ワンゴール

ロボモフ

第1話 プロローグ

「環境が変わればゴールを量産することは可能なんです」

「それは自分にポテンシャルが備わっている場合だ」

「監督はどうして使うんですか? 僕のゴールを期待していないんですか?」

「とにかく結果を出してくれればそれでいいんだ。理屈はもうたくさんだ。どうか自分の仕事に集中してくれ」

「僕は闇雲にゴールを狙うタイプじゃないんです。シュートを打つタイプでもないです。ちゃんと理論の上に弾道を描かなければ駄目なんです」

「どんな弾道なんだね? 私が望むのは結果だけだよ」

「美しい弾道です。誰もが胸を打たれて道を開けてしまうような」

「ディフェンスは必死で止めようとするはずだ。本職のディフェンスなら、誰でもそうするはずだ」

「監督は本職だったことがあるんですか? それに僕の言うのは、超越的な弾道ということです」

「早くそれを見せて欲しいね。私にシュートを見せてくれよ」

「僕、一人でできるわけではありません。チームの協力が不可欠です。今、このピッチ上の何人が、僕の動き出しを見てくれているんですか?」

「何がそんなに不満かね? 試合中にチーム批判をするのかね?」

「いつだって僕は、言いたいことは言うんです。主張を持ったストライカーですから」

「私は黙って点を取ってくれればいいんだがね。私はチームを勝たせなければならないのだからね」

「どうして僕を使い続けるんですか?」

「自信のないストライカーがストライカーであり続けることができるのかね?」

「僕はただ理屈で考えたいだけです」

「私が欲しいのは、一つのゴールだけだよ」

「一つでいいんですか?」

「簡単だろう? 君が真のストライカーなら」

「そう言って火をつけたつもりですか?」

「ほら、君の前にパスが来ているじゃないか!」

「わかりますよ、監督。今、ピッチにいるのは僕たち選手なんです」





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