甘い罠

 一本目の触手を狙い撃ちした。


 チサちゃんが、ステッキから紫色の魔力弾を触手に撃ち込んだ。


 たしかに、弱点の色が変わり始めている。最初は黄色かったのが、オレンジ色へと変わっていった。


 触手は身を躍らせてかわしたり、先端でガードして弱点を守る。


 相手は抵抗するが、そのガードはボクが偃月刀で崩した。


 偃月刀やチサちゃんの魔法を撃ち込んで、触手を弱らせていく。


 なんだ? 意外と楽勝じゃないか。


 でも、チサちゃんの様子がおかしい。

 触手に攻撃をするたび、目がうつろになっていく。

 足を閉じて、チサちゃんはモジモジしていた。


「ダイキ。ダイキ」


 苦しそう、じゃない。でも明らかに、なにかをガマンしている。


「どうしたの? おしっこ?」

「違う。けど、なんかそんな感じ」


 時々足を伸ばして、身体をカクカクしていた。息も荒い。


「このステッキ、変んっ」


 目をトロンとさせながら、チサちゃんはステッキをいとおしそうになで始める。


「くうう!?」


 ボクは、身体を止めてしまった。ゾクゾクゾク……と、身体がムズムズし始めたからである。


「チサちゃん、それ、止めてっ。攻撃できなっ、いっ」


 小さな手がステッキをなで回すごとに、ボクは腰がビクンビクンとなった。


「こうしないとっ、弾が出ないっ、魔力送り込めないいっ」


 チサちゃんからも、不本意そうな言葉が漏れ出す。ボクの脇腹あたりを、ギュッと掴んでくる。


「でも、止まらない。これ、これ!」


 ボクは、チサちゃんの口を抑える。


「ダメだ。言っちゃいけない。意識っ、しちゃう!」


 触手の弱点が、赤く点滅し始めた。どうにか、限界までダメージを与えたようだ。


「チサちゃん。今だよ!」


 ボクが指示を出すと、チサちゃんがステッキを強く握りしめる、魔力が、ステッキに送り込まれるのがわかる。


 ボクは、妙な感覚に襲われた。手の感触が、ボクにまで伝わってくる。ボクの……を、チサちゃんが触ってくれているような。


 さっきから、ボクのソレはもう鋼のようになっていた。

「◯ックスしないと出られない部屋」から、ずっとおあずけをくらっているから。

 耐えられないほどの欲求が、今になって押し寄せてきた。


「なんだなんだ」


 ゾクゾクが、ピークに達してしまう。こ、この感覚は。


 真っ赤に点滅し始めた触手のウィークポイントに向かって、チサちゃんが魔力を放出した。


「ううっ!?」


 チサちゃんが光線を撃った際、ボクに電流が走る。頭が真っ白になった。


 触手が、チサちゃんの魔法を受けて弾け飛ぶ。触手の一本が先端からしおれて、崖に転落していった。


 でも、ボクらはそれどころじゃない。


 ボクは、久々の快感に酔いしれていた。この異世界にきて、やっと男性の機能を発動させた気分である。


 チサちゃんまで、ボクの手を握りながら足をピンと伸ばしていた。


「き、気持ちいい」


 ボクのお腹にもたれかかって、チサちゃんがつぶやく。


 ボクが言わせたくなかったワードを。

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