してた私はいの一番に彼にその番号を教えてもらって当時21才の人妻と連絡を取り、よからぬ妄想ばかり駆り立ててたんです。



 それで、私はその女性と会うために、初めてサッカーの練習を休みました。


 東京で兄に買ってもらった柄シャツを着て、一番おめかしして会いに行ったんです。


 その女性はもう一人の女性と子供を連れて車で現れました。



 公園に行こうって言って、公園で二人きりになってエッチなことしました。胸を弄(いじ)って、吸わせてもらってお互いそんなことを期待して会ったんです。子供が来るなんて思っていませんでしたが。


 かなり太っていたけど、顔作りは美人でした。発情期の16才の高校生がドキドキするには十分でした。


 そうこうしてるうちにキスされたんです。


 それが私のファーストキスでした。キスは好きな人にしかしないのよ。なんて言って、でも調子に乗って私はそれ以上を求めて、その人妻は応じてくれなくて、なし崩しで別れてその公園での秘め事は終わりました。



 その後(ご)その人妻は会ってくれなくなったし、私にしてもサッカーに対する真摯(しんし)な態度が揺らいだ出来事でした。



 基本的に高校でのサッカー生活。プロになるんだと思ってやっていました。


 高校の部活でサッカーしてる人だってほとんどそうかもしれません。選手権取るんだって一生懸命でしょう。


 ですがクラブの監督はおまえらそんなんでプロになれると思ってんのかと悟しました。


 なんかサッカー熱が中弛(なかだる)みしてルーティンとして練習をしてる人がほとんどでした。


 私だってそう思ってました。なんかモチベーションが違う。


 もっと本気でプロになりたいって考えてる人とだけ練習したかったです。


 向き合う本気度が違うから、いっつも監督に叱られます。


 技術やレベルの問題じゃなくて気持ちの問題です。


 それなのに、プロにはなりたいと思ってやってるっていう人が多かったです。


 私はそんなんなら辞めてやるって思ったんですね。


 監督が、プロにならなくていいんなら、もっと楽しくミニゲームとかやってサッカー楽しもうや。って聞いたんです。


 その時、それでいいって奴は手を挙げろって言われて私は手を挙げました。


 みんな黙(だんま)り決め込んで手を挙げない中。



 その辺りから、段々サッカーを怠けるようになっていって、H3君はおまえうまいって辞めんなって言ってくれたけど、1年生の冬にサッカーを辞めました。



 サッカーを諦(あきら)めた一番の理由は、何度も言うようですが2年上のあの先輩がプロになれないなら、私になれる訳は無いと思ったからでした。



 それと、同時に、新しくやってみたい事もあったんです。


 それは異性への興味が増して来たことで、お洒落(おしゃれ)に目覚め始めていた事です。


 今度はそちらの方の話を少し遡(さかのぼ)って書いてみたいと思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る