審査員は、子ども魔王たち

「美味しいごはんをあなたたちが作ると聞いて、誘ったの!」

「彼らなら公平なジャッジをなさるでしょう。文句はありませんね、ネウロータ殿」


 ケイスさんが、ネウロータくんにお伺いを立てる。


「お前たちは、ジャッジしないんだな?」


「はい。ご馳走になるだけです。我々は、ダイキ様に贔屓していただいておりますから。よって、我々の審査は無効です。ただ、お料理は楽しませてください」


「よし上等だ。とびっきりの料理を出してやるからな!」

 ネウロータくんも許可を出す。


 改めて、勝負が始まった。


「食材は? 指定する料理とかはあるのかな?」


「海産物を使った料理にするか」

 ネウロータくんが、指を鳴らす。


 台に乗った魚介類が、壮大なBGMに合わせて床の上から登場した。魚の刺身、牡蛎やアワビまである。フカヒレも。ぜいたくだなぁ。


 ギャラリーのちびっ子魔王たちも、「うわあ」「おいしそー」とため息をついている。


 料理場はあらゆる現代調理器具が揃っていた。炊飯器、冷蔵庫、電子レンジまである。厨房というか、お料理教室のよう。土鍋でゴハンを炊かなきゃと思っていたので、ありがたかった。


「すごい。ファンタジー世界じゃないみたいだ」


「大魔王ロイリに頼んで、特別に注文した。『地球の技術が使えないから負けました』とか、情けない言い訳なんか聞きたくないからな! 一応、フェアプレイに乗っ取ったつもりだぞ」


「ありがとう、ネウロータくん」


「ふんっ」

 素直じゃないけど、ネウロータくんは本当にいい子だ。


「どれでも好きな食材を使え。いくらでも同じ食材はあるから、ダブりは気にしなくていいぞ。お前たちの国で採れる作物の使用も自由だ」

「いいの?」

「要はおいしければ、いいんだ。マズイ料理なんか食べたくないからな」


 慣れた作物を使えるのはありがたい。


「おや、マグロまであるじゃないか。よし、気が変わった。ぼくも刺身を振る舞うぞ!」

 起き上がったネウロータくんが、刺身包丁を手に召喚した。


「ぼくのマグロ解体ショーをご覧に入れよう!」

 小さな身体で、ネウロータくんが冷凍マグロを軽々と持ち上げる。これは、手強そうだ。


「じゃあチサちゃん、何を使おうか?」

 ボクたちも、食材を探す。


 チサちゃんは、執拗に香りを嗅いでいた。時々、うっとりした顔になる。




「これがいい」



 さんざん匂いを堪能し、チサちゃんが選んだ食材は、ボクの蔵々を遥かに超えていた。



「え、これ? ウソでしょ?」




 チサちゃんが選んだのは、台の隅っこに置かれた、カニカマと缶詰だ。

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