セイ&ドレン参戦!

 再び、ボクたちはレース会場に戻ってきた。


「負けられないね。チサちゃん」

「うん。勝とう、ダイキ」


 ボクらは決意を新たにした。


 レース会場は、相変わらず熱気に包まれている。


 その中に、思わぬ顔ぶれが。


『いよう! 久しぶりだなダイキ!』


 食事担当にエィハス、オンコがメカニックについてくれているのはわかる。

 

 でも、意外な人物が参戦していた。 


『ハッハーッ! 久々のカリ・ダカだからな! 腕がなるぜ!』


「セイさん⁉ ドレンも!」


 赤いオンロードバイクを操るのは、なんとセイさんである。


 真紅のバイクは当然、変形したドレンだ。

 七五〇CCにリサイズされていて、両足がジェットエンジンにカスタムされている。角の部分がハンドルになっていて、セイさんがふかすと大爆音を響かせた。シッポはシートだ。


 バイクモードのドレンは、注目の的である。


 セイさんの衣装は、真っ赤なライダースーツである。胸元が開き、大胆な胸元が露出した。肌も白い。

 水着姿でも思ったけど、セイさんのプロポーションって、刺激的だ。


「このレースは『LOも参加してよい』というルールでしたので。ちょっとしたサプライズとして参戦することにいたしました。」


 セイさんが参加するなら、心強いなぁ。


「初めてセイと戦った頃を思い出す。長く苦しい戦いだった」

「あのときは、お互い敵同士でしたね」


 そうだったんだ。そんな過去があったなんて。


「二人って最初は、敵対していたんだね?」

「わたしがあの世界を作る時、最初のLOがセイ」


 激しい戦いを制して、チサちゃんはセイさんを配下にした。


『ヤバいのなんのって。セイとチサ公の二人で、世界を終わらせちまうんじゃねえかって激しさだった』


 ドレンと二人がかりで戦っても、チサちゃんには太刀打ちできなかったらしい。


「直後にガス欠して、玉座候補を急ごしらえで探してはアテが外れ、ようやくダイキ様にたどり着きました。あのとき、ダイキ様がいなければ、チサ様はどうなっていたか」


 そこまで緊急事態だってとは。


『たまらねえなセイ。こうしてまた、レースって形でチサ公と再戦できるなんてよ』

「まったくです。しかし、今のチサ様にはダイキ様がいらっしゃる。一筋縄ではいきません」

『弱気の虫になるなって。チサ公に一泡吹かせようじゃねえか』


 二人の気迫から、もう主従の関係じゃないんだってわかる。


「というわけで、本番ではチサ様と全力で対決いたします」

『俺らがお世話してくれる、なんて思うなよ! 本気でお前らを抜きに行くからよ。昔の血が騒ぐ、ってもんだぜ。本気の俺らに負けるなよ!』


「それなんだけど」



 ボクたちは、休憩用のスペースへ移動した。

 

 食事を摂るための場所には、テーブルとベンチが数多く並ぶ。



 トーストと少量のシリアルだ。サラダにゆで卵もある。


 ボクはゆで卵を潰して、マヨネーズとあえた。

 サラダと一緒に、パンに挟む。


「はい。サンドイッチできたよ、チサちゃん」


 サンドイッチを三角に切り分け、チサちゃんとはんぶんこした。


「ありがと。いただきます」

 おいしそうに、チサちゃんがサンドイッチを頬張る。


 食事の場には、用意してくれたエィハスと、オンコも。


「うーん、相変わらずエィハスの料理はおいしいねぇ」

 オンコが、ゆで卵を一息でパクつく。


「腹を膨らませすぎると、能力を発揮できないと思ってな。簡単なものしか用意してこなかった。口に合えばいいが」


「気にしないで。すごくうれしいよ。ありがとうエィハス」

 ボクは、エィハスに感謝した。


「そう言ってもらえると、作りがいがあるな。たくさんあるから、いくらでもおかわりしてくれ」


「じゃあ、お言葉に甘えて」

 遠慮せず、チサちゃんはゆで卵をそのまま口の中へ。


『それでダイキ、話ってのは?』

「実は……」


 朝食を共にしながら、ボクは事情を説明した。



「なるほど。LOを倒さねば、お友達が」

 ボクの話を聞きながら、セイさんはチサちゃんにコーヒーを淹れてあげた。この光景も久しい。


『ハメルカバーっていやあ、伝説の神族だぜ』


 亜神と対をなす神々の一派で、世界の覇権を争っているそうな。


『そんなやつに目をつけられるなんざ、オマエさん、マジで世界そのものからマークされているのかもな』


 買いかぶりすぎだと思うけど。


「もしボクが負けたら、二人は神様のお嫁さんになっちゃう」

 会場の特等席に、ボクは視線を向けた。



『LOが相手なら、オマエさんがブッ潰すしかねえな! こういうのは理屈じゃねえ。拳で語り合うしかねえのさ。それが、魔王同士のケンカってもんさ』


 ドレンの言うとおりかもしれない。ボクも、全力でぶつかるのみだ。


「ご一緒しても、よろしいかしら?」

「答えは聞いてないわ!」


 遅れてやってきたのは、マミちゃんチームとネウロータくんチームである。


「どうぞどうぞ。簡単なものだが用意しよう」


 エィハスがクッカーを複数用意して、トーストを焼き始めた。


「やっぱり腹ごしらえは大事よね!」


 口いっぱいにゆで卵を頬張りながら、マミちゃんはご満悦である。

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