クレープ屋での青春ドラマ
「いらっしゃいませー」
そこは、こじんまりとした屋台のようなお店だった。スーパーの一角にぽつんと佇んでおり、控えめながらも透き通った綺麗な声で接客をしている店員さんがいた。
(綺麗な声だなー、声優さんみたい。)
もう少し大きな声で呼び込みしたらいいのに、と思ったが、恥ずかしいのもわかる私は、それ以上考えることをやめた。
(せっかくだし、買っていこうかな。でもお昼ご飯どうしようかなー)
悩みながら、遠目にクレープ屋を眺めていると、散歩中みたいなおじいさんが先に注文をしに入った。
おじいさんでもクレープ食べるのかー、と見ていたら、スーパーのエプロンをした同じく高校生ぐらいの男の子が、おじいさんの横に距離をおいて立っていた。
どうやら列に並んでいる感じではなく、女の子に用があるみたいだ。注文を受けてクレープを作っている彼女をチラチラ見ながら、しきりに手に持っているスーパーの袋の中身をチェックしていた。
(なんか、可愛いな)
見た目は高校生ぐらいだけど、そのおちつきのない動きがなんだか可愛く見えて、しばらく観察してみた。
暫くして、クレープを片手におじいさんが帰るのを見て、男の子は前髪を手で軽く整えてから、店員さんにかけよった。
「おつかれー、これ、差し入れ!」
「あ、ありがとうございます」
「俺、あと着替えてカードきったらあがるんだけど、かなちゃんは何時まで?」
「えっと…4時になったら交代だから、それまで」
「じゃあ、4時くらいにまた来るから、一緒に帰ろう。最近ここいら物騒だし」
「ふふ、うん、いつもありがとう」
遠目に見ながら、そんな可愛い会話をしていたんじゃないかな、と思うぐらいバイト中というのを忘れて、二人頬を赤らめながら話している様子がみえた。
(若いって、いいな)
久々に、ちょっとした青春ドラマを生でみた。
短文小説集 琴子 @kotoko04
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