もう一つの世界線

 まさか、イクミちゃんのパートナー「ディエロゴ」の正体は、ボクとそっくりの男性だったなんて。


 イクミちゃんに至っては、別世界線のチサちゃんだと。


「驚かなくてもいい。この世界には、もっとたくさんの世界線があって、あんたたちが戦ってきた魔王や勇者たちも、そこからやってきた」


 ディエロゴが、そう語りだす。


 魔王になったマミちゃん、勇者としてボクたちに立ちふさがったネウロータくん、力を開放したヨアンさん。


 それらすべてが、別の世界線から現れた魔王候補だっていうのか?


「彼女たちだけじゃない。あんたも見たでしょ? 仲間の一人の孫とかいうのを」


 あっ、ゼーゼマンの孫にアーデルハイドっていう子がいたね。


「その子も、別世界線から来たってわけか?」

「ええ。もしかすると、その子の方があんたの仲間になっていた可能性もあったわけ。学園モノの路線だよね」


 もしかして、ボクたちが戦ってきたのは。


「別の世界線から来た、魔王たち。あんたたちが選んでこなかった世界線から、やってきた」


 ボクたちの旅は、学園を舞台に展開する可能性もあった。


 マミちゃんがなんらかの事情で、悪堕ちする可能性も。


「本当は、マミは【勇者】として、アンタたちに立ちはだかる予定だった。しかし、ゲームで仲良くなったことで予定がズレた」


 そんな単純な出来事で、世界線って変わってしまうんだ。


 ネウロータくんが、勇者になってしまうことだって。


「本来なら最終的に、ネウロータはアンタたちに討たれる予定だった。勇者エレクチオンを止めようとして、勇者と同化して」

「そんな!」

「でも、アンタたちとの交流が深かったため、そういう事態にならなかった」


 ヨアンさんの状態は、別の世界線からの刺客を倒して吸収した後だったんだ。


 今のボクと同じように、自分だったかもしれない相手と戦って。


「彼女に至っては、存在する予定すらなかった」

「本当に?」

「ククが魔王の予定だった。しかし、世界の覇権をラヴクラホテップと争っていたハメルカバーによる介入が入った」


 多くの偶然が重なって、ボクたちの世界は成り立っていた。


「それら偶然で分裂した世界を無理やり繋げて、アイツはあたしたちを戦わせている」


 ラヴクラホテプは、どの可能性が生き残るか間引きしている?


「じゃあ、ボクが倒してきた人たちは、もう」

「ええ。アンタや、彼ら魔王たちに取り込まれた。より強い魔王へと進化していくために。けど、それもじきに終わる」


 イクミちゃんが、光線型の剣を構えた。


「あんたたちを倒して、あたしがラヴクラホテップを仕留める!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る