第4話

みやふきんさんは故郷の街に初雪が降ったという日 、コンクリート造のコーヒーショップで決定的にすれ違った話をしてください。

#さみしいなにかをかく

https://shindanmaker.com/595943


父が倒れたので久しぶりに帰省したその日に、初雪が降った。山の上にはすでに雪冠があって、気候の違いを実感した。病院からの帰り、車で通りがかったコンクリート造のお洒落なカフェは最近建てられたばかりらしく、母に勧められて入ることにした。

わざわざこんなお店で話すことはなかったのに、やっぱり母は言わざるを得ないのだ。「こっちに帰って来ないの?」

進学のために上京して、そのまま帰らなかったことをいつまでも責め続けられるのだろう。父が倒れた今、家業の医院を継いでほしい想いは明らかで、一般的にそうした方が良いことはわかっていた。帰って来てほしいと言わずに、そうしないのかと訊くあざとさが、一層頑なにさせることに、母はきっと気づきはしない。もう二度とこのカフェに来ることもないだろう。

「帰るよ。東京に」

罵る声は遠ざかって、もう取り返しがつかないほど、故郷からは遠くなることがはっきりした。

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