第26話 202号室 傍我薫

立川萌乃の年齢は、51か、2歳で家でも父親👨の介護をしているらしく、そのため夜勤が出来ないからパートで働いていた。職場も介護で疲れないのだろうかと思うのだが、施設の近くに住んでおり、夜勤者の緊急時🚨には駆けつけてくれる事になっていた。介護をしている父親がいるので、夜勤が出来ないのに緊急時🚨、職場に来て大丈夫なのかなと思うのだが、1、2時間の事なら夜間緊急時🚨対応してくれる事になっていた。


立川の父親👨は、認知症状については問題ないが、転倒してから足🦵が不自由になったらしく、トイレ🚽の誘導などには介助が必要らしい。彼女が夜勤が出来たら言うこと無しだと思う。


立川は、背がしゅっとしていて、細長い顔立ちに鼻筋👃が真っ直ぐ通らずに少しガクッと右に曲がっていた。いつも真正面から見ると、ガクッと曲がっている鼻筋👃が気になる。淡々と仕事をこなし、テキパキと動いていた。バツ❌1のようだが、立川は自分のプライベートの事については多くを語りたがらない。

時々話していると、会話の中に「男は要らない」とよく言葉を挟んでいた。離婚の際に何かあったのだろうか。


「ご苦労さん。入院になりそうだな」

小谷がそう声をかけて来た。小谷は、入浴🛀介助用の「自宅警備員」と書かれているヨレたクタクタのTシャツ👕を着ていた。小谷と矢澤施設長とは、以前働いていた時の施設で同僚だったらしく、そしてそれぞれが退職して再就職してたまたまこの施設で再会したのだという事だった。

「結局、紹介状書くから、ワイワイ病院🏥まで行きましたからね」

「骨折で手術、リハビリとなると門戸診療所では診る事が出来ないだろうし。問題は退院して帰って来た時にどうなっているかやなあ。歩けるか、どうか」

「87歳?」

昼食🥙の準備をしていた立川が、そう訊ねた。小谷が、カウンターの裏にある年齢表を見ると「92歳」と答えた。

「じゃあ、歩けるようになるのは難しいそうね」

そう立川がご飯🍚を盛り付けながら言った。


そろそろ昼食前になったので、寝たきり状態の202号室にいる傍我わきが薫を起こしに行く。食べる体力を養うために、わき食事をした1時間後にはベッド🛌に休んでもらう事になっていた。から車椅子👩‍🦽に移乗しに向かった。傍我わきがは、女性としては、通常体型で重いという実感はなかったが、骨🦴太なのか、介助の際は「ズシン」と身体が重く、腰に負担が来る感じがあった。

「あんた、それは、あかん」

独り言のような反応はあるが、意思の疎通が取れなくなっていた。

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