第16話 すべてが解けていく②

 女が続けて語る。

「たとえ、扉が見つけられたとしても百年に一度の『 時繋がりの刻』の瞬間でなければ、その扉は開くことはないのですけれど、それにしても扉さえ見つからないというのは罰というには惨すぎる呪いであったかもしれません。一度、たった一度、その瞬間に開くことが出来さえすれば、呪いを解くこと、そして、姫を見つけ出すことができたのに」


「姫を見つけてこちらへと戻すにはもう一つ、やらねばならないことがありました。

それが、この国にあった出来事を姫に語り聞かせること。話していいのはその話だけ。

この話を語り終えることが出来た時、初めて、全てを姫に打ち明けることができて、姫の記憶も時間も戻るだろう。そういうものでした」


「100年、1000年と時は過ぎてゆき、やっと全ての時が重なって……貴女様の元へとわたし達は辿り着くことができました」

 女は泣いていた。


「それで、あなた方は?」


 わたしは尋ねた。

 記憶は戻っていた。

 ただ、この男女に見覚えがない。


 男が言った

「わたしはあの悪戯いたずらな空色の鳥です」


 女が言った

「わたしは姫様がつくってくださった花冠です」


「これは、愚かなわたし達への罰、呪いでもありました」

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