けもフレ2 最終回後

宇宙地獄流 コズミックブレイザー

最終回後

キュルル「あれ?」


 サーバルとカラカルと三人で笑顔で肩を組んでいたと思ったらいつの間にか眠っていたのだろうかベッド?の中だ。というかカプセルのような装置の中だ。突然、カプセルの透明なカバーが開く。


「お疲れ様でした。ジャパリパークシミュレーションは終了しました。体に異常等を感じましたらすぐに申し上げて下さい」


 目の前にいるのは、どこかで見たことがある見た目をした少女だ。そうだ、かばんさんに似ている!そう思ったら頭の中に突然何かが入ってくるような感覚がして,それから子供の時におもいっきり遊具ごと回転して目が回ったときのような感覚になった。え?子供の時?


「大丈夫ですか細溝さん?」


  細溝?いや僕はキュルル・・いや,思い出した。細溝は僕・・じゃない私の名前だ!


 自分の体を見てみる。


 そこにあったのは男性の体だ。


 しかもスーツを着た中年の。


 間違っても探検家ルックにスケッチブックを持ったかわいらしい少年ではない。


「まだ,一時的なショックで記憶が混乱しているようですね。休憩室に案内しますので付いてきてください」


 かばんさん?に休憩室まで案内してもらい、休憩室の椅子に座った。そこのテーブルの上にはさっき入れたばかりなのか湯気が立っているコーヒーが置いてあった。


「え・・と,かばんさん?」


「はい、かばんです。もう少ししたら記憶が整理されると思いますのでどうぞしばらくごゆっくりしてください」


 私はとりあえず目の前にあるコーヒーを手に取って匂いを嗅ぐ。普段私が飲むコーヒーに比べれば安物のようだ。が、私はごく自然体でかつ優雅に飲む。うん、おいしいとでも言うように。そんな人だったっけ?私は?


「思い出した!確か私はジャパリパークの入園許可証を取りにこの施設に来たのでしたね。そしてあなたはヒトのフレンズで話題になっていたかばん・・さん」


  頭の中の私自身の記憶とシミュレータの中のキュルルの記憶がうまく統合され、整理されてきた。私は、ジャパリパークに行くための入園許可証を手に入れることができる発行所に来て、面接をパスし、最後の試験であるシミュレータ試験を受けていたのだ。


「ええ、その通りです。シミュレータはどうでしたか?」


「まさか、記憶を失って始まるとは思いませんでしたよ。でも、たくさんのフレンズの助けを借りてハッピーエンドを迎えることができて感動でした。シミュレータの中とは思えないほどクオリティも良かったし。もしかしてこのシミュレータはパークの目玉にする予定ですか?」


「いえ、パークには本物がいるので外部への宣伝用に改良を加えているところです」


「なるほどそうなんですか」


「ええ、では次に予約を入れているお客様がそろそろ来られるのでお帰りいただけると・・」


「そうですね、ではそろそろ・・・」


 おっとそうだ、忘れるところでした。入園許可証を貰わないと


「入園許可証を下さい」


「すみません、細溝さんにはお渡しできません」


「えぇ・・・え!?」


                     *


「何で入園許可証が貰えないか、理由をお聞きしてもよろしいでしょうか」


 とても、とても言いたいことはたくさんあるけど


「まず、なぜ入園許可証を得るために面接をするのか知っていますか?」


「えーと確か、フレンズに対して悪い影響を与えるような人なのかを見ているんでしたよね」


「ええそうです。実はシミュレータ試験も同じ目的で行っているんですよ」


「なら面接をパスし、シミュレータでハッピーエンドを迎えることができた私は貰えるはずですよね。入園許可証」


 そう、この人は面接をパスしている。面接官を上手く騙し、とても良い人間であるかのように振舞えている。人間としての長い社会生活で身に着けた取り繕う技術、それが遺憾なく発揮され、僕でさえ騙されてしまっていた。


「あれはハッピーエンドではありませんよ。何でアムールトラ・・、ビーストを見捨てたんですか?」


「あれは敵キャラでしょ?味方キャラはみんな生き残っているじゃないですか」


「元は、フレンズであることは僕自身が説明したと思いますが」


「あの人はやっぱりかばんさんでしたか、ずっと少女の姿のままなのはコンプレックスだったんで、シミュレータの中だけでも大人の姿になりたかったんですね(笑)。」


「ちなみにシミュレータの中のフレンズは一部を除いて、劇団員を目指しているバイトの子達が演じています」


「へえ、そうなんですね(笑)。」


 もう一つ聞いておこう。


「何で、ロードランナーさんを絵から省いたんですか。中の人が素で驚いていましたけど」


「だってむかつくじゃないですか。ごますりも気に食わなかったし、まっ、ちょっした意地悪ですよ。まさかこれが理由ですかぁ?」


イラッ☆。これで最後にしよう。


「イヱイヌさんには悪いとは思わないんですか」


「はっ?なぜか突然おうちにおかえりって言ってきたフレンズですよね。言った通りそのまま返しましたけど」


 だめだこの人。何がいけなかったか分かっていない。


「こちらが想定していたシナリオでは、一緒についていく予定だったんですけど」


 それが問題の本質ではないが。


「え、メインキャラだったんですか?」


 根本的に思いやりに欠けている。


「・・・ともかく、入園は許可できないのでお帰り下さい」


「・・・はっ!?ふざけんなよおいっ!大人をなめてんのか!?」


 突然、態度が変わる。いや、素が出ただけか。


「手を離してください」


「お前が入園許可証を寄こすまで離すわけないだろ。私はね、会社の同僚や上司にここの入園許可証を手に入れるって言ったのだよ!

これで、許可証が手に入らなかったって言ったら私の人格が疑われるだろうが!」


「セルリアンさん・・お願いします」


「はあっ?・・ぐえっ!」


 実は部屋の隅でこっそり控えていたセルリアンが細溝さ・・いや、細溝を襲う。首を折らない程度に閉め、僕の手を離したところを見計らって羽交い絞めにする。


「こいつはセルリアンじゃないか!お前らまさか結託して!」


「まだ世間には公表していませんがセルリアンとフレンズは和解したんですよ。セルリアンさん門番さんのところまでこの人をお願いします」


「ちっ・・ちくしょぉぉぉ!」


 この部屋には監視カメラとマイクが仕掛けてあるので、僕に暴言を吐いたところを警察に届ければ、あとは何とかなるでしょう。




 僕の名前はかばん。この世界で一人だけのヒトのフレンズ。


 僕はサーバルちゃんと最初の島を出てからいくつもの島に分かれたジャパリパークを巡って、たくさんのフレンズと出会った。セルリアンに襲われたり、大変なアクシデントに会ったりもしたけど乗り越えてきた今はいい思い出。


 僕とサーバルちゃんはそんな旅をしてきてついにヒトがいる場所に辿り着いた。そして、僕は運よくミライさんに会うことができた。


 ミライさんは崩壊前のジャパリパークの飼育員さんやガイドさんを集めてジャパリパークを再興するための団体を作っていたんだ。


 その団体はセルリアンのことを今まで研究していて、セルリアンと会話ができる装置の開発をしていたんだけど少し難航していた。


 でも、ヒトのフレンズである僕のことを調べているうちに分かったこと。それによってその装置は完成した。


 僕が最初の島にいた時にセルリアンに飲み込まれたことがあったんだけど。その後、助かった僕の中にセルリアンの因子が残っていた。


 その因子がカギで最後のピースだったんだ。


 ただし、その装置を使えるのは、セルリアンの因子を持つ僕だけだった。


 僕は、再びサーバルちゃんと一緒にジャパリパークに戻った。ミライさん達も一緒に。そして、小型のセルリアンに話しかけてみたんだけど、知能の問題か会話にならなかった。戦闘もせずに済んだけど。


 僕たちは今まであったフレンズ達を集めて相談したところ、僕が生まれた最初の島に今までにいたことがないほど巨大なセルリアンがいることを知った。


 そのセルリアンと対話するために全フレンズ達の協力を得て、どうにかおとなしくさせて、会話をすることができた。


 その結果、僕たちはセルリアンがなぜ生まれてきたのかを知った。


 崩壊前のジャパリパークは、誰もが入園料を払うだけで自由に入れる世界最大の総合動物園だった。海底火山の噴火でできた複数の島全部を含めてジャパリパーク。パーク中にはサンドスターが溢れていて、そのサンドスターは動物をフレンズにする力があった。


 そのサンドスターに異変が起きた。サンドスターは一方的に他者に影響を与えるものではなく、フレンズからの影響も受ける。フレンズが悪い人間によって受けた影響、怒り、悲しみ、苦しみ、そして絶望がサンドスターそのものを黒く染め、セルリアンへと変えた。セルリアンはサンドスター自身が生き物になったものだったんだ。


 パークは広すぎた。ミライさんたちスタッフだけでは完全に全てを見渡すことができなくて、多くの悲しみが生まれた。


 これまでセルリアンは負の感情によって暴走していた。だけど、最近、多くのフレンズたちから喜びと楽しさ、希望の感情を受けたことで暴走が収まりつつあった。


 その原因を考えるため、セルリアンは思考能力を最大限に高めるために一つになろうとこの島に集まり巨大な存在になった。でも、それは残りの負の感情をひとまとめにすることにつながり再び暴走してしまった。


 それを止めたのは希望に満ち溢れたぼくの友達フレンズだった。


 みんなの心が一つになった時、それは大きな希望となって最後の負の感情を吹きとばしたんだ。

 

 意思を持ったサンドスター、セルリアンはもう自分達は必要ではなくなったと判断して消えようとした。それを止めたのは、サーバルちゃんだった。


 フレンズを襲わないならセルリアンだってフレンズだよ!ってね。


 それから僕たちはセルリアンと話し合って、ある約束をした。そして、フレンズとセルリアンの和解が成立したんだ。


 その約束を果たし続けるため、僕は今の仕事をしている。旅の終点で僕は、人の世界はミライさんみたいな良い人ばかりではないことを知った。


 現在、再興したジャパリパークは入園許可証をもっている人だけが入れるように管理していて、監視のため一部の島だけをお客様に開放している。他の島は世間ではまだセルリアンに支配されているため危険地帯のままだということにして。


 ・・・それにしても、今のジャパリパークシミュレータは最悪でした。シナリオはプロの人に任せていたんですが、セリフとか僕の役回りとかあんまりです。有名な人でしたけど、動物の知識があいまいでカルガモとマガモを間違えるし、全体的に見直しが必要です!。バイトの人も、ロードランナーなのに空を飛んだり、人間っぽさが全然抜けてなかったり。あと、シミュレータのサーバルちゃんだけAIにしてみたけどすごーいを繰り返したりいつボロが出てしまうか気が気でなかったです・・・はあ。


 でも、悪い人かどうかを判断するというシミュレータの目的は果たせてよかった。受験者の記憶を一時的に消して、キュルルとしてのあいまいな記憶のみにすることで本性を隠せなくなり、本当に優しい人間なのかどうかがわかるというコンセプトは成功でした。


 サーバルちゃん達に相談してもうちょっとシナリオを改善してみよう。


 モキュッと戻ってきたセルリアンが僕に次のお客様が来たことを教えてくれる。


「ありがとう。すぐ行くよ」


 これが終われば、サーバルちゃんが待ってるおうちに帰れる。


 僕はきっとこれからもこの優しい世界を守るためここで働き続けるだろう。


 




 「あ! かばんちゃん! おかえりぃ!」


 「ただいま、サーバルちゃん!」



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