羊ちゃんとカード交換会

 試合が終わり、ボクたちは元のリビングに戻った。

 リビングに展開したジオラマも、すっかり元通りに片付いている。


「かーっ! まいった。さすがはウワサのオサナイ・ダイキはんでんなぁ! 大したもんですわっ!」


 さっきまでの殺意剥き出し状態とは打って変わり、クモ戦車は気のいいオッサンと化す。こちらが本来の彼なのだろう。実に親しみやすい。人によっては馴れ馴れしいと思うかも知れないけど、ボクは人当たりのいい彼に好感が持てる。


「すごいね、チサたんは。やっぱりまだ勝てないかー」

 羊の魔王ちゃんも、まったく悔しがっていない。始めから勝負にならないと思ったのだろう。


「まだまだこれから。二人は、もっともっと強くなる」

「ありがとう。チサたん」

「でも、ダイキはそれよりもっと強くなるけど」


 最上級のノロケをチサちゃんが披露したところで、カードの交換会が始まった。


 羊ちゃんの領土から、ボクたちは毛皮と羊のお肉をもらう。まだ夏だが、今のうちに対策しておけば冬に備えられる。


「チサちゃん、スイカがあるよ。スイカをもらおう」


 ボクたちからは、鉄鉱石、ポージュース、作物はオレンジとカボチャをあげた。


「これが飲みたかったんや。うまい! よろしいわー」

 感動の声を発しながら、クモはポージュースを飲み干す。


「気に入っていただけて、こちらもうれしいです」

「あんたらの愛の結晶ちゅうわけやな?」


 そう言われると、なんだかポージュースがいかがわしいものに見えてくる。


「せやけどええんか? 出血大サービスやがな。これでやっていけるんか?」

「いいんですよ。ボクたちにはから揚げがあるから」


 温泉もあるのだが、伏せておこう。さすがに手を見せすぎだ。


「確かに、ワテらもニワトリはおるけど、あんたんところのから揚げはマネできへんねん」


 ウチには、スペシャルなシェフがいるからね。


「ばいばいチサちゃん、また遊んでね」

「ほな。ダイキはん。また会う日まで」




 羊ちゃんと戦車クモが、帰って行く。

 ボクたちは、手を振りながら見送った。




「楽しかったね、チサちゃん」

「ダイキも、戦闘を拒まなくなってきた。いい動きをしている」

「チサちゃんを守ることに限定して、黒龍拳は使うことにしたんだ」


 まだ、自分から攻撃にいったりする気はないけど。


「頼もしい。ダイキ」

 チサちゃんが、ボクに抱きついてきた。

 

 チサちゃんの玉座になってから、数ヶ月が経つ。

 相変わらず、ボクたちの管理する世界には、よそから魔王がやって来ては撃退する日々が続いていた。



 マミちゃんも定期的に遊びに来る。





 こんな平穏な日がずっと続けばいいのに。




 そう思っていたのだが、魔王の宿命は容赦なく、ボクらのスローライフに何かと干渉してくるのだ。

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