控えめに見ても、熊手
それだけあって、本当にこの装備はスゴイと分かる。
しかも、玉座まで海底仕様だ。両肩から出ている細いロープを引っ張ると、玉座が空気で膨らむようになっている。
技術が謎だ。
救命胴衣なんてどうやって開発したの?
何より気になるのは、武器である。見ると長めの熊手に見えるが。
「ベルガ、これは?」
「それは【
「ホントですか? どう見ても汐干狩の熊――」
「トライデントですわ」
いや、熊手だよね?
三つ叉の槍と言い切れば、槍なんだろうけど。
しかもオレンジの色まで付いているから、オモチャ感がハンパない。
「見た目こそ幼稚ですが、能力はホンモノです。雷の魔法を無限に撃てますわ」
幼稚だって認めたよね?
「とにかく、着てみてください。ここまでできあがってサイズが合わなかったでは、目も当てられませんから」
ボクはベルガに催促され、ケーノ・メサイアという装備に換装した。
「ダイキ」
「なに、チサちゃん?」
「カッコイイ。カッコよすぎ」
チサちゃんの食いつきが、尋常ではない。
「動き自体はいいんだよね」
見た目より軽く、動きやすかった。
視界も遮らないし、思っていたよりイイ感じ。中の素材がまさしくウエットスーツなのがいい。ゴワゴワしていないし。
「海での活動は、どうしても制限されますから。とにかく、細心の注意を払って開発致しました」
続いて、チサちゃんの座り心地をチェックする。
なにより一番大事なポイントだ。
チサちゃんの身に危険が迫るような立て付けでは、不採用になる。
「どう、チサちゃん?」
いわゆる「コバンザメスタイル」だ。背中の密着度が高い。座っているというより、身体全体を括り付けている。
「激しく動いてみるよ。寄ったら言ってね」
「承知」
ボクは拳法の型や、シャドーをこなしてみた。かなり速い速度で、大暴れしてみる。
だが、チサちゃんが振り落とされることもない。チサちゃんの具合もよさそうだ。
「ベルトきつくない、チサちゃん?」
相当慎重に、色々と不満点を聞く。
これからLOと戦うのだ。少しの整備不良が死を招く。
「問題はなし。いつでも戦闘へ赴ける」
これなら、海中での戦闘も容易だろう。従来の「紫熊の着ぐるみ」は、水の抵抗が強すぎた。
だが、気になることが。
「今までの装備は?」
「こちらにお納めください」
ベルガが、耐水デジタル時計のようなブレスレットをボクに差し出す。
はめてみると、なんてことのない普通のブレスレットだ。
「このブレスレットがあれば、装備を任意で変更できます」
「やってみますね」
操作を教わって、ボクはブレスレットを回転させた。
「おっ」
従来の紫熊装束に変身する。
さらに腕輪を回転させると、今度はまたサメ着ぐるみへ。
「装備変更したいときにしか動かせませんので、誤作動はいたしません」
「ありがとう。これはいい装備をもらったよ!」
「ではダイキ様。参りましょう」
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