第54話 矢澤貞吉施設長

「えっ?何で?」

思わず目👁️が点となった。

「あんた1人やったら、応援団とかで悪目立ちするやろ?私も付き合ってあげるんやんか?」

服部が、自分の献身ぶりを新島村に訴えてきた。

『頼んでもいないのに、同じグループになってあげてるんやんか?』と言われても、これが所謂ありがた迷惑というやつか。


「しかし結構、大掛かりなインベントなんですね」

少し冷静さを装い、そう言ってみた。五十川を目当てで参加したとして、何になるというのだろうか。小谷と付き合っている現実を変える事なんて出来ないのに。

「ここの法人の理事長も、何とか介護職員たちが辞めないように色々と工夫をしてくれているのよ」

「これだけ人手不足が蔓延すると、残っている職員にも負担がかかり、更に新たな離職に繋がりますからねえ」


「介護職になろうという人間もどんどんいなくなるでしょうね」

「だからボーリング🎳大会をしたり、応援合戦をしたり、夕方のカラオケ🎤大会を催すのよ。私たちもグループ発表、頑張りましょうね」

『いやいや、服部といつの間にか同志になっているじゃないか?』


施設長の矢澤貞吉やざわさだよしが、微笑みながさくら🌸ユニットに入って来た。施設長は、50代くらいで新島村を採用した面接時に同席してくれた。何処かオシャレでシュッとしていた。また何処か頭が上がらないところがあると感じていた。


「去年のグループ紹介は、面白かったわよね。DVDで撮影されている物があるから、一度見てみたら?」

服部が、そう新島村に言った。撮影されて永久保存版で各施設に配られるのだろうか?


「新島村さんなら、最高のメンバーになるねえ。応援団のグループ紹介を盛り上げてくれるはず。服部さんもいい人見つけたんじゃない?」

「私もちょっと最高の人材だと思っています」

『嘘つけ!』

ちょっと待って。服部が、持ち上げるのが気持ち悪いし、周りを2人はいい関係だと既成事実を作ろうとしているのだと感じた。


「拍手、拍手。参加が決まりました。はい、施設長!拍手して」

服部が更に盛りたてる。

矢澤は、新島村よりで2、3歳年下なので、少し気を使ってくれているのを感じる。服部の無茶振りを一緒に拍手して返してきた。これで信頼関係が無ければ、パワハラと捉えられ兼ねない。


「いやー、そんな参加するとは言ってないですよ!」

新島村があがらう。

「何、面倒くさい事言っているの?私はあなたを気に入っているのよ。評価しているの。テントを立てる時に土台がなかったらどうなるって言ってたの?」


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