第6話 206号室 田所佳子
先程の夕食のひじきや、ご飯粒🍚、煮魚🐟、春雨の細かな食べかすが一緒に吐き出された。
「もうこれで最後!」
そう言ってゆすぐの辞めようとしたが、ぐずりながらも納得して口👄をゆすいだ。
「おまえ、嫌いや!」
新島村は、つい思った。
『嫌いやと言われてもねえ。僕もあなたのことは充分嫌いですよ。仕事じゃなかったら、絶対あなたと関わってないから』
そう思いながら、ふと洗面所の鏡に映る自分の顔を見つめる。必死の形相👹をしていた。何をムキになっているのだろうか。
『自分の目👀の下にクマ🐻が、出来ていた。もう47歳になる。男性の平均寿命の半分を過ぎてしまった。しかし、人生なんてあっという間だな。47歳にしては👴老けてないか?大丈夫か?🙆若く見えるか?いや、年相応か?独身の自分は、まだイケている部に入っていないとダメだろう』
田所佳子が口👄をゆすぎ終わって、ぼんやりと新島村の方を見ていた。
「ようわからんわ。自分の顔に見ほれてんのか?」とでも言いたそうな目つきだった。
『うん、正直に言おう。少し見惚れてたかもしれない。希望が無くては生きられない』
ガーグルベース、コップを片付けながら田所に話しかけた。
「では田所さん、寝る前におトイレ🚽行きましょうか?」
そう言って車椅子👩🦽の手押しハンドルを掴むと、田所は頭を左右に振り緩いウェーブした白髪を揺らし頭を左右に振りながら、右手🖐️を伸ばして新島村の方を掴もうともがいていた。
「そんなん行かへん!離せ、離せ!バカ!離せ!」
車椅子👩🦼に乗りながら頭の上で片手を交互に変えながら振り回す。新島村の頭を掴めないかと躍起になっているようだ。田所は、左右に体が揺れて非常に危ない。身体のバランスを崩しで床に転倒しそうだ。余りの剣幕に、何故ここまで抵抗するのか不思議に思った。
「止めてください、止めてください」
バランスを崩して車椅子👩🦽から落ちないように、グリップハンドルから片手を離し、後ろから田所の肩を支えた。
「触んな!アホ!」
これから田所を、トイレ🚽に誘導するのだが、暴れて車椅子から落ちたりしないだろうかと不安になった。更に、いくら認知症といっても田所には羞恥心があり、 特に男性職員を嫌うところがある。
大きな車椅子👩🦽ごと入れるトイレ🚽の中に田所の車椅子👩🦽を押しながら入った。便座📄横の手すりを両手👐で掴んで立ってもらうように促した。両足🦵が拘縮していても、逆にまだしっかり立てるのでしっかり体を持ち、片膝に田所のお尻を載せ1人介助でトイレ🚽をする事が出来た。
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