白球

@soto-ka

第1話 始まり

北海道、白浜町

白谷一翔は野球が大好きな小学4年生。今日も練習を終え、家に帰る。

家に帰れば大好きなお母さんが作る最高の料理が待っていてまた次の日は大好きな野球。

一翔はそんな毎日を繰り返していた。



2月11日、今日は一翔の誕生日だった。

「今日はどこ行くの〜?」

一翔が父に尋ねる。

この日はたまたま練習も休みで家族みんなで誕生日祝いでお出かけに来ていた。「まだ内緒だ」

父がそう言う。

着いたのは野球場だった。

父は誕生日祝いに一翔の大好きな野球、プロ野球の試合を見せてあげようとしていたのだ。

万遍の笑みで一翔は

「お父さん!お母さんありがとう!」

と言う。

野球観戦も終えて、夕食も済ませ、帰りの車に乗り込む。

「一翔〜今日は楽しかった〜?」

母が尋ねる。すると

「うん!最高の誕生日だった!」

嬉しそうに一翔は答えた。

一翔はだんだん眠くなってきて、目を閉じた。

「危ない!」

父の大きな声で一翔も目を覚ます。

対向車線から大きなトラックがこちらに突っ込んでくる、激しい光と一緒にトラックは車に衝突した。

幸いにも一翔の乗っていた座席はあまりダメージを受けなかった。

はっ!と一翔が起き上がると横の座席に乗っていた母が血だらけで苦しい顔でいる、それを見た父が足を引きずりながら必死に救助をしながら救急車を呼んでいる、一翔はそれをただ呆然と見ているだけだった…。


「残念ながら…」

医者がそういうと、父さんが僕を抱きしめてきた。

病院のベットで寝てる母さんを見て僕は

「母さん!母さん!」泣きながら何度も呼んだ。

けれど、母さんはそれに答えることはなかった。

最高だった誕生日は最悪の誕生日へと変わった。





あれから4ヶ月程がたっただろうか5年生になった俺はあの事故以来1度も学校に行かず、毎日を何事もなく過ごしていた。

最初の1ヶ月は毎日のように泣いていた。

それから大好きだった野球も辞め、学校にも行かず、より一層忙しくなった父さんとはあまり会話もせず時だけが過ぎていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る