第2話
「なんだ!? オカルト関係の話なのか!」
「満夜はプリント済ませなあかん、この子の話はあたしが聞いとくから」
「いや! オカルトに関係があるならば、オレに分あり! とくと話せ!」
「はぁ……」
机に乗りかかるようにして勢いづく満夜に押されて、少女は引き気味に説明を始めた。
「実は……、友人のことなんです。高校に入学して、好きな先輩ができたんです……。あ、友人が、ですよ。それで、話に聞いていた、身代わり観音の恋が叶うって話を実行してみたんです。数日後、本当にお願いが叶って、友人と先輩は付き合い始めたんです。でも、一昨日から、友人がいなくなってしまって……。今も探してるんですけど、見つからないんです」
「身代わり観音……」
満夜が顎を撫でた。
「なんやの?」
その様子を不思議そうに凜理が見やった。
「平坂町にある身代わり観音は、もともとは病を治す薬師如来のことだ。昔は老人や病人が自らの身体の悪いところが治るように願掛けをしていたのだ。しかし、時代が過ぎて、医学が発達したこの世の中で、身代わり観音は用を成さなくなった。そのために、願いが叶うということだけが一人歩きをし、いつしか、恋が叶うという観音になってしまったのだ!」
満夜がとうとうと解説をしている脇から、凜理が突っ込んだ。
「それはわかっとる。この子が言っとるのは、行方不明になった友人のことや」
「うむ……」
再び、満夜が顎を撫でた。
「分かった。謎究明のために力を貸そう。お前の名前はなんというのだ!?」
ビシィッと人差し指で少女を指差した満夜が言い放った。
「あ、あの……。小林美智子といいます」
「そうか! 小林美智子くん、行方不明になった友人は必ずオレが見つけ出す! 待っていてくれ!」
根拠の無い断定を、凜理はまたか……、と横目で眺めた。
「もう、日が暮れかかっとるんやけど……」
頂上について、凜理がつぶやいた。満夜は、両手を腰に当て、辺り一帯を見回した。
目の前に扉が開かれた身代わり観音堂があるきりだ。お堂の中には、数えきれないほどの紙が釘で打ち込まれた古ぼけた木の観音像がある。
すでに観音の形すら残っていない。丸太のような一本の棒がお堂の中に立っている。打ち込まれた無数の紙は雨風にさらされて今は風化している。新しい物はキャラクターが書かれたピンク色のメモ用紙や便箋が押しピンで止めてあることで分かる。古いか身の上から真新しいメモが貼られているところから、それほど古いものではないように感じられる。
満夜はポケットの中の銅鏡を出してみた。それで、観音像を映しだしてみる。
「なんか特別な力でもあるのん?」
凜理はドキドキしながら尋ねた。
「ない。ただ、こうしてみたかっただけだ」
満夜は断言すると、凜理に向き直った。
「だが、オレには最終兵器がある!」
満夜が胸を張った。
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