第10話 幻想

鍵盤に指をのせ音を紡ぎ出す直前

気づかれないように息を吸いこむ


最初の一音が決め手なの

奈落に落ちるような

地に響く音が必要なの


力で押せばいいだけじゃなく

指で弾くだけなんてもってのほか


緊張を指の先に集めるの

震えないで 張りつめて

かつての輝きを想像するの


最初の一音が大事なの

この音さえ紡げれば

後はきっと流れていく


右手の一音 左手の一音

二つが重なったとき

音符に隠されたかつての浪漫(ロマン)が躍り出す


一音に込められた chopinの幻想

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