第三部 エピローグ ラスボス「勇者」登場! 最終回層へ!

カリダカ 祝勝会

 後日、祝勝会が行われた。


 ボクは慣れないタキシードを着て、ソワソワしている。


「ダイキ、緊張することない」

 パープルのドレスに身を包んだチサちゃんが、いつもの余裕な表情でビュッフェを平らげた。緊張感がゼロである。


「そうよ! みんなイモだと思えば、こんなエラいさんばかりの会でも気にしなくていいわ!」


 そう語るのは、マミちゃんだ。今日のいでたちは、砂漠の王族を思わせるワンピースドレスである。


「気合入ってるねぇ、マミちゃん」


「四位とはいえ、入賞したんですもの! 最終レースで入賞できたなら、名誉なことよ!」

 マミちゃんが胸を張った。金コップでぶどうジュースを煽る。


 スカートを履いたマミちゃんなんて、ボクは初めて見た。


「おめでとうございます、マミ様。一時はどうなるかと思いましたが、無事入賞できましたな」

 ケイスさんも、ローブ姿という砂漠の紳士スタイルである。


「当然の結果よ! ダイキに勝てなかったのはシャクだけど!」


 ぶどうジュースのおかわりをケイスさんに注いでもらい、またマミちゃんが一気飲みした。


「まさか、魔リカーでダイキどころか、マミ・ニムにさえ負けるとはなぁ」

 タキシードを着たネウロータくんが、オレンジジュースを手にグチっている。


「でも、あたしだって四位だったわ!」

 マミちゃんより早い人がいるなんて。


「ぼくは五位だったんだよ。入賞したけど最下位だ! やっぱぼくがハンドルを握らないとダメだったかな?」


 そんなに早いんだ。


「まあまあ。それでもあの三台には追いつけなかったわよ。ワタシはそう思ってるわ」

 トシコさんが、ヘコむネウロータくんをハグで励ます。薄いピンクのチューブトップで、豊満な胸元が隠せていない。


「あなたもそう思うわよね、ダイキさん?」


「あ、いや」

 目のやり場に困り、ボクはチサちゃんを伴って退散した。


「もご、待て。逃げるな」


 ネウロータくんが手を差し伸べてきたけど、ここはおとなしく退くことに。


 だが、目の前にいる女性とぶつかってしまう。


「おっと、すいません!」

「いえいえ、私です。ダイキ様」

「セイさん!」


 そこにいたのは、メイド服のセイさんだった。


「ダイキ様。この度のご活躍、お見事でした。ダイキ様だからこそ収められた事態だったと思います。他の方では、もっと力技になっていたでしょう」


 正直いうと、実感はない。他の魔王なら、よりスマートにことを運べたんじゃないか。そう思ってしまうんだ。


「ダイキ様は、見事に使命を果たしました。この調子で、他の階層でも務めを果たしましょう」


 うん。クヨクヨしても仕方ないよね。


「お疲れ様でしたぁ」


「ああ、ロイリさん」

 突然現れたロイリさんに、ボクは硬直しそうになった。


 ロイリさんは背中の開いたドレスに身を包んでいる。けれど、それ意外はチサちゃんの意匠そっくりなのだ。

 母と娘で合わせたんだろうか。

 もはや「仮想 大人のチサちゃん」といっても差し支えなかった。


「ママ、勝った」

 チサちゃんが、母親に勝利を報告する。


「はい。見てましたよ。よくやりましたね」

 チサちゃんと同じ背丈になって、ロイリさんは娘の頭をなでた。


「ところで、ククちゃんたちは?」

 次に来るのは、てっきりククちゃんたちかと思っていたから。


「あのお二人でしたら、表彰台で副賞を渡す役ですわ。主催ですから」


 二人は最終レースには出ていない。その分、運営として活動するようだ。


 ククちゃんは母親である女将さんと、ヨアンさんもオーシャさんと一緒にいた。


「ソーも、セーラさんもいない」


 お祭り好きの男女という印象があったから、パーティに来なかったのは意外である。


『それでは、表彰式を行います! 魔王チサ・ス・ギル、ダイキ・オサナイペア様』


 優勝したボクたちだけ、表彰台に呼ばれた。


 LOたちだって、入賞したというのに。


「あのお二方は、仕える神に逆らいましたからね。合わせる顔がないのでしょう」

 どうだろうか。

 二人は最後、一体の魔物としてボクたちと戦ったように思えた。

 仕えている神様なんて、関係なく。誇っていいと思う。


「それにここは、魔王たちのパーティですからね。LOは魔王に仕えているもの以外、居づらいでしょう」


 セイさんも、チサちゃんのお世話役としてここへ来ていた。


 だからセイさんはドレスを着ておらず、入賞も辞退している。


 よって、三位は欠番になっていた。マミちゃんが、繰り上げ三位入賞を断ったからだ。自力で勝ち取らなければ意味がないと。


「ありがとうございました。お二方」


 ボクたちは、ヨアンさんからトロフィーを受け取る。


 ククちゃんが、盾をチサちゃんに渡した。


『では、カリダカ総合優勝の、発表を行います』


 総合トップってどんな人だろう。

 テレビでも字幕だけで発表があっただけだ。 


「それにしても総合一位の玉座、早すぎだろ」

「話にならないわよ! だって、あいつら一日目でゴールしていたらしいわ!」


 ネウロータくんとマミちゃんが、コメントをしていた。それだけ強かったんだ。


「えっ⁉」


 ボクは、優勝した二人を見て唖然とした。


 あの人たち、レース初日でぶっちぎっていた手押し車の人だ!

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